「まぁ!キャラ、あなたったら」
キッチンから漏れ聞こえてきた声に、ボクはふと足を止めた。今日はウォーターフェルのあたりまで遊びに行こうと誘うためにキャラを探しているところだったんだけど。
かあさんの声が固くて、咎めるような雰囲気があったから。なんとなく物陰に隠れてキッチンの方へ耳を澄ませた。
あたりには良い匂いが漂っている。バターと、砂糖が焦げる匂い。
「これは、みんなで食べるために焼いたのよ。こんな風にしなくても、あなたの分はちゃんとある。分かっているでしょう?」
ゆっくりと噛み砕くように言うかあさんの言葉に返ったのは、キャラの冷たい笑い声だった。
「分からない。何を教えた気になっているの?」
「キャラ…」
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