Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    shiro4_27

    @shiro4_27

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 37

    shiro4_27

    ☆quiet follow

    オーカイと猫、両片想い?なのだろうかこれは
    設定とか文章がいろいろおかしい

    文字書きさんはほんとすごいと思う、尊敬する………………

    #オーカイ

    オーエン  


    いつからかは知らない。
    思い出そうとも思わない。
    ただ明確に。
    確実に。
    自分の中で瞳を交換した男が面倒な存在になった。

    「苛立つ。」

    小さく呟く。

    姿が見えていれば、一つ一つの行動に感情が波のように揺れる。
    それが鬱陶しくて、姿を見ないようにすれば何故か気にかかってあの、赤い色を無意識に追う自分がいる。
    今日は後者だ。
    カインの姿を朝から一度も見ていない。
    別にそれで全く問題ないはずなのに、つい、偶然会った賢者に居場所を聞いてしまい、そして知っていたことに思わず渋面を作った。
    何がしたいんだ、自分は。




    飽きもせず、何度も何度も。
    木刀を持ち上げ、振るい、また構え何もない空間に向かって下す。
    その度に赤い髪がぱらぱらと跳ね上がって宙を舞う。

    「鬱陶しそう。」

    ポツリと呟いて切ればいいのに、と頭の中で短髪になったカインの姿を描いて
    似合わないな、と無造作に思考を追いやる。
    あぁ、でも。
    少しだけ頭に描いた短髪のカインを追いかけて捕まえて、正面からまじまじと見ると
    なかなかどうして。
    伸ばされた前髪がなくて、自分が与えた瞳がよく見えて案外いいかもしれない。
    けれど描いたカインは左右の目が隠れてもいないというのに自分がどれだけ見つめても、何の反応も返してこずつまらなくなり、やはり頭の中から追いやる。

    「本物の反応が見たいな。」

    木の上からカインの日課である自主鍛錬らしい、動きを目で追っていればふいに
    何かに気付いたように木刀を持っていた手を下ろした。
    周囲に視線をやり、「誰かいるのか?」と大きい声を投げかける様子に、
    誰もいないよ、僕と彼女以外はね、と心の中で返答する。
    自分の膝の上で微睡んでいた彼女がカインの大声にぴくりと耳を立て反応する。

    「起きる?」

    問い掛けると視線をこちらに向け、小さく鳴き、膝の上で器用に身体を伸ばしてみせた。
    ゆっくりと抱き上げ、自分の隣に下ろしてやる。
    優雅に尻尾を揺らし、隣に座ると彼女は眠りから覚めさせた赤い髪の騎士を
    見下ろした。
    カインは返答がないことを確認し、自分と彼女に気づく様子もなくまた鍛錬に戻る。

    「ねぇ、今、騎士様の前に突然姿を見せたらどんな反応をすると思う?」

    隣の彼女に問い掛けると、小さく愛らしい声が返される。

    「そうか、そうかもね。
    うん、君はよくここから騎士様を見てるの?」

    自分より先客だった彼女は自分の手の甲に頭を擦り付け、ぐるぐると機嫌よさそうに
    喉を鳴らす。

    「騎士様、ここでよく自主鍛錬をしているんだ。
    確かに、この場所は開けているし人もあまり寄り付かないだろうね。」

    荒地、といっても差し支えない空間は街からも離れ周囲に人影は無い。
    人に触れないと認識できないカインにとってこの場所はうってつけの訓練場なのだろう。
    それでもいつもの愛用の剣を振るわず、木刀なのは、もし気づかず誰かがいたら、という
    考えがあるのだと思うと「お優しい騎士様。」とつい声が口をつく。
    カインが一定の時間が来たのか、鍛錬をやめ帰り支度を始める。
    それを眺めていれば、彼女が自分の膝の上を通り木からするりと器用に降り始めた。

    あぁ、これは。

    と思う間もなくカインが彼女に視線を向け、その降りてきた木の幹に座る自分の姿にも気がついた。

    「オーエン?」

    そのまま気づかないフリでもしてそのまま帰ればいいものを、カインは律儀に声に出して
    自分の名を呼ぶ。
    足元でじゃれつく彼女を撫でるため、片膝を地面につきながらカインが自分を見上げ、
    「いつからいたんだ?」と聞いてくる。
    大きな声で返答など面倒で、無視していれば聞こえなかったとでも思ったのか
    さらに大きな声で質問を投げかけられ、顔を顰める。
    緩慢な動作で木の幹の上に立ち、そのままふわりと飛び降りる。

