badger_0107
DONE■猫洋服シリーズのSSです■まだできてない2人なので、黒限未満
■モブキャラ注意
カフスと猫【黒限】 月と黒猫を青花で染めた水滴で硯へ水を落とし、レジ台を兼ねるカウンターに立ったままで墨を摩り始める。一摩りごとに、精緻な山水図の彫られた上質な墨の香が清浄に馨しい。カウンターの隣の年代物の作業台に並べられた編み柄も形も違うオフホワイトのアランニット5枚を前にして、30分以上悩んでいる女性客を小黒が接客している。ビスポークテーラー・猫洋服の開店第二号の顧客にして常連の高橋夫人だ。
「う~~~~~~~~~~ん」
「もう一度試着なさいますか?」
「それはそれで迷っちゃいそうなのよねえ。ごめんね、時間かかって」
「お気に召す物が一番ですから。どうぞ、ごゆっくり」
190cmに近い長身をわずかに身を屈めた小黒の口元に、柔らかな笑みが浮かんでいる。その器用な多才さや人当たりの良さからも接客に向いているだろうと思ってはいたが、想定以上の働きぶりだ。妖精に人間の年齢の数え方はあまり意味を持たないが、それでも人間準拠では22才の若さに似合わぬ落ち着いた物腰も、高価な服飾を扱う店で客の信頼を得るに足るものらしい。
4252「う~~~~~~~~~~ん」
「もう一度試着なさいますか?」
「それはそれで迷っちゃいそうなのよねえ。ごめんね、時間かかって」
「お気に召す物が一番ですから。どうぞ、ごゆっくり」
190cmに近い長身をわずかに身を屈めた小黒の口元に、柔らかな笑みが浮かんでいる。その器用な多才さや人当たりの良さからも接客に向いているだろうと思ってはいたが、想定以上の働きぶりだ。妖精に人間の年齢の数え方はあまり意味を持たないが、それでも人間準拠では22才の若さに似合わぬ落ち着いた物腰も、高価な服飾を扱う店で客の信頼を得るに足るものらしい。
mmmsssrrr0
DONE黒限が浮気ごっこをする。しようとする!黒限(成長後) 浮気ごっこ黒限 浮気ごっこ
ふわふわのくせ毛は直毛にして、髪の色は明るい茶色に。その上に配達のお兄さんがよくかぶっているような帽子をかぶれば、変装はできあがりだ。顔立ちや体つきは変えていないのだが、ぱっと見たところの、「羅小黒」のイメージとは違うだろう。
小黒は変化術の便利さに改めて感心しながら、帽子を目深にかぶり直し、大きな荷物を玄関扉脇の壁に立てかけた。深呼吸をして、インターホンを鳴らす。
「……はい」
「こんにちは、ご注文の家具のお荷物お届けにあがりました!」
なじみ深い落ち着いた声に、元気よく返す。二、三の言葉のやり取りの後、奥からほとほとと足音が近づいてきて、玄関扉がゆっくりと開いた。
「お世話になります、黒猫家具屋です!」
5549ふわふわのくせ毛は直毛にして、髪の色は明るい茶色に。その上に配達のお兄さんがよくかぶっているような帽子をかぶれば、変装はできあがりだ。顔立ちや体つきは変えていないのだが、ぱっと見たところの、「羅小黒」のイメージとは違うだろう。
小黒は変化術の便利さに改めて感心しながら、帽子を目深にかぶり直し、大きな荷物を玄関扉脇の壁に立てかけた。深呼吸をして、インターホンを鳴らす。
「……はい」
「こんにちは、ご注文の家具のお荷物お届けにあがりました!」
なじみ深い落ち着いた声に、元気よく返す。二、三の言葉のやり取りの後、奥からほとほとと足音が近づいてきて、玄関扉がゆっくりと開いた。
「お世話になります、黒猫家具屋です!」
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DONE黒限(成長後)百年ぶりに情欲を催したので誰でもいいから見繕いにいくという无限に小黒が立候補する、だけの掌編。小黒が脳内でうるさい。
(黒限成長後)立候補「小黒、すこしいいか」
「はい」
小黒が背筋をしゃんと伸ばして返事をしたのは、師の声に緊張の色を聞き取ったからだった。
きっと、任務に関係する、それもいつもよりも難しくて重要な件についての話があるのだろう。そう思って振り返ったが、予想に反して无限はいつも任務におもむく時の格好ではなく、美しく装った姿をしていた。
暗緑の長衫の上に、えりにラインの入った深衣。普段から无限が好んで着ている服だが、髪は丁寧に結われ、わずかに、香油のにおいがする。
(デートだ)
小黒は直観し、すぐさま心の中でその考えを振り払った。
无限がデートだなんて、ありえない。六歳で无限の弟子となってから、小黒が大人になり、いっぱしの執行人としてひとかどの信頼を得た今に至るまで、无限には恋人の影など一切なかった。長くひそかにその座を狙っていた小黒にはわかる。
2167「はい」
小黒が背筋をしゃんと伸ばして返事をしたのは、師の声に緊張の色を聞き取ったからだった。
きっと、任務に関係する、それもいつもよりも難しくて重要な件についての話があるのだろう。そう思って振り返ったが、予想に反して无限はいつも任務におもむく時の格好ではなく、美しく装った姿をしていた。
暗緑の長衫の上に、えりにラインの入った深衣。普段から无限が好んで着ている服だが、髪は丁寧に結われ、わずかに、香油のにおいがする。
(デートだ)
小黒は直観し、すぐさま心の中でその考えを振り払った。
无限がデートだなんて、ありえない。六歳で无限の弟子となってから、小黒が大人になり、いっぱしの執行人としてひとかどの信頼を得た今に至るまで、无限には恋人の影など一切なかった。長くひそかにその座を狙っていた小黒にはわかる。
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DONE▪️猫洋服シリーズのバレンタインSS▪️告白辺は設定ふんわりなので後で変わるかもです
月の夜とショコラと猫【黑限】 二人暮らしには不釣り合いに大きな冷蔵庫から、昨日作って寝かせておいたチョコレートスポンジを取り出す。猫の顔の型を館の職人に特注して作った、5号の特大サイズだ。
「うん、いい匂い」
「ショ!」
小黒の頭の上から興味津々に眺めていた黑咻が、調理台へ置いたスポンジの横へ飛び降りる。
「食べちゃダメだぞ、出来たら分けるから」
「ショ~」
ラム酒を効かせた濃厚なチョコスポンジは、会心の出来栄えだ。素直にバレンタイン用と言ってもよかったのかもしれないが、無限には「おやつ」とだけ伝え、なるべく全体が見えないように冷蔵庫の奥へ入れておいた。
『よし、デコレーション』
機嫌良くチョコレートクリームのボウルへ手を伸ばし、慣れた手つきでスポンジをコーティングしていく。ちらりと見上げたアンティークの丸時計は、17時の少し手前を示している。
5468「うん、いい匂い」
「ショ!」
小黒の頭の上から興味津々に眺めていた黑咻が、調理台へ置いたスポンジの横へ飛び降りる。
「食べちゃダメだぞ、出来たら分けるから」
「ショ~」
ラム酒を効かせた濃厚なチョコスポンジは、会心の出来栄えだ。素直にバレンタイン用と言ってもよかったのかもしれないが、無限には「おやつ」とだけ伝え、なるべく全体が見えないように冷蔵庫の奥へ入れておいた。
『よし、デコレーション』
機嫌良くチョコレートクリームのボウルへ手を伸ばし、慣れた手つきでスポンジをコーティングしていく。ちらりと見上げたアンティークの丸時計は、17時の少し手前を示している。