sardine57817
CAN’T MAKE猪七のデート。新宿思い出横丁ではしご酒~♪を酔い潰れる側(猪くん)の目線で書くという発想が無謀だよね。新宿は夜の七時
大人オブ大人の七海サンがメシに連れてってくれるってだけでオレはすぐに舞い上がってしまう単純な男だ。平日の夕方六時過ぎ、会社員や学生がごった返す駅のコンコースに彼はいた。ネイビーのマフラーに焦茶色のタートルネック、ベージュのパンツというラフな格好で立っている姿はまるでファッション誌のモデルのようだ。普段ガチガチに固めている髪が緩く靡いている。手のひらに収まっている文庫本に夢中でオレには気づいていないようだ。
「七海サン!」
声を掛けるとはっとしたように顔を上げた。視界を遮る色の濃いゴーグルではなく、銀縁の丸眼鏡でいつもより表情が柔らかく見える。
「猪野くん」
「待たせちゃいましたか?」
「いえ、然程待っていませんよ」
文庫本を鞄にしまう替わりにスマホを取り出す動作がいちいちスマートだ。
「さて、どこに行きましょうか?」
何か食べたいものは?と聞かれ、
「前は焼き肉でしたからー、うーん……」
前回全額出してもらった手前、店選びには慎重にならざるを得ない。かと言って、ここで考え込むのも時間の無駄だ。
「あ、近くに思い出横丁ってあるんで気になった店に入るってのはどうッ 1063
sardine57817
CAN’T MAKE猪七のバレンタイン。七に年上のえ○ちなおねえさんをしてもらおうと思ったのにこのザマです。『お前、彼女できたらしいからやるよ』
数時間前、久々に会った幼馴染みから渡された一本のボトルをぼんやり眺めてオレは溜息を吐いた。三つ買うと送料無料だったからとか、これでバレンタイン楽しめよとか、そんなバカ丸出しのことを言っていた気がする。夜通しの任務が終わったのが朝の九時で高専に戻り報告書を提出したのが昼過ぎだった。ようやく帰れると校門に向かって歩いていたところで五条サンに見つかったのが運の尽き。学生に稽古をつけろなんて言うから結局夕方までみっちり付き合ってしまった。その足で飲みに行き、よく考えもせず受け取ってしまって今に至る。こちらの事情を何一つ知らないのに、盛り上がること間違いないなんて言い切る自信は一体どこから来るんだろう。
「そんなんじゃねーつーのに」
あれこれ考えるのは明日にしよう、そう思って炬燵に突っ伏した。
翌朝起きてもやはりそれはあった。そりゃあそうだ、いきなり消えてなくなるものではやい。
手のひらに収まるサイズの乳白色の容器にチョコのイラストが描かれている。ラベルには赤い文字で“melty lotion”と書いてある。紛うことなきアダルトグッズ。
「下世話な 1652