    「いつからーー。」
    「そう何度も言わなくても聞こえてる。
    最初から、だよ。
    あぁ、でも勘違いしないでね、僕が彼女と先にいたから。」
    「そうか。」

    後から来て、勝手に下で自主鍛錬をし始めたのはカインだ。
    彼女が先客。
    賢者から場所を聞いた自分が着いた時にはまだカインはいなかった。
    蹲み込んで自分を見上げる姿勢のカインを見下ろす。
    この体勢からじゃ、やはり瞳は見えないな、と思っていれば
    にゃあ、と鳴いた彼女が自分の足先に尻尾を絡ませこちらをじっと見つめてくる。
    カインが体をずらし、自分の分の場所を空ける。
    そういうところ。
    仕方なく隣に蹲み込んで、「可愛いな。」と笑うカインをちらりと横目で眺める。
    もうそこには先程まで見せていた鋭い真剣な表情はなく、魔法舎でよく見る穏和なカインがいる。

    「野良かな。
    の割には毛並みが綺麗だけど。」
    「首輪をしていないけれど、違うって。
    餌をくれる人、家に泊めてくれる人、甘やかしてくれる人。
    色んな飼い主がいるって言ってる。」

    ぐるる、と喉を鳴らしカインの指先に好きなままにされる彼女は強かに生きている。
    何か持っていれば良かったんだが、とカインがまなじりを下げ「次は何か持ってくるよ。」と小さく声を落とした。
    視線を下げ、自分も口の動きだけで「僕も。」と言うと彼女は満足そうに鳴いた。


    カインの赤い髪が風に吹かれ、先程からぱらぱらと視界を掠める。
    前を行くカインは後ろからついて行く自分に特に何も言わない。まぁ、魔法舎に帰っているのだから道中は同じ、別に何も思っていないだけだろう。

    「後ろからじゃなく、隣に来たらどうだ?」

    速度を弛め、カインの箒が横に並ぶ。

    「姿が見えないと何をされるか不安?」
    「単に話し相手が欲しかっただけかな。」

    笑ってこちらは返事もしていないのにどうでもいい話を勝手に語り出した。
    魔法舎のこと、賢者のこと。
    あぁ、ほらまただ。
    苛立つ。
    他の魔法使いの話をする時、なんでそんなに楽しそうなの?
    無言でただ隣を飛んでいれば、
    先程の彼女のことを話し出したのでまだ付き合ってもいいか、と思え返事をする。

    「明日もあの場所に行く予定だからその時はなにか持っていこうと思うんだが……、オーエン、あの猫の好物知ってるか?」
    「魚が好きって。」

    最後に好物を言うあたり、彼女は可愛らしい。
    言うと、カインが魚、魚か……釣るか、と言い出したのでそれは少し興味が湧くな、と思った。


    次の日から、少しずつどちらともなく彼女に食料を持っていくのが習慣になった。
    カインは元々訓練場だ、ついでに近い。
    では、自分は?
    自分はどうしてわざわざ箒に乗ってまであんな辺鄙な場所まで行くのだろう。
    思いの外気が合ってしまった彼女の事もあるが、それ以上に。
    約束とも呼べない、これを楽しんでいる自分がいる。
    二人だけの。
    なにを持って行ってやろうか、とキッチンの近くをうろついていれば話し声が聞こえた。
    足を止める。

    「そこに、猫がいるんだ、可愛い。」

    カインの声が聞こえた。
    賢者が見たい、と言うと一緒に来るか?と笑って誘う。

    「……あ、でも、やっぱり。」

    何かを思い出したようにカインが口篭るその声を最後まで聞かず自分はその場を離れる。
    カインが訪れる時間とずらし、彼女の元に箒を飛ばした。
    カインと賢者がこの場所に一緒に訪れ、彼女と遊ぶ様子を見たくなかった。

    「カインが猫だったら良かったのに。」

    彼女は自分が姿を現すと、どこからともなく姿を見せ隣にちょこんと座った。
    喉元を撫でる。
    猫だったらいいのに、ともう一度低く低く呟いた。
    そうすれば自分の元から離れられないようにいとも容易くできるのに。
    カインは猫でも子どもでもなく大人だ、一人で立って生きていける。
    ………そんなカインの中に自分を埋め込めたならそれはどれほど愉快だろう。
    その目に自分だけをうつして、逃げる気も失せるほどにどろどろに深く、慈しむように、繋げられたら。
    自分がいなければ駄目になるほど、堕とせたら。
    この苛立ちは治まる気がする。
    自分はいつからここまでカインに執着していただろうか。
    未だに、抱く感情に名前は付かないが、カインを自分のモノに出来たら、と思う。
    でも、と。
    きっとどれだけ自分が堕とそうとあの騎士様は当然のように一人で立ち上がって、それらをただの引っ掻き傷のように、時折思い出す程度に、長い魔法使いの時を生きるのだろう。

