マジックアワー コルネリアス・ルッツという男の瞳が好きだった。昼間のどこまでも澄み渡った空を思わせる青と、夜の帳に侵食され暮れなずむ夕刻の昼と夜のあわいに佇む紫を溶かしこんだような、二つの色を持つ瞳が。
「何を見ている?」
やや乱れたブロンドの前髪の隙間から、空を宿した双眸が見下ろしてくる。もっとよく見たくて、汗で張り付いた髪をそっと払ってやった。
「好きだと思ったのだ」
「ん?」
「見上げた卿の目が、美しいと……」
そのままするりと頬を撫でる。自分のものよりやや白い、色素の薄さを思わせる肌が今は僅かに紅潮していて、皮膚を通して伝わる体温も吐く息も熱い。きっと熱に浮かされているのだろうと思った。こんなことを口にしてしまうなんて。
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