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    リビルディング/カリスマの話
    1ヶ月ぶりの更新で大変申し訳……10話目です🌟
    彼らを出さないということに耐えられませんでした。

    #リビルディング
    rebuilding
    #来世兄弟
    brothersInTheAfterlife

    来世兄弟10 元気に帰ってきた末っ子たちを見る。なんかすっきりとしているような。悩みでもあったのが解消したのかどうなのか。
     あぁでも千冬はまだ曇ってる。そんな気がする。無理やり聞き出そうとはしない、その方が拗れる可能性が高いことを知っているから。本人たちが何も言わないのなら聞かない。オレと青宗はそう決めている。
     まあ武道がすっきりしているのなら今はそれでいいかな。環境の変化が色々とあった、無理に急いで変わったり進んだりする必要など無い。
     こそこそとされるのはちょっと気になるけれど、そういうのも必要であるとは思っているから。

     それから数日後のこと。
    「お前ら早く準備しろー」
    「たか兄待って待って待って!」
    「千冬あれどこ!?」
    「知らねーっていつもちゃんと片付けろって言ってんだろ!」
    「うえええええ」
     ドタバタと家を走り回る末っ子たち。武道の部屋片づけろってそれは同意する。あいつなんであんなすぐ散らかせられるんだか。前の課題中のオレの部屋とかどうだったの、って言われたらー……何も言えないです何も言わないでおきます。
     青宗とオレはとっくに準備を終えてあとは出るだけ、という状態なので玄関先で待っている。青宗の準備したのはオレだけど。一応長男なんだから威厳を保ってほしいとは思ってはいるけれど難しいんだろうなあ、前は末っ子だったから。
     あくびしてぼーっとしてる。はいいつも通りで。
     どうしてこんなバタバタしているのかというと、もう時間がないから。それだけなんだけれど。
     一虎と家族になって、オレたちが書類上で羽宮家となってから毎週金曜日は一緒にご飯を食べよう、という制約というか。そういう約束ができた。それは家で手料理を食べる時もあれば、今日みたいに外食をする日だってある。一虎が予約をしている店の時間がそろそろ。だからバタバタしている。さっき学校から帰ってきたばかりだから。
     そもそも最初から今日行くということを知っていたのだから、あらかじめ準備をしておけという話なんだけれど……まあそこは。個人差あるし。
    「お待たせしましたあっ」
     双子が一緒に駆け込んできた。ドレスコードがあるだなんだと言ってきて、ジャケットスタイル。子供用だけれど。ちょっとちんちくりんに見えるな。まあそれも一興ということで。
    「曲がってんぞ」
     武道の曲がったタイを直す。
    「あ。ありがと」
    「いーよ。じゃ、いくか」
     全員の準備が終わったことを見渡して確認する。なにも問題ない、大丈夫。
    「行くぞ青宗ー」
    「イッッ」
     待ちくたびれて船を漕いでいた青宗を一発叩いて。今度こそ準備万端ということで。
     外に出るとご近所さんが買い物袋を下げて帰ってきているところだった。オレたちに気が付くとそのまま声をかけてくれる。
    「あらーみんなでおめかしして。どこかに行くの?」
    「こんにちは。こんばんは? 今からご飯食べに行くんです」
    「そう。気を付けてね」
    「はぁーい!」
     無邪気な子供を取り繕うのはなかなか精神的にくるものがあるけれど、こういう場面ではやっていかなければいけない。不審に思われるのもな。ご近所とは仲良くしておきたいし。良好なことに不可はないだろう。
     子供だけで住んでいることを近所の数名は知っている。そして気にもかけてくれている。この都会で今は珍しいのかもしれないけれど、それに割と救われていたりする。子供だけでなんだなんだ言われんのも面倒であるし。野菜とか食事を分けてくれることもあるし。節約に助かってますなんてね。
     手を振って別れる。そのまま道なりに歩いていくと見慣れた車。あまり見慣れたくないけれど。あれが知り合いの車とは思われたくねえんだけど。
    「遅かったじゃん」
     その車は黒塗りでいかにも……といった高級車。ぱっと見ヤの付くアレ。誰も関わりがあるなんて思いたくねえだろ。運転席側のスモークガラスが開いて顔が出てくる。
    「お待たせしました」
     オレたちのあたらしい保護者、一虎の姿。毎回これで来るんだよな。嫌がらせ? 最後の良心なのかなんなのか家の目の前には着けないが。それによって噂されることもねえんだけど。
     でもその車はない。マジで。
     一回なんで、って聞いたら「社用車」って返ってきた。思わず耳を疑った。つまり一虎が悪いのではなく東京卍會自体がアレだったということね理解した。できるかバカ。そもそも社用車を私的に利用するんじゃねえよ。