    「きしさま。」

    呟いた声は思いの外頼りなかった。




    やっぱり、というと賢者様が不思議そうに自分を見た。

    「悪い、他の場所にまた一緒に行こう。
    猫も探す、だから。」

    あの場所に行くのは。
    約束をしているわけでも、何かをオーエンとの間に決めた訳でもない。
    けれどただ。
    あの場所に。
    猫に。
    行って会うのは自分とオーエンの二人だけの何かでありたい気がした。










    カイン


    自覚はある。
    多分。
    自分でも何故?と問いかけるが答えの出ないものは出ない。
    体温が徐々になくなる手を握り締め、死なないのだとわかっていても叫びそうになった時、誰一人として見えなかった時にその姿を見て安堵した時。
    ぽとぽとと、幾つかの記憶が浮かんではまた思考の中に落ちる。
    自分の、かさついたお世辞にも綺麗、とは言い難い手を見、その甲を指の腹で擦る。
    そしてゆっくりとした動作で唇を落とした。

    別に甘い味はしない。





    「逃げないで。」

    そう言って目の前の男は木の根元で休憩をとっていた自分の腕を掴んだ。

    「オーエン?」

    自分が自主鍛錬の場に使っているこの広場の存在をオーエンに知られてから、もう数週間が経つ。自分は日や時間を決め、訪れているがオーエンは気が向いたらのようで偶に現れ木の傍で猫と戯れ、共に魔法舎に帰る。
    そんな別に約束でもなんでもない、ただの気紛れのような時間を過ごしているうちの事だった。

    「別に…逃げてなんかいないが。」
    「違うよ、今から。」

    普段と変わりない声音と表情だが、自分の勘がなんとなくこれは不味くないか、とゆっくりじりじりと警鐘を鳴らし出す。
    身構えた雰囲気が伝わったのか、オーエンが小さく笑み「引っ掻き傷でも傷は傷だよね、と思って。」とよく分からないことを口に出した。

    「もしかしたらそれは膿んで思いの外重症になる事もあるだろうし。
    でもまぁ、治すんだろうけど。」

    瞳がじわりと熱を持つ。
    この内容からして自分は今からオーエンに何か手酷い目に合わされるのかもしれない。
    オーエンに掴まれていない方の手には一応木刀を持ってはいる。
    が、気付かれたのか立った状態のオーエンに木刀を踏みつけられる。

    「抵抗しないで。
    別に酷いことはしないから。」

    うっそりと囁くように言われ、纏う空気が重いものに変わった気がする。
    こちらにじっとりと張り付くような。
    捕らえて逃さないとでもいうような。

    「魔法舎にいたら誰かしらに見られるかもしれないし……、ここなら人も来ないし丁度いいかなって。」

    ぐっ、と体重をかけられる。
    とはいってもまだ、この程度なら鍛えている自分なら抜け出せるだろう。
    行動を起こし、箒をとり、逃げる。
    機を伺おうしとし、オーエンに「逃げるなって。」と木に魔法で縫い止められた。
    今まであまり体温を感じたことのなかったオーエンから熱がじわりと移る。
    それだけ、今、近い距離にいるのだ。

    「……何をする気だ?」

    オーエンは何も答えず、拘束している何もまとっていない手を見、そしてゆっくりと顔を近づけた。

    「は。」
    「騎士様、ここ、噛み跡つけてもいい?」

    誰がいいと言うと思うのか。
    オーエンが喋ると息が当たり、ぞわりと肌が泡立った。
    薄い、あまり温度のない唇が甲の皮を食む。
    自覚はある。
    多分。
    自分はオーエンのことが気になっているという、自覚が。
    そんな相手にこんなことをされて平然といられるはずがない。
    たとえそれにカケラも甘さがなくとも。
    手が熱を持ったように熱い。
    引こうとして動かない手に焦る。

