ガン種運命(キラシン)幸せになりたくて「シン………」
キラさんが俺に触れる指先が熱くて、求められる事に幸せを感じていた。
「随分機嫌が良いわね……」
「え?そっか?!」
ルナの言葉がドキリと刺さった。「あら?」と小首を傾げる。
「今日は隊服しっかり着てるのね?」
「……」
「まあ、いいけど。いい加減直さないと怒られると思ってたのよ。隊長が」
「え?キラさんが?!」
知らずきゅっと隊服の前をまた改めた。
違う違う、キラさんが昨日付けてくれたキスマークの痕は、そういう意味じゃない筈だ。
キラさんと俺は一線を越えた関係である。
「好き」って言ってもらった事はないけど。
唇にキスをされた事もないけど。
キラさんは俺を乱暴に抱いた事はないし。
愛されてなくてもいい……。必要とされているのなら、それで良い。
今日はアスランとアスハ代表が来ている。
キラさんは今晩はラクス様と一緒に二人を歓待しているのだ。
(絶対に叶わない………)
ラクス様の柔らかな身体を、今頃抱いているのだろうか?
あの優しい愛撫を受けているのだろうか?
首を振ると、俺はルナの後ろを付いて行った。
もう20日間、彼に誘われていない。しっかりと数えてしまっている自分にも呆れるが、身体が求めるのだからどうしようもない。
………切ない?辛い?そんな訳がない。彼の気まぐれでも良いと望んだのは俺だから。
だから、キスマークが消えても、襟をちゃんと正したまま、俺は良い犬になったと思う。
「………会いたいなぁ…」
「誰に?」
「…夜の貴方に……」
ポツンと呟いていた。キラさんは俺の言葉に一瞬理解が追いつかなかったみたいだったけど、ボフンっと真っ赤になった。あれ?
「ゴメンね……アスランにバレて、注意されたんだ。『シンのことをなんだと思ってるんだ?!』ってさ……だから、身体だけ求めるのは止めようと思って」
どういう意味だろうか?俺が頭に『?』マークを浮かべていると、キラさんはやんわりと微笑んだ。
そっと彼の細い指先が俺の胸の中心を差す。心臓のある場所。鼓動を打つ所。生きてると感じる箇所。
「シンが、僕の事を想ってくれるまで……待つつもり」
「?!!」
「だってシンにはルナマリアが居るしね」
じゃあ、じゃあ、牽制のためのキスマークだったのだろうか?
(嬉しいんだけど………)
「……今晩、部屋に行ってもいいですか?」
初めて俺から言った。否定されたら怖くて言えなかった言葉。
キラさん、キラさん、キラさん……!!!!!
「その時に、俺の答えを聞いてくれますか?」
俺にとって、大切な存在に変わった貴方に、伝えたい言葉がある。
「………うん」
もしかしたら、キラさんも怖かったのかもしれない、と思った。
その夜、初めて指を絡めてキスをした。「好きです」って言いすぎて声が枯れた。
そんな俺が可愛いのだと、キラさんがキスマークをまた付けてくれる。