ramakisake
PASTまおあん結婚式のスピーチ 衣更真緒の場合招待状が届いた。宛先を見ると俺が最も知っている二人だった。朝が苦手だからと迎えに行っていた幼馴染の凛月、そして俺たちを応援してくれてプロデューサーとして一緒にがんばってくれたあんず。その二人が結婚すると手紙が来た。
「ま~くんには言っておかないとね」
一週間前に聞かされた結婚の話。頭では理解していたつもりだったが、聞いてからの一週間は仕事に身が入らなかった。世間では『朔間凛月、結婚!』『相手は業界に勤める一般女性』などの文字があちこちのメディアで賑わいを見せる。慌ただしく動く世の中に独り取り残された気分だった。あの時こうしていたら、なんてのは野暮だと分かってはいたが、考えられずにはいられなかった。あの時、俺はあんずのことが――。
7947「ま~くんには言っておかないとね」
一週間前に聞かされた結婚の話。頭では理解していたつもりだったが、聞いてからの一週間は仕事に身が入らなかった。世間では『朔間凛月、結婚!』『相手は業界に勤める一般女性』などの文字があちこちのメディアで賑わいを見せる。慌ただしく動く世の中に独り取り残された気分だった。あの時こうしていたら、なんてのは野暮だと分かってはいたが、考えられずにはいられなかった。あの時、俺はあんずのことが――。
s_pa_de_
DONE付き合いたての真緒とあんずが、交通トラブルで同じホテルの一室に泊まることになる話。ズ!とズ!!の間くらいの話です。星灯りの未来を(まおあん)街灯で照らされた道に、スーツケースのタイヤが転がる小さな音だけが聞こえる。駅前だというのにすれ違う人はまばらで、通りを埋める店は軒並みシャッターが閉められていた。時間は夜の九時。そんな、夜中でもないような時間に、全く人気がなくなってしまうような田舎の駅前を、あんずと真緒はお互いスーツケースを引きながら歩いているのであった。
「あっ、あれホテルだよ」
「んっ⁉︎あ、そ、そうだな!」
「真緒くん待ってて。聞いてくる」
あんずはその場にスーツケースを置いて、少し離れたところで煌々と輝くビジネスホテルへと駆け出していった。その後ろ姿を真緒はぼうっと見つめる。
ーーこれ結構、やばいんじゃないか?
事の発端は地方での仕事の依頼が入ったことにある。撮影地近くのホテルに前泊しようということになり、そのつもりで予定を練っていたのだが、真緒は急遽生徒会長の仕事で、身動きが取れなくなってしまったのであった。それをあんずが手伝う形で、夜に宿泊施設に到着できるように遅れて電車に乗り込んだ。それが、野生動物と衝突したとか何とかで止まってしまい、スーツケースひとつで見知らぬ田舎町に放り出されたのが三十分ほど前の話だった。
5428「あっ、あれホテルだよ」
「んっ⁉︎あ、そ、そうだな!」
「真緒くん待ってて。聞いてくる」
あんずはその場にスーツケースを置いて、少し離れたところで煌々と輝くビジネスホテルへと駆け出していった。その後ろ姿を真緒はぼうっと見つめる。
ーーこれ結構、やばいんじゃないか?
事の発端は地方での仕事の依頼が入ったことにある。撮影地近くのホテルに前泊しようということになり、そのつもりで予定を練っていたのだが、真緒は急遽生徒会長の仕事で、身動きが取れなくなってしまったのであった。それをあんずが手伝う形で、夜に宿泊施設に到着できるように遅れて電車に乗り込んだ。それが、野生動物と衝突したとか何とかで止まってしまい、スーツケースひとつで見知らぬ田舎町に放り出されたのが三十分ほど前の話だった。