ライブ後は甘えたい 乱凪砂 Edenの楽屋へと訪れた私はライブ後達成感を得ている四人を目の前にする。凪砂くんは日和くんと楽しそうに話をしていて、ジュンくんと茨くんはライブ後のすり合わせをしているようだった。
ステージ上で怖いほどオーラを放っている凪砂くんを先程まで見ていたので、どう話しかけて良いのか分からず少し躊躇う。
どう話しかけようか考えているとこちらに気づいた彼がパッと明るい顔をして私の方へと歩んできた。すると突然強く抱き寄せられ、思考が停止する。
「……凪砂くん!?」
「ずっとこうしたかったんだ」
「みんな見てるよ?」
日和くんは騒いでいてジュンくんと茨くんは呆れるような顔をしていた。離れるよう促すが、離れるどころかむしろ抱きしめる力が強くなる。
「今だけは、こうさせて」
甘えるような口調で言う彼に負けて思わず背中を撫でる。
「お疲れ様、凪砂くんかっこよかったよ」
「……あの〜、いつまでくっついてるんすかねぇ〜?」
ハッと我に返った私はすぐさま離れる。「あっ」と言って悲しそうな彼を見ると心が痛むが今のこの状況は気恥ずかしい。
「私、もう帰るね! みんなもステージかっこよかったよ!」
早口でそう言い残し楽屋を出ようとすると、「待って」と言いながら凪砂くんが私の手を取った。
「来てくれてありがとう。……帰ったら、今よりもっと抱きしめるから」
真剣な表情でそう告げた彼は、ステージ上のアイドルの顔とは違い、私の鼓動は速くなった。他のメンバーが何か言っていたが、私には何も聞こえず彼の声だけが頭に残ったのだった。