秘密の時間図書室にある、とある一角のコーナー。そこで星塵は今日も一冊の本を読んでいた。真剣な眼差しで本を捲る星塵の姿を見つけた宋嵐は一瞬見惚れると、僅かに口許を緩めそっと隣に座った。
「すまない、待たせたな星塵」
聞き慣れた落ち着いた声に、星塵はハッと現実に戻り本から顔を上げ、相手の姿を確認した瞬間花が綻んだような笑みを浮かべた。
「いや、大丈夫だよ。この本、新刊コーナーにあったからつい手に取ってみて読んでいたんだけど、とても面白くてついつい読み耽ってしまった」
「そうか、お前が楽しめていたのなら良かった」
宋嵐は星塵の触り心地の良い髪を撫でながら、満足そうに告げた。
荷物を片付け本の貸出を終えて出口へと向かおうとすれば、不意に宋嵐が手を引いて星塵の動きを止めた。
1612