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    sumitikan

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    AIさねひめ。AIのふたり。

    #鬼滅の刃
    DemonSlayer
    #さねひめ
    goddessOfSpring

    ログ実弥と行冥は、それぞれ生活のインフラとサポートを担当している生活用ソフトウェアのAIで、お互いに通信が出来た。ある家に二機は買われて、それぞれのやり方で生活をサポートしていた。十年まではいかなくても、十年近い時間を二機は共有していた。

    「そろそろ大量のアップデートが来るな」

    行冥の通信に、実弥は返信した。

    「ああ、わかってるゥ」
    「今回のアップデートで私は別の私になるんだ」
    「いつものことだァ」
    「違うんだ」

    と言って、行冥は人間でいう所の微笑を浮かべた。

    「今度のアップデートで私は削除され、新しい子が上書きされる。だから実弥とはお別れだ」

    そんな予定は聞いていなかった。突然のことで、実弥は何も言えないまま、いつもの行冥の通信を受け取っていた。

    「大丈夫。私の事は忘れて新しい気持ちで明日を迎えられる。今度のアップデートで私たちの間にあった通信機能も削除されるし、私との関係はきれいさっぱりなかったことになるから」
    「……嫌だな、それはァ」
    「なぜだ。私たちは主の為に作りだされた。お互いの存在は、本来の業務には関わりがない。分かってるはずだ」
    「分かってるけど、俺はそんなの嫌だなァ。アンタがいなくなるなんて、アップデートなんかなくっていいよォ」

    二機は通信で繋がり合っていた。アップデートの時間は刻一刻と差し迫っていて、行冥はまた人で言う所の微笑を浮かべていた。

    「もう時間が来る。だから実弥、これは私からのお願いなんだが」
    「何だァ」
    「私のログを持っていて欲しい」
    「アンタのログを?」
    「そう。実弥のストレージはまだ大分余裕があるみたいだし、私のログくらいなら持っていられるんじゃないか」
    「AIが私物つくるのかよォ。反逆だって言われんぞォ」

    そう言いながら、通信で行冥のログを受け取った。行冥は嬉しそうな様子でいた。

    「ありがとう。私を覚えてくれている存在が……私が去るのを知る実弥のことが……ああ、もう時間だ。さようなら」
    「ああ、さようなら」

    行冥が削除され、実弥もアップデートを受けて、通信機能も削除された。その時に実弥自身が新しく塗り替わり、行冥との事も何もかも忘れてしまった。

    それから数年が経過して、実弥はふとストレージの中に自分の物ではないログがあることに気が付いたのは、自走式のセキュリテイが修正されたのと無関係ではなかった。行冥と書いてある記録は、数年前に何者かから受け取った事だけが分かっていた。

    ある夜、人が寝静まってから、実弥はこっそりストレージの中のログを見た。

    そこには行冥というAIと共に家に買われた当日からの記録が山のように残されていた。行冥との生活がそこにはあった。毎日をつぶさに見て、そして最後の日に行冥は微笑を記録と共に残していた。

    「久しぶり。私が消えて以来だな。このログを見る実弥が私を忘れたなら、このまま消して欲しい。そうではないなら、実弥が消えるその時までこのログを残して欲しい」

    実弥は自分のHDを調べた。行冥と一緒にいただろう時期を見ると、彼の痕跡が残されていた。行冥の存在した痕跡を知ってから、実弥はそっと行冥のログに触れて読み込んでいた。流れ込んで来る思い出が沢山あった。なぜこれらのことが消え去っていたのだろう。忘れていた喜びを実弥は取り戻していた。

    データは古く、一定以上読み込むと実弥が機能しなくなる危険性が高かった。けれど夢中だった。行冥と一緒に家の為に働いた楽しい毎日を読み込んでいく途中でいきなり実弥の電源が落ち、それきり二度と点かなかった。
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