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    hanten102

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    hanten102

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    ガン種運命(シンアス)離したくない貴方を ※アスランの記憶喪失ものです。
    ※無駄に長いです!!(6144字?)

    #シンアス
    syn-as
    #シン・アスカ
    shinAsuka
    #アスラン・ザラ
    aslanZara
    #ガンダムSEEDDESTINY
    gundamSeeddestiny

    ガン種運命(シンアス)離したくない貴方を ※アスランの記憶喪失ものです。突然に訪れたから、何が起こったのかもわからなかったんだ。
    でも、僕もシンもビックリして、それを受け止めるしか出来なかった。
    ───始まりは。


    「もう……ちょっと……」
    「シン、無理しなくていいんだよ?危ないし…」
    「これっくらい平気ですよ!」
    たまたまだった。喚起しようって話になって、窓を開けたら強風が入って来て、それによって書類が空を舞った。そのまま、何枚か窓から下に落下していったのだ。
    そのうち一枚が、窓の外の木に引っかかっている。今シンはそれを取ろうと手を必死になって伸ばしていた。
    「……えっ?!」
    「ん?シン…わっ??!!!」
    下からの何かに気を取られたシンが、その手が書類の紙を掴み損ねて、ガクンっと体勢を崩したのが見えた。
    僕が見た瞬間には、シンは居なくなっていた。窓から落ちたんだ!!!!って気づいて急いで走った。窓から下を見る。
    お願いだから無事で……って祈る間もなく。声が聴こえた。
    「アスラン!!!」
    そこに、倒れていたのは、藍色の髪をした青年。僕の良く知ってる幼馴染が。シンを抱きとめた形で倒れていた。
    ピクリとも動かないシンとアスランを見ながら、僕は血の気が引いて行った。急いで下へと走って行く。
    白い隊服が翻るのが邪魔だった。
    辿り着くと、その場には誰も居なくて。シンが呆然と泣きそうな顔をしていた。
    「起きろよ!!!アンタ何で俺の下敷きになんてなってるんだよ!!起きろ!!!!」
    そこには、書類が広がっており、アスランが拾っていた跡が見えて、どうやら彼は落ちて来たシンを抱きとめたらしい。そのまま倒れたのだろう。
    頭を打ったかもしれないから、動かさないようにしているシンはいっそ痛々しかった。
    「シン…ちょっと待っててね。今、誰か呼んで来るから……大丈夫!アスランは頑丈だから…きっと…」
    励ましてる僕の声すら震えそうで、その場から走った。
    だって、僕だって嫌だ。こんなのってないよ。
    何事もありませんように、と必死になって祈った。



    「アンタが下に居たから……足踏み外したんですからね……責任取って、起きて下さいよ!!」
    言葉が冷たい風に吹き飛ばされてしまいそうだった。
    アスランの頬に手を伸ばして、冷えて行かないようにって身を寄せた。







    ザフト内部の医務施設に運び込まれたアスランだったが、その日は目を覚まさなかった。幸いな事に、外傷はないとのことで、ホッとしたが。頭を打っているので何か後遺症は残るかもしれないとの事だった。
    暗い医務室のベッドの脇で、俺とキラさんは、ただ待った。
    アスランが目を覚ますのを。
    冷えて行く。心がどんどんと。この人…もしかしたらもう目を覚まさないんじゃないかって。
    頭打って、植物状態みたいになって、もう動かなくなったら?話さなくなったら?
    ずーっと眠り続けたら……俺、どうしよう?
    だって、俺のせい?
    俺のせいじゃないか?
    俺が落ちたりなんかしたから?
    ぐるぐると思考が巡って、俺は何度も頭を垂れた。
    その度に、キラさんが「シン、大丈夫だよ……」って言ってくれた。
    この人が一緒に居てくれなかったら耐えられなかったかもしれない。
    こんな静かな夜を、越えて行けなかった。
    朝方になって、鳥の鳴き声が聴こえて来た。
    ピクリと指先が震えた。
    俺は知らずに握っていたその手が動いた瞬間に、呼吸が出来たような気になった。
    反対側でもう片方の手を握っていたキラさんがゆっくりと名前を呼ぶ。
    「アスラン………」
    「…………っ」
    俺は言葉が詰まって名前すら呼べなかった。ただ泣き出しそうになってしまっていた。
    何だよ、今泣いたって、なんにもならないのに。
    涙腺おかしい。
    震える瞼がゆっくりと開いて、緑色の瞳がぼんやりと俺たちを映した。
    何も映ってないみたいな、目だった。
    「……誰だ……?」
    「え?」
    「ここは何処だ………俺は、………俺は誰だった……?」
    起き上がろうとする。それをキラさんが止めた。俺はまだ頭が回っていなかった。
    記憶喪失………ってやつデスカ?
    アスランが何も覚えてないなんて、そんなの………。
    「俺っ!!医者呼んで来ますね!!!」
    それだけ言い残して俺は走って部屋を飛び出していた。後から考えたらナースコールを押せば良かったのに。
    信じたくなかった。涙を拭いながら、走った。拭っても拭っても溢れて来る。
    何でか判らなかった。


