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    au_umasi_kawa

    @au_umasi_kawa

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    au_umasi_kawa

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    2023年2月23日(木)10:00〜24日(金)00:20
    アズ監♀Webオンリー紺碧の瞳に恋して2
    展示作品になります。

    #紺恋2
    #アズ監
    azSupervisor

    今夜は、まだひと言も口説きませんねモストロラウンジの支配人からポツリと呟かれたその言葉に、オンボロ寮の監督生はマドルを数えていた指の動きを止めた。
    まるで『今日の天気は何でしたか?』と世間話をするようなトーンだったので自分の耳が聞き間違えたのかと思った。しかし「こら、作業の手を止めたらいけませんよ。」と注意された後に「それで?どうして今夜は僕の事を口説かないんです?」と再び聞かれたので、間違いでは無かったらしい。
    「どうしてって...今日は一般開放されていてお客さん多かったじゃないですか。」
    「はい、確かにそうですね。契約したいというカモ...いえお客様も多かったです。」
    少女は『わかっているじゃないか』と思わず返しそうになるが我慢をする。この自分が片思いをしていて、尚且つその恋心を手玉に取るタコの人魚に何を言っても勝てる見込みは無いからだ。

    そう、オンボロ寮の監督生はこのタコの人魚に恋をしてしまった。
    フワフワとしたシルバーの髪、シミひとつ無い陶器のような肌、空を閉じ込めたかのようなスカイブルーの瞳と手入れされた荒れていない唇、知的さを表しているメガネは似合っていて口元のホクロも色っぽい。
    そして、何よりも彼の努力をする姿に心を奪われてしまった。辛い過去をバネにした努力家で魔法よりも凄い力を持つ人魚はとても美しく輝いて見えて、コロコロと坂を転がり落ちるように。
    まぁ恋心が抑えきれなくなってそれを伝えた時、目の前で書類整理をする人魚は「そうですか、ありがとうございます。」と言って何か考えた素振りをしたあと「それではラウンジで働きますか?」と遠回しなお断りをしてきたのだが。
    それでも恋をした心は単純なのか、こうしてバイトをしてしまっているし顔を見かける度に浮き立つ心を抑えきれないのは確かである。

    支配人のアズールが書類にサインをする音と、従業員である監督生が今日の売上を数えて資料に書き込む音がVIPルームに静かに響く。
    「貴方、ラウンジで僕に会う度に『今日も素敵ですね。』や『頑張っている姿、尊敬しますよ。』と色々言ってたじゃないですか。」
    「それはそうですが...。でも、それは先輩方3人が『アズール先輩は褒めると嬉しくてやる気が上がるから』と雇用契約の時に笑顔で迫ってきたからじゃないですか。」
    「ほう、ではアレ・・は全てリップサービスだったと?」
    少し低くなった声に思わずビクリと肩を揺らすが伊達にオンボロ寮の監督生をしている訳では無い。それを隠すように「いえ、本心ですよ。」と返す。
    「確かにアズール先輩のやる気が上がるのは好ましいですが...雇用契約には入ってなかったので面倒臭いから止めようと思えば止めれたですので。」
    「ふふっ、ならよろしい。」
    途端に声の調子が戻ったので背中にかいた冷や汗をそのままに小さくため息をついた。この世界の常識についてはまだよく分からないが、人魚という種族が不快に思う箇所がわからない。
    「(そもそも告白してフッた相手をバイトに呼んで褒めてほしいって...。これ俗に言うキープってヤツかなと思ったけど、人魚の世界はそういうのない感じなのかな...。)」
    マドルはあと少しで数え終わりそうだ。早く終わらせるために、そして間違えてやり直しをしない為に...少女が気合を入れていると、また声をかけられた。
    「ああ、あともうひとつ。」
    「はい、なんですか?あと少しで数え終わるので手短にお願いします。」
    「今日はラウンジに僕が居ても見ていませんでしたね。どうしてですか?」
    その言葉に集中しようとうつむき加減だった顔を勢いよく上げる。頬に熱が集中してるのは分かったが仕方ない、だってこの美しい人魚に盗み見ているのがバレていたから。
    「目は口ほどに物を言う、と言いますからね。貴方がラウンジに入ってきた僕を熱の篭った目線で見ている事はすぐに分かりますよ。」
    「あっ、えっ...と。すみ、ません。」
    告白してきた女にそんな目線を向けられるとは気持ちが悪いだろう、そう思い恥ずかしさと罪悪感で震える指先をそのままに謝罪をする。だが彼は「いえ、誤解をさせてしまいこちらこそ申し訳ありません。謝罪をして欲しかったわけではないんです。貴方に見つめられるのは気分が良いですから。」と返された。
    「え?あのそれは...。」
    「僕の質問を先に答えて貰っても?貴方がいつも僕に向けていた甘ったるくて熱い目線...今日は1度しか、ええ僕がラウンジに足を踏み入れた時しか向けていない。何故です?...ほら、こっちを見て答えて。」
    黒い髪をビクリと揺らしゆっくりとタコの人魚へ今日、初めて顔を向ける。手を止めこちらを見つめるその顔はやはり美しい。
    隣に立ちたいと願った過去の自分を、なんて馬鹿な事を考えたのかと罵倒してひっぱたきたくなるくらいには。
    「それで?どうしてですか?」
    「そ、れは...。」
    「それは?」
    口に出そうとしたがその苦しさに喉が詰まってしまう。自分の醜い気持ちを相手に伝えてこれ以上離れられるのが怖くてたまらない。その事に顔を俯かせる、だが人魚の「こら、目を逸らさないで。」という言葉に再び顔を上げた。
    「僕の目を見て教えて下さい。貴方を怒ったり責めたりはしませんから。ほら、答えて?」
    「えっ...と、その.....。」
    なんでこんな優しく責められるような形になっているのか分からない。だって自分たちは先輩後輩で、支配人と従業員で、フッた側と告白した側じゃないか。少女は泣き出しそうになるを抑えて唇を震わせながらゆっくり声を出す。
    「...今日、ヴェルリナカンパニーのお偉い様が...来ていて...。」
    「はい、来ていましたね。お得意先なので僕もラウンジに出て対応しました。...それで?」
    「その...と、きに....とても綺麗な、ご令嬢の...方が、その...。アズール先、輩の腕に抱きついて....。」
    「....。」
    「婚約す、る...と言って、いたので.....つら、く...て...。」
    ついに我慢出来なくてポロッと涙を零す。
    挨拶をする為にラウンジへ足を踏み入れた美しいタコの人魚へ絡みつくように抱きついた綺麗な彼女。シャンパンゴールド色した緩くカールされたサラサラの髪の毛、白くて綺麗な肌、お人形みたいな顔立ちと青い瞳。まるで絵本からそのまま出てきたお姫様のようだった。
    心の底からお似合いだと思い、そして邪魔者は誰なのかはすぐに分かった。
    ポロポロと出てくる涙の粒を止めたいがどうすることも出来ない。だって、婚約者でも恋人でもない...相手にとってはカモでしかない自分がこんなふうに泣いている。

