不可侵領域 最初は額へ。次に目蓋、鼻先、頬、首筋、鎖骨と順に唇を押し付けていく。まるでそれが何かの神聖な儀式だとでもいう風に、黄金の髪を揺らして男──ルッツはこの戯れを続けていた。
「そこは駄目だ」
目の前の行為を無言で見つめていたワーレンが漸く口を開く。声の硬さに視線をやれば、明確な拒絶の意思を宿す瞳が鋭さをもってルッツを捉えていた。
ワーレンの肢体を伝う唇は、肩から腕を辿り、左手の薬指へ触れようとしている。普段はそこにあるはずの銀の輝きも今は無い。
「……ああ、すまない」
くつくつと喉の奥で笑う。組み敷いた火竜の瞳は一層強い光を放っていた。