    「ッ。」

    小さく痛みが走り、噛まれたのか?と思うがどうやら吸われただけらしい。
    小さな赤い点が甲に付く。

    「ねぇ、僕はお前のこと堕としたいみたい。」
    「は?」
    「好きでもなんでもない相手にこういうことされるのってどんな気分?
    苛立つ?
    悲しい?
    なんでもいいよ、そういう形で僕はお前に跡を残す事にしたから。」

    会話の隙間にオーエンが赤い点を増やす。
    その度に小さい痛みと熱が、手から体を通って腹に落ちる。
    状況が本気で理解できなくなってきて、好きでもない相手?とその言葉がぐるぐると回る。
    熱い肉塊が指先に絡んで舐めた。
    指先が唾液でぬらりと光る。
    外気に触れ、ひやりとしたそこのせいで余計に他が熱くて仕方がない。

    「はは、顔真っ赤。
    なに、怒ってる?それとも恥ずかしい?」

    オーエンの空いている手が瞳を隠した髪の毛をゆっくりと持ち上げ耳にかける。
    思わず顔を見上げると、オーエンと目が合う。
    愉しげにしているのにどこか苛立ちの見える表情は、いつもより人間らしい。
    ただ、なぜそんな顔をしているのか自分には分からないのだが。
    オーエンの目に、目の前の男と左右対称の目の色をした自分が戸惑うような表情で写りこんでいた。
    その自分が近づく。
    オーエンが顔を近づけたからだ。
    なにをされるのか理解して、流石にそれは、と首をひねろうとするが呆気なく。
    なんの躊躇いもなくオーエンは自分と唇を合わせた。
    掠めるような軽いそれに思わず口を閉じると、オーエンの舌が唇の上をなぞった。
    僅かに開いた隙間から微かに甘い味がした。
    それにずくっと、腹の奥が傷む。熱がすうっと冷める。

    「カサついてる。」

    オーエンが舌で自分の唇を舐める。

    「……オーエン。」

    出た声は自分でも思っていたより低い。
    オーエンは好きでもない相手に、と言った。
    つまり、だからこれはただの嫌がらせなのだ。
    出会った当初ならともかく今の自分に、これ程効果的な嫌がらせはないだろう。
    そして、本気でやめて欲しい。
    こんな形で言うことになるとは。
    まぁ、でもいい、伝える気もなかった感情だったが吐き口が見つかったのだ。
    ……悪い、賢者様。
    厄災との戦いには出来るだけ支障は出さないようにするから。
    頭の中のオーエンが自分を見ず、避けるように顔を背けた。
    自分に言われたらそう、なるだろうな。

    「好意を持っている相手にそういうことをされたくない。」

    言った。
    毅然とした表情で顔を上げ、オーエンを見る。
    至近距離でオーエンが目を大きく開き、止まる。
    たっぷり一呼吸分置いて、オーエンがぱっと猫のような素早さで自分との距離をとった。
    考えていたとはいえ、思いの外ささるなと苦笑する。
    気が付けば魔法での体の拘束も解けていた。それ程までに衝撃は大きかったらしい。
    まぁ、分からなくもない。自分だってあれ程、最悪な出会い方をした相手に
    好意を持つなんてと思うのだから。

    「だからオーエン「誰が誰を好きなの。」」

    かけた言葉を遮られる。
    腹を括ってしまった自分は「俺がオーエンを」と言う。

    「きしさま、ぼくのこと、すきなの?」

    まるで傷の時のオーエンのように、少し舌足らずな口調で問いかけられ、あぁ、と返す。

    「好きだよ、オーエン。
    だから、本当に嫌だ。」

    オーエンにその気はなくとも、戯れのようなそれで自分の気持ちが動くのは。

    「カイン、お前、今ほんと情けない顔してる。」

    オーエンが自分の表情を伺うようにしながらまた、ゆっくりと近付いてくる。
    すぐに避けられるかと思っていたので、身構える。
    これは悪い意味で興味を持たれたのか。

    「弱味だよ、それ。」
    「かもな。」

    これ以上はさせる気はないぞ、と立ち上がりオーエンを見据えると少しだけ怯んだような素振りを見せる。

    「……さっきので、騎士様は僕のこと嫌いになった?」

    これは本格的に傷オーエンが混ざり始めているのではないだろうか、
    と疑いつつ「これ以上するなら、なる」と言い切る。
    するとオーエンは戸惑った様に「…しない」と言った。
    この素直さはやはり傷オーエンの気がしてきた。
    オーエンが正面に来る。

