ペーパー小動物系少年 [耶人→テンマ]
じっとしていることはまずない。
好奇心旺盛で、気がつけば隣にいたはずなのにちょこちょこと、どこかに行ってしまっていて慌てて探しに行くことも数知れず。
そして、どこでも寝てしまう癖。
「テンマァ…」
今日も午前中の訓練が終わった後に姿を消したテンマを探しに来て、日当たりのいい木の中腹辺りの枝にうまい事はまりこんで居眠りをしているテンマを見つけて、耶人はがくりと肩を落とす。
何もこんな猫のように隠れて寝なくてもいいのに、と溜息をついて木によじ登った。
「テンマ!」
わぁ、と耳元で大きな声を出すと、テンマは飛び起きて目を丸くする。よほど熟睡していたらしく、目を丸くして驚く姿が思った以上に可愛らしくて耶人はどきりとした。
「な、な…!」
「お、おい!」
ぐらりと姿勢を崩したテンマに腕を掴まれて、耶人も引きずられて木から落ちる。ズドンという音を立てて地面に落下して強かに背中をうちつけて、二人揃って蹲り唸る。
「いてぇ…」
目に涙を浮かべて痛がるテンマに心底馬鹿だと呆れてみたが、それでも可愛いと思ってしまうのは惚れたほうの弱みだろうか?
Fin
愛の一撃 [レグルス→テンマ]
走り回っている姿が可愛くてついつい追いかけてしまうのは、これはもうしょうがないことなのだから、いい加減にテンマも諦めればいいのに。
自分本位の考えにも気がつかないでレグルスは、後ろを振り向きながら走っているテンマの後にぴったりと付いてまわる。
「レグルス、邪魔!」
「なんでだよ?」
「お前が来たら童虎との修行の邪魔をするだろ!」
「邪魔なんてしないよ。テンマの色々をじーっと見て観察して、それからハグしてキスするだけだから」
けろりと言ってのけるレグルスにテンマはがくりと項垂れた。
頭はいいはずなのに、なんでレグルスはこんなに馬鹿なんだろうかと毎度のように思い、その度にもうどうしようもないからと溜息をつく。レグルスに「惚れた」と言われてから毎日、生きた心地がしない。耶人には怒られるし、童虎には呆れられるし、シオンには哀れな者を見る目で見られるし、マニゴルドにはからかわれて、エルシドには慰められた。なんでこの爆弾のような子供を止めるような大人はいないんだろう、と肩を落としていると、唇にふにゃりと柔らかいものが触れた。
「テンマ、かーわいい」
にこりと笑う綺麗な顔が至近距離にあった。
「…」
とりあえず、全力で拳をぶつけたのは言うまでもない。
Fin
どちら?と言われても [レグルス?←テンマ→?耶人]
「テンマよ」
ちょっとここに座りなさい、と珍しく童虎に説教スタイルで座るように言われてテンマは首を傾げる。最近は童虎に怒られるような悪戯はしていない。訓練だってちゃんとやっているし、聖域から抜け出して遊ぶような事もしていない。強いて言えば時々黄金聖闘士の目を盗んで幼馴染にサーシャに会っているぐらいだが、それを知っている童虎が今さら注意するとは思えない。
「俺、なんかした?」
「なにもしておらんから、叱っておるのだ」
「…は?」
「お主、本当に何にもわかっておらんのか?」
ため息混じりで言われても何のことだかさっぱりわからないテンマは目を丸くするばかり。
「耶人とレグルスじゃ」
「あいつらがどうしたんだよ」
「お主はどうなんじゃ」
「だから何が?」
全くわかっていないテンマに、童虎は呆れた顔をして頭をポカリと殴った。
「好きじゃ、と言われておるなら、さっさとどっちがいいか決めんか」
数回の瞬きの後、叫んで顔を赤くしたテンマに、まだまだ先は長そうだと疲れ果てた溜息をついた。