     そういうことも言ったけれど聞く耳を持たなかったので諦めている。もうだめだこいつは。
     その黒塗りの車を気にしているのはオレだけだということも嫌だ。青宗も千冬も武道も気にせずに乗り込む。慣れたもので。最初はビビってただろ覚えてるからな。慣れればいいとかそういう問題でもないんだけれど。
     文句を言っても仕方がないので、というかこれに乗るしかないのでため息を吐いて乗り込んだ。バイクではなく車を運転する彼の姿は、二十代前半で死んだオレたちにとっては新鮮だった。最初はね。
    「シートベルトしたかー?」
    「したー」
    「よろしく」
    「うし行くぞ」
     一虎はオレたちに交通ルールをしっかりと守らせてくる。昔無免運転上等だったのに。同い年から見るか、年上になってから見るかで変わるんだろうか。知る由もないけれど。一虎ならゴールドじゃなくても気にしなさそうだから尚更。
     そのまま車はゆっくりと動き出す。ちゃーんと安全運転で。これも以下略。
     車の行き先は六本木だった。そこに一虎の行きつけの店があるらしい。オレたちは初めて行く場所。ちょっと双子は緊張しているように見える。ドレスコードがある店なんて初めてだから。青宗は寝てる。こいつはもう大物。マイペースを行く男だよ。知ってる。
     かく言うオレもドレスコードなんてある場所、久々すぎるというかほぼ初めてに等しいので緊張する。車がゆっくりと減速してパーキングに入った。車の運転は丁寧な男。子供を乗せているから、っていうのもあるかもしれない。いやわかんねえけど。全部憶測。聞いても教えないだろうし。
     バック駐車も綺麗に枠内に収めて。こりゃ女は惚れるな。真剣な顔。そういう相手、居るんだろうか。……居たらあれか、オレたちを引き取るなんてことしないか。そういう相手がいたら子供の存在なんて厄介でしかないだろうし。しかも全員殆ど中学生みたいな年齢。
     車が完全に静止して降車する。六本木。六本木といえば……まあ、思い出す存在が無いとは言わないけれど。あの兄弟とはなんだかんだ付き合いがあった。モデルになってもらったこともあるし。今は天竺のところに名前があった気がするから社会人として働いているんだろう。全然想像できないが。
    「そういえば今日どこ行くの?」
    「ん? 肉」
    「肉!」
    「肉!」
    「お前らすぐ元気になるな」
     武道が聞くと肉という返事。それに沸き立つオレら。青宗も目がばっちり開いた。だって仕方がない。オレたち育ち盛りだもの。中学生と小学校高学年の兄弟は肉と聞けば黙ってられない。しかも絶対高くて美味いのが分かりきっている。もう正直腹がうるさい。
     そのまま一虎を先頭にしてぞろぞろと街を歩いて行った。

     ……大変、美味で……舌の上で肉が……溶けた……。
    「美味すぎ……」
    「あれ肉だった? 綿あめとかではなく……?」
    「オレたちは……何を……食べた?」
    「語彙まで溶けてんじゃん」
     溶けるだろあんなん。美味すぎてもう一口目から宇宙を見てたわ。ケラケラと一虎は笑う。あんな時価でメニューに値段が書いてない肉、いや料理全般に言えるけれど、そんなもの早死にして今は孤児だったオレたちが食えるわけない。これも高給取りで独身貴族を悠々と生きている一虎の財力あってこそ……。いやこういう言い方、アレかもしんねえけど。今ちょっと脳が溶けてるので。肉がうますぎて。
     つかもうスーパーの肉に戻れなくなる。まずい。まずいって。知っちゃった。マジで美味い肉の味を知ってしまった。もう一虎に集る。そうします。
     美味すぎる肉に舌鼓を打ち、パーキングに戻る道を歩く。日が完全に沈んだ金曜日の六本木は、行きよりかは人が増えていた。明日休みの人が多いだろうから。
    「あ」
    「あ?」
     道中、背後からの声。反射で振り返った。ら。
    「羽宮じゃん」
    「お前子供居たっけ?」
     明らかにオーラが違う二人組。顔立ちはとても整っていてスタイルも良い。顔が似ていて……兄弟、かな?
     オレは知らない人たち。一虎に声が掛けられたからこいつの知り合いか。顔を見たらげんなりと面倒という二つの感情が合わさったような顔をしていた。表現しがたい顔してんな。
     その二人組の身長が高いほう、髪が短くて髪を上げているにしている方と目が合った。少しだけ目が見開かれて驚いた様子を見せた。あれ、もしかして知り合いとかだったり……?
     記憶を掘り起こす。いや、でもかつての知り合いたちを成長させたとしてもこうなるってヤツは……。兄弟たちもわからないような顔をしているし。オレが知り合いにでも似ていたか。
    「なんでお前らここに居んの?」
    「いやここ六本木。オレらの庭」
    「まだ庭とか言ってんだ」
    「いつでも庭なんですが????」
     頭上で一虎と背が低いほうが言い合いをしている。いい大人が喧嘩すんなって。しかも高いほうはずっとオレを見てるんですけど。なんで? ええ……??