    「お前、僕が好きなんだ。
    そう………。」

    その表情は帽子に隠れ、影になりよく見えない。

    「誰かのモノにはならないのか。」

    顔を上げたオーエンの、自分の色とオーエンの色の瞳がこちらを射る。
    とろりとした溶けた色に見えた欲のようなものに自分はとんでもない勘違いをしているのではないか、言ったのではないかと、頬が引き攣った。
    にゃあ、とどこからか猫のなく声がする。
    オーエンが彼女、と呼んでいるメス猫の。
    救いの手は猫の手でも構わないと目だけを彷徨わせる。
    気が削がれたようにオーエンが自分から視線を外した。
    現れた彼女の元にしゃがみこみ、その小さな頭を撫でる。
    どうも無意識に浅くなっていたらしい呼吸を落ち着かせていると
    「鍛錬、しないの。」と言われる。

    「……。」

    なかったことにするのか。
    何もかも。
    息を吐き、木刀を持つ。
    自分は自主鍛錬をする、オーエンは猫と戯れる。
    そして、帰るのだろう共に。
    自分は伝えた、その結果、オーエンは避けなかった。
    そして、これ以上はしないと言った。
    自分だって気持ちが返ってくるとは最初から思っていない。なら全て。
    厄災が終わるまでこのまま変わりなくあっていい。
    魔法使いの時は長い。






    「……………ねぇ、騎士様は
    僕のことを好きなんだって。」

    カインが自分のモノならば。

    「誰にも渡さない。」

    彼女は自分を見、そしてカインを見、ぱたりとしっぽを揺らすと微睡むように丸まった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤😭🙏❤❤💒🆗🅰ℹ❤🙏🍼
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    nemurinekomaru

    PROGRESSロナドラ♀里帰り出産の続きです。ノスのお城に着きました。
    ちょっと短めですが、続きのノス視点はそれなりに長めです。
    というかノスの名前のスペルが分からなくてちょっと困ってます。
    冷えた指先とチェリーボーイ Draluc ノースディンの城に着いた途端、あまりの冷気にまず足の先から砂になった。まだ形にもなっていないロナルド君との赤ちゃんにどんな影響が出てしまうのか分からず、根性でどうにか手足だけに留めていればしっかりと暖房の効いた部屋に連れていかれ、ベッドに上に降ろされた。まあ、幼い私が少しでも死ぬようなことがあれば同じように殊更丁寧に扱われていたので、少しの懐かしさを感じてしまう。
    「……少し、待っていなさい」
     普段よりずっと固い声がそう言って扉を開けて部屋から出て行ってしまった。扉が閉まるまでのほんの僅かな時間であったのに冷たい空気が廊下から流れ込んできてしまい、それに驚いて耳の先が少し砂になってしまった。
     私を置いていったあの人はとにかく不機嫌だったのだろう。部屋を出る前はとにかく無言で、私を寒さで死なせないために事前に用意していたらしい毛布で私を包んでから、真っ白いそれなりの大きさのテディベアを私に抱かせていったのだ。
    1688

    fuki_yagen

    DONE読み切り世界のドちゃんと本編世界のロくんが入れ替わっちゃったよというはなし。ロナドラです。
    コウモリピンの帽子「おい、『俺』。先に突っ込んで統率乱してこい」
    「あんたが斬り込んだ方がよくね?」
    「斧あるだろ」
     預けられている刃に銀を被せた手斧を片手に、ロナルドは鼻を鳴らして軽く素振りをした。ぶん、と程良い重さの掛かる音がする。
    「んーじゃ、いってくるわ」
    「親玉は任せろ」
    「頼むぜ」
     伏せていた身を起こすと同時にとんとコンクリートの縁を蹴り、暗渠へと飛び降りがてら群れていた巨大化した吸血ヒルを何体か踏み潰し目の前にばしゃりと頭を上げた一体を斧で絶つ。やすやすと塵にはなるが、なにせ数が多い。まるでみみず玉かボラの群だ。
     集合体ダメなひととか竦むだろうな、あいつは怖がって死にそうだ、と今ここにはいない同居人のことを考えてちょっと笑い、ロナルドは次々と浅い水の中を蠢いているヒルを塵にした。頭上から差し込む光は限られているが、上で戦況を見ているもう一人の自分が的確にライトで次に攻撃態勢を取ろうとする個体のほうを照らしてくれる。器用なもんだな、と考えながら、ロナルドは斧を振りつつ片手を差し出した。過たず掌に当たったライトを受け取り、前歯で噛んで咥える。
    8457