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    ふく波羅探題

    @fukuharatanda1

    K暁の短い小話置き場
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    ふく波羅探題

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    遅刻したけどプロポーズの日のK暁
    ケケの過去が気になるaktくんと振り回されるケケの話

    センチメンタル・ボーイ「KKのプロポーズってどんな感じだったの?」
     時計の秒針の音を唐突に遮って、オレの手を弄びながら暁人は言った。
     歯の溶けるような甘ったるいムードだなんてお互い待ち合わせてもいないが、仮にもすっ裸で同衾している時に過去の恋愛事情の話なんざ持ち出されては余韻も何もあったもんじゃない。しかも言語中枢が勝手にその意味を理解して、記憶の奥底にしまっていたその日の出来事を呼び起こした。
     別れただけならいざ知らず、一度死んだ身としては苦い思い出だ。エドの報告によるとアイツらは不自由なくやっているらしいが、暁人とこんな関係になった今でも思い出せばそれなりに感傷じみたものが湧いてくるほどにはまだ情もある。
    「さあな、忘れちまった」
    「ふうん」
     下手な誤魔化しに、暁人はなおもオレの