     男がどんどん近づいてきて、少ししゃがんでオレと目線を合わせる。
    「……」
    「……」
     いや無言。なんで? めっちゃ無言。気まずいんだけど。弟に頼むのは気が引けるから青宗助けてなあ青宗! 視線だけ動かして横にいる青宗を見ると斜め上を見て鼻をほじっていた。お前そういうところだよな本当! 期待なんてしてなかった!! 双子はぴったりと青宗にくっついていた。せめてそっちには気にしてやってくれ長男だろお前。
    「え、っとお……」
     沈黙に耐え切れずに何か言おう、と漏れたのがこの声。なぜか冷や汗が出てきた。プレッシャーが、こう。強い顔面から出ているのも影響しているのかもしれない。
    「ちっさくなったなあ三ツ谷」
    「え」
    「ん?」
     今この男はなんと言ったか。
     その声に反応して一虎と口論していた男もピタ、と止まる。
     三ツ谷という名は今ではもう持っていない名前だ。生まれ直したときは兄弟内でそう呼び合っていた時期もあったけれど、もう呼んでいない。兄弟として歩もうって決めたから。
     この姿を見て三ツ谷と呼ぶ人間なんてもう居ない筈である。なんで。なんで?
     ヤ、待て。六本木で兄弟。髪型とかを全部取っ払って、顔だけを見て。そうしたら見えてくる。もしかして。
     ……灰谷、か?
    「生き返ったの、お前」
    「え、三ツ谷!?」
     口の中がカラカラと乾く。身体が少し、震えて。背が低いほう……おそらく竜胆。竜胆もこちらへ寄ってきた。一虎は顔に手を当てて天を仰いでいた。
     うそだろ。真っ先に知られるのこいつらなんだ。てか、分かっちゃったんだ。
    「分かるの」
    「否定しねえってことはそういうこと?」
    「マジどうなってんの?」
     そのままひょいっと脇下に手を入れられて抱き上げられる。ぷらーんと足が揺れる。
     そうだ。否定すればよかった。でももう後の祭りだ。肯定したのと一緒。逆にもう否定したところで真実味が増すだけ。
     推定灰谷兄弟はオレを持ち上げたまま周囲の子供も見る。
    「じゃあこれ乾と松野と花垣ってこと?」
    「すげ、どーなってんの」
    「いやあの、おろして……」
     ずっとこれは嫌だ。目立つ。
     灰谷たちとは高校と専門学生だった辺り。個人的に付き合いがあって。先述したように課題のモデルになってくれたりと交流があった。結構遊んだ覚えはある。
     普通に東京卍會と天竺メンツで一緒に遊んだこともあるから。
    「羽宮なんでこんな面白いこと隠してんの?」
    「いや言えるわけねえだろこんなの」
    「それもそうか」
     そう言う大人たちの空気が少し、変わった気がした。なにかあんのか。
     オレたちのことが厄種になっているのであれば、さっさと忘れて生きてほしいものだけれど。だってもう十年以上前のことだ。
    「……あの、目立ってるから移動しません?」
     武道が恐る恐る、といった風に言い出した。気づいたら人通りは先ほどよりさらに増えている。子供が居て、一人は宙に浮かんでいて。そりゃあ目立つ目立つ。
    「それもそうか」
    「んじゃあっちで」
     オレは下ろされることもなく、そのまま灰谷。蘭のほうに抱えられながら移動……って待て待て。
    「下ろせっていい加減!」
    「えーヤダ」
    「もう小6なんだよキツイって!!」
     いくら喚いても聞いちゃくれなかったけど。コイツ……。
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    PROGRESSリビルディング12話/久々更新で申し訳。🈁🐶につなげたい話。ちゃんと終わらせたいので少し駆け足気味になります。
    来世兄弟12「た、だいまっ!」
    「うお、おかえり」
     夕食の準備をしていたら青宗が勢いよくドアを開けて飛び込んできた。肩を思いっきり上下させて呼吸を整えている。全力疾走してきたということか。けれど青宗がこうなるってことは何かがあったんだろう。
     菜箸を置いて青宗の方へ近寄り片手を差し出した。
    「どうしたんだよ」
     青宗は素直に右手を乗せて顔を上げる。その顔は汗で塗れていた。白い肌のせいか一層赤く見える。少しだけその体勢のまま息を整えて口を開けた。
    「いや、……ココが」
    「あー」
     成程な。大体を理解した。
     青宗はオレたち兄弟の中で一番旧友たちと関わりたくないと思っている人間だろう。だから色々と慎重に考えていたのはなんだかんだ青宗だし、オレが考えて導いても最終決定権は青宗だった。特にココくんに対しては、青宗自身のことを完全に忘れて欲しいようでチラつかせるようなこともしない。すれ違うことも許さない。あの業務用スーパーで出会ったのも偶然からきた割とやばいハプニングだったけれど、どうにか切り抜けたし。
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