    「君は…誰だ?」
    「僕…僕は君の幼馴染でキラ・ヤマトって言うんだ。覚えてない?思い出さない?」
    「………済まない」
    「ううん、そんな事より……シン……」
    走って行った後ろ姿を見送りながら、キラは彼の心配をした。
    泣いていたような気がしたから。



    **



    医者の見立ては予想通り記憶喪失だった。
    アスランは仕事を休むことになった。何せ休暇を取らずに働いて来た人だったから。
    たんまり休ませていいとはアスハ代表の言葉だった。
    オーブに帰らせるという案も出たが。どちらかと言えばコーディネイターを診る医療技術もプラントの方が整っているし、彼の故郷であるこちらで預かる事となった。
    「本当に、記憶喪失なのか?」
    「?」
    「俺を馬鹿にしてないだろうな?」
    「……どうやらそうらしい…君の名は…?」
    「ふんっ!!貴様になぞ名乗る名は持ち合わせていないわ!」
    「じゃあ、なんて呼べば良いんだ?」
    「………」
    「イザちゃまって呼んでやれよ。俺はディアッカ。よろしくな」
    「ディアッカあああああああああああああああ!!!」
    紅茶を用意していると、病室が賑やかな雰囲気に包まれる。
    今日はディアッカさんとイザークさんとラクス様が来られていた。
    ラクス様が俺に紅茶の手ほどきをしてくれる。
    「アスランがお気に入りの紅茶を持って来ました……」
    そう言われた時はドキリとした。ラクス様はアスランの婚約者だったんだもんな。知らない訳もない。
    「一緒に飲みましょう?落ち着きます…」
    「はい…」
    優しい柔和な微笑みに、病室の温かな空気に、俺の中のささくれ立っていた気持ち。ゆっくりと解氷していく気がした。
    大丈夫。きっと、大丈夫。
    言い聞かせて、紅茶をお盆に乗せて運ぶ。
    アスランは飲み込みが早くて、すぐに俺たちの名前を覚えて行った。
    ただ、記憶だけごっそりと抜け落ちてしまったが、………そのうち思い出すと思った。
    「見られてると…飲みずらい」
    「そうですわね。皆さんも飲みましょう…お茶菓子も持って来てあります。勿論毒なんて入れてません」
    「………それは何処までが冗談で?」
    「まあ!本心から言ってますわ」
    クスクスと笑い合う元婚約者の会話に、胸がズクンっと痛む。…何だ?どうして?
    ディアッカさんとイザークさんは紅茶を飲みながら、静かにアスランを観察してるみたいだった。
    「薔薇の香り………」
    「はい。わたくしが良く、貴方にお出しした紅茶です…」
    ゴクンっと皆、息を呑んだのが判った。
    紅茶を飲み終わったアスランは、軽く首を振った。
    「思い出せない…済まない」
    「良いのです、お試しに、と言う事です」
    「貴様!!次に俺が会いに来る時までに思い出しておけよ!!」
    「判った…イザちゃま……」
    「貴様ああああああああああ!!!!ディアッカ!帰るぞ!!」
    「あーーーーー俺これで一生笑い転げられるわ」
    「うるさぁい!!」
    イザークさんは憤慨して、そして俺の肩に手を置くと帰って行った。ディアッカさんも。どうしてかは判らなかった。
    最後にラクス様が、「元気を出して下さいね」と言って紅茶を置いて行った。
    薔薇の香りがする紅茶は、俺には合わなくて。
    でも、覚えておこうと思った。
    心臓が、痛みを覚える感覚と一緒に。


