もうひとりじゃないのにまだ薄暗く朝とも夜ともいえない時分にううんとカインは大きく寝返りを打った。ボスンと腕がベットマットに弾かれる。
ふとした違和感。
ないはずがないもの。
その隣にあるはずのもの。
夢うつつのままカインは無意識に手を伸ばしてそのあるはずの何かを探した。
けれど見つからない。
何だろう…名前を思い出そうとしてその姿が先に目に浮かぶ。いつも傍にいるのが当たり前で、手を伸ばせばすぐに触れる事ができて、いつでもその熱を感じることができて、溶けるように一つになれたらと常に願っている、その感触を今は感じることができない。
「…アー…サー…?」
微睡みの中でカインは彼の名を呼んでみる。彼の親愛なる伴侶の名を。
厄介な傷のせいでカインは相手に触れない限りその姿を目にすることは出来ない。
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