大人と子供「子供を、五歳くらいの男の子を見ませんでしたか?」
「いや、見ていないが……」
高校からの帰り道のことだった。帰路につく途中にある公園の前で魈は女性に声を掛けられたのだ。事情を尋ねる前に、公園で遊んでいたのに目を離した隙に子供が居なくなってしまったと言っていて、この辺りを必死で探しているとのことだった。
(この女……)
話半分に女性の瞳を見る。自分と同じような、それでいて少しだけ石珀色によく似た瞳を持つ女性だった。
「……少し、探すのを手伝おう。その者の特徴は?」
「! ありがとうございます」
いなくなった男児の特徴を訪ねた。茶髪で、母親と同じ石珀色の瞳をしているとのこと。公園に来ても、大体遊具で遊ぶ訳ではなく草花や虫をじっと観察している事が多いと教えてもらった。
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