    「(なんて惨めで、悲しいのだろう。)」

    オンボロ寮の監督生はこの状態から逃げたくて立ち上がり去ろうとした。記入は終わっているし紙幣も纏めている。このまま逃げ出して何もかも全て無かったことにしよう。自分が美しいタコの人魚の前から去れば良いだけなのだから。
    そう思い立ち上がろうと足に力を入れようとした。だがそれよりも早くアズール・アーシェングロットが立ち上がり少女に近づく。そして目の前に跪くと涙に濡れる頬を両手で優しく包み込み優しく微笑んだ。
    「あの雌に嫉妬していたんですね。気が付かなくて申し訳ありません。アレが言うのは全て妄想です。マドルを多く落としてくれていたので黙っていましたが...貴方がそうやって傷つくのならスグに止めさせましょう。」
    「...え?」
    驚きでパチパチと瞬きをすると瞳に溜まった涙が更にこぼれ落ちる。するとタコの人魚は「ああ、勿体無い。」と呟きペロペロと人間よりも長い舌で涙を拭う。ついでにと少女の手を取るとそこに落ちていた涙も舐め上げた。
    「ア、ズール先輩...?」
    「貴方を怖がらせてしまいましたね。優しく聞いたつもりでしたが...陸の常識にまだ疎いので許して下さい。」
    ニコッと優しく笑みを見せる彼の瞳は『人間の瞳孔』ではない。横に開いた瞳孔はタコ独特のものだ。異世界からきた少女は目の前にいる人魚と『何か』すれ違っているのを感じコメカミに汗が伝った。
    「つい忘れてしまっていました。貴方は人間ですから、番が他の雌に心を奪われる心配をしてしまうんですよね。ですが心配しなくても大丈夫ですよ、僕には貴方しか心を捧げません。ええ、そのような心配を今後一切させない事を約束しましょう。」
    チュッと軽いリップ音を立てながら額にキスをされ抱き締められる。包み込まれた時に彼が使っているコロンの匂いがふわりと香って思わず胸がときめいた。
    「ふふっ、本当によかった。僕はてっきり客の中に心移りした雄が出来たのかと...貴方が人間だということを思い出して焦りました。」
    「...アズール先輩は、私の事好きなんですか?」
    緊張で喉が張り付きそうになりながら聞いてみる。まだ人魚の世界で言う『番』という言葉の意味は分からない。しかし彼の言葉や行動は自分を好いてくれているようにしか見えない。
    「ええ、それはもう『好き』という言葉じゃ足りないくらいには。貴方の求愛を聞いた瞬間、生きてきた中で1番嬉しかったですよ。すぐに尾鰭で包み込んで巣に連れて行きそうになりました。」
    「えっと、それは...嬉しい、です。」
    どうやらアズール・アーシェングロットという人魚は自分を好いてくれているらしい。その事が分かり顔を真っ赤にするが、歓喜の気持ちで溢れていく。
    「陸ではあまり好意を相手に伝えすぎてはいけない、と教わったので我慢していましたが...。今日の事で実感しました。ねぇ、監督生さん?僕は頑張って良い子にしていたでしょう?陸の雄のように大人しくしていました。貴方からの求愛や口説いてくる甘い言葉も、熱い目線も全て返すことなく我慢して受け止めていたんです。」
    スリスリと少女の首元に擦り寄りキスを落としていく。その度に恥ずかしそうに肩を揺らす可愛らしい姿に、タコの人魚はうっとりと目を細めると砂糖菓子のような甘いため息をついた。
    「でも僕には合わない。渡されたのなら全て返したいんです、貴方なら尚更。ねぇお願いです、僕をまた熱の篭った目線で見てください。求愛して口説いて下さい。貴方が渡してくれたもの以上に、僕は貴方を熱の篭った目線で見つめます。求愛して口説きますから。だから、ねぇ監督生さん?」
    耳元で囁かれてゾワリと肌が栗立つ。少女は突然のことに「う、」やら「あ、」やら意味の無い母音しか出てこない。だが、ゴクリと生唾を飲むと勇気をだして震える唇をゆっくりと開いた。


    今夜は、まだひと言も口説きませんね/アズ監
    (元ネタ:片岡義男 『香水と誕生日』より)
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