溶けた氷はもう戻らない溶ける 溶ける
僕の心に降り積もった雪は、今は氷のように頑丈に僕の心を守っている。
そうする事で、弱い自分を隠して何とかここまで生きてきた。
季節がいくら移ろっても、母がいなくなったあの時から僕の内側はずっと冬だ。吹雪いていて、凍えそうに寒くて、白い息ばかり吐いていたのに、そこに突然太陽の光が射し込んだ。
その光はあつくて、あつくて、僕の凍った内側を少しずつ少しずつ溶かしていく。
ああ、やめてくれ。僕はこの季節から出る勇気無いんだ。
僕の心が剥き出しになってしまうなんて、とんでもない!そんなことになったら、僕は死んでしまう!
まだ目的が果たされないまま死んでしまうのはごめんだ!なんのために僕はここまできたのかわからなくなる。
何度も何度も冷やそうと懸命に抗い、光を拒絶し続けているというのに、太陽は容赦なく僕の心を熱く燃やす。
ああ、やめてくれ
溶かさないで。
凍えそうな冬に、ずっと白い息を1人で吐き続けていたのに、自分以外の吐息が混ざり始める。
溶ける
とける
どろりと溶ける
氷は溶けて、僕からあんたが消えなくなった。