    「イザーク…泣くなよ」
    「泣くかぁ!!!アイツ…全然覚えてないとは思わなかったが」
    「……早く、思い出させてあげたいですわね」
    外から三人が見上げる病室の窓に、シンが今映る。
    それを見ながら三者揃って溜息を洩らした。見ているだけで切なくて痛いというのに。



    ***


    病室から出ても良いという事になったので、キラさんの居る執務室までアスランを案内する。
    良く来ていただろう道筋ですら、彼はきょろきょろと見回しては息を吐く。
    恐らく自分の不甲斐なさでも感じているのだろう。
    「行きますよ!!!」
    「ああ…」
    乱暴に手を引っ張ってしまい、気が付いた時に俺は真っ赤になっていた。
    何手を繋いでるんだよ?!!でも今更離すのも変だし。
    俺がそろーっと彼を見ると、ニッコリと笑顔で返されて心臓バクバク鳴った。
    「何ニヤニヤしてるんですか?!!」
    「いや、安心するな…と思って。シンが嫌なら離してくれて構わない…」
    「嫌なんて言ってないでしょ?!案内してるんですから!ちゃんとついて来てくれないと困ります!!」
    「そうだな……」
    もう少しでキラさんの執務室に付くって時に、女の子にぶつかった。
    「あっゴメン!!」
    「いえ……あ、アスランさん?!」
    「…俺を知ってるのか?」
    「その、記憶喪失になったって聞いて…心配してたんです!!!」
    「…ありがとう」
    アスランが笑みを浮かべて答えると、彼女はキャーって言って走って行ってしまった。
    胸の中に澱みが溜まる。何か判らない暗い闇のように。
    乱暴にアスランの手を引っ張るとずんずんと先に行く。
    「シン…どうした?」
    「いえ!アンタ誰にでも笑って答えられたんですね」
    「……」
    「俺、知らなかったですよ!!!」
    「………俺も知らない。ちゃんと、笑えていたか?」
    その言葉に、立ち止まった。
    アスランはアスランなりにもがいていて、苦しんでいるのだ。
    無理に彼が笑うなんて嫌だ。
    心から笑って欲しいと、いつも願っているのに。
    執務室にいたキラさんに任せて、俺は紅茶を淹れに走った。
    勿論、ラクス様から頂いた薔薇の香りがする紅茶だった。
    心が切なさで引き裂かれて行く。



    窓辺に立ってぼんやりと外を眺めるアスランの隣に立って、キラも下を眺めた。
    ここからシンが落ちた時の事を思い出すとゾっとする。
    シンは無傷だった事を思えば、アスランがどれだけ優しくシンを受け止めたのかが判る。自分の事を忘れるほど。
    「ねえ…アスラン…」
    「なんだ?」
    「僕は、君が早く帰って来てくれる事を思ってるんだ。例え無理やりでも…」
    キラがアスランを抱きしめて、そう囁く。何を言われてるのか判ってないのか、アスランはきょとんとしていた。
    「君は…僕の大事な幼馴染だから……」
    「キラ……」
    執務室にある止まり木に止まっていた緑色の機械の鳥が鳴いた。



    ****



    「ただいまーおかえりー」
    「…なんだそれは?」
    「放っておいて下さいよ!!一人暮らし長いと言いたくなるんですって」
    「………そうなのか?」
    「知りませんよ!!」
    玄関を開けての会話。ここは俺の住んでいるマンションの一室だった。
    あの後、キラさんとどちらの家に泊めるか言い合った。
    当初はキラさんの方が適任だと思っていた。
    だって二人は幼馴染で、もう長い付き合いなのだから。
    だけど、キラさんから「本当にいいの?」って聞かれて、胸がドクンって鳴った。
    渋々「一夜だけなら…」と答えたら、キラさんは微笑みを浮かべて「よろしくね」って託された。
    ………判ってる。判ってる。俺の気持ちが向かう先を。
    俺はきっとアスランが好きで。
    いつからだったんだろうか?それすらも知らないくらい前から、ずっと、好きだった。
    俺の事を忘れてしまったアスランを切なく想ってる。
    夕食を外で食べて来た。アスランの行きつけだって言う所に行ってみたけど値段でビックリしてしまった。俺の給料が見事に吹っ飛んだ…経費で落ちるかな?
    「取りあえずシャワー浴びて来て下さい…寝床用意しときますね」
    「……シン…」
    「はい?」
    「一緒に入るか?」
    「…はい?」
    「……なんでもない」
    はいって俺の着替え渡して、アスランは案内したバスルームへと入って行った。
    ………ってか、今のやり取り何??!!
    そのままにしてしまったが、俺はパニックに陥ってしまっている。
    アスランが?!え??俺も入ってもいいの??「入るか?」って言ったよな?
    シャワーの音が聴こえて来て、ついビクっと反応してしまった。


    「なあ…シン……」
    「なんですかぁ?」
    「キラが……」
    「?」
    アスランにベッドを譲って、俺はソファで寝る事にしてそのまま就寝する事にした。
    彼はもごもごと口籠って、手を伸ばして来た。
    電気消そうとしてた俺は、その手を取るとベッドサイドに座った。
    アスランが俺のベッドに寝てると思うとドキドキする。
    鼓動の音が煩いのに、アスランの声だけは、良く聞こえた。
    聞こえて、耳を疑った。
    「…俺が、お前の事を好きだったんだって言ったんだ…」
    「………」
    「本当なのか?俺は………」
    「…………確かめて、いいですか?」
    「え……‥?」
    彼の緑の瞳が、驚きに見開かれる。
    鼻梁が重なって、唇に触れるだけのキスをした。
    そんなの「本当」だって証拠がない。でも、本気で俺の事、好きだったのなら。
    帰って来てよ!俺の元へと!!
    この腕で抱かせろよ!
    初めは開かれたままだった瞳が、ゆっくりと閉じて行った。


    息が出来なくなるくらい、溺れるくらい、深い口づけを交わして。
    気が付けば、求めるように首筋辺りに唇を這わせていた。
    「シン……!!!」
    「?」
    「……もう、いい!!もういいから!!」
    二人して息を整える。俺はがっついてしまった事を謝った。
    アスランは、しばらく呆然とした顔をしてから、俺を見つめた。
    その瞳に、光が宿っている事に気が付いて、刻が戻った気になった。
    「……アンタ、もしかして……」
    「……ちゃんと。お前の事も、みんなの事も……思い出したよ」
    「本当ですか?!!」
    アスランに抱きつくと、ぎょっとして彼はドギマギとして慌てていたが、俺の背に手をまわして、抱きしめ返してくれた。
    「アンタ…ほんっとうに…っ」
    「………シン…」
    キツク抱きしめて、もう一度向かい合う。
    今度は笑い合って、くすぐったくなるようなキスをした。



    「もう少しだけ、心の準備をさせて欲しい」
    と言われて、シンは結局ソファに身を沈めた。
    だけど、何度も夜中目を覚まして、アスランが本当に帰って来たのか確認を取った。
    アスランはすっかり呆れてしまい、結局アスランの手を握ったままベッドで眠る許可を貰ったが、シンは余計に眠れなくなったらしい。




    *****




    アスランの記憶が戻った!!という報告と、二人が付き合う事になった、という報告を同時に受けた僕は、笑顔で祝福した。
    今はまたオーブに帰って行ったアスランだけど、こちらに来る度に、シンが淹れてくれる紅茶は薔薇の香りがする。
    時たま、アスランかシンから薔薇の香りがする度に、僕はニコニコと幸せな気持ちになるんだ。

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