スイーツホットチョコレート。バキっといい音を立ててそれは欠けた。ついでカガリが自分の歯でボリボリと大きなハートのチョコレートを食べていた。ハートは下の部分から徐々に食べられて丸みを帯びた部分がなくなって行く。
「カガリ・・もう少し上品に食べれないのか?」
見かねたアスランが苦言を呈するが、利いた風はなかった。
「私の食べ方についてお前から文句を言われる筋合いはない!・・・大体お前らが軟弱なんじゃないか?」
「・・・悪かったよ」
溜息混じりにアスランが匙を投げる。カガリはそれに齧りつきながら、眩しそうに目を細めた。
「それに・・早く食べないと溶けちゃうだろ?せっかくなんだし」
「そうだな。奇跡みたいな気がするし・・・早く食べてやれ」
「それにしてもものすっごくどろどろに甘いぞ!!!アイツ将来糖尿病にならないか心配だな!!」
「・・・アイツのだからな。気を付けるように言っておく」
カガリの机の上に、解かれたオレンジのラッピング。そこにバレンタインカードが入っており、「愛してるよ」と書いてある。キラだった。
コロコロと口の中で転がす。キラの口に合った小さいサイズのチョコレートがだんだんと溶けていく。
トントンとノックがして、「はーい」と返事をする。ラクスが入って来た。
軽い仕事の話をして、ラクスがキラの仕事机に置いてある紫色のラッピングされた袋を見つけて微笑んだ。
「もらってるんですね・・・あら?色んな形で可愛いですわ」
「丸型の他にハート型や星型もあるんだよ♪」
嬉しそうに微笑むキラにラクスがおねだりする。
「私にも一つ下さいな」
「・・・ダメ!!」
「キラも可愛らしいですわね」
「・・・ちょっと違うような。だって僕の自宅に箱いっぱいに三箱届いてるんだもん」
お届け物が届いた時には思わずビックリしてしまったが、それだけ愛情の込められたものを他人に渡したくないと思った。すぐに冷蔵庫に入れて小分けにしてこうして職場に持ち込んでは食べている。
「可愛いのはあっちだよ」
「そうですわね・・・あの方が一生懸命に作ってらっしゃる所を想像すると微笑ましいです」
「・・・それにしても・・・」
「どうしたんですの?」
「ううん、何でもない・・」
チョコレートは超超激辛で、キラは先ほどから何度か火を噴くのを我慢しながら食べていた。来年は少し加減してくれると嬉しいな、と思う。
キラの指先に触れた一枚のバレンタインカード。そこには、「好きだぞ!」と書いてある。カガリだった。