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    haruichiaporo

    @haruichiaporo

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    haruichiaporo

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    誰かの為になりたいと足掻く彼が愛おしく、なとりさんはやっぱり一生の推しと感じたのでした

    泥濘 照明を落としてベッドに腰を下ろす。今日一日のことを思いながら、無意識に溜息が落ちる。シーツに触れた場所から体温が吸い取られて、風呂にぐらい入ればよかったと思いながらごろりと寝返りをうつ。サイドテーブルにはまだ出したままの小さなツリーが一つ。そっと腕を伸ばして、指先で触れる。愛しい彼の人を思い出して、二人並んでこの灯を見つめたのもそう遠くないのに、繁忙さに押し流されてその記憶も遠い昔のようだ。
    「なつめ」
    答える人のいない名を呼んで喉が詰まる。途端に目頭が沁みて、その熱さを紛らわすためにぎゅうと瞼を瞑る。随分と、情けなくなったと思う。彼のよき友人で、協力者で、導き手と成りたかったのに、今の自分はどうだ。
    柔らかに笑うようになった頬に、薄桃色の唇に、潤む翠緑。真っ直ぐに見つめ返されると、いつからかうまく返せなくなってしまった。

    どちらかを選べなどと、どちらにも半端に生きている自分が言える言葉ではなかった。なのにあんな風にぶつけたのは彼の心に自分が入る隙がなく思えたからかもしれない。

    夏目はいつも優しくて、絆されやすくて、危なっかしくて。誰の手にもそれを渡したくなくて、君の手を絡め取ったことをいつか咎められはしないだろうか。
    「なつめ」
    絞り出した声はやはり薄闇に溶けて、想う人に届くことはない。いっそ、ずっと届かなければいい。もう二度と、目に映すことも叶わなければ君の幸せを願うだけで居られるのに。
    「…会いたい」
    手を伸ばせば、届く場所に君が居る。そんな幸せを信じきれない自分が卑しい。君が微笑んでくれるように、いつか笑い返せればいい。そんな日はまだ、来るはずがないとしか思えないけれど。


    せめて夢にでも出てきてくれればいい。この情けない現実以上の悪夢なんてどこにあると言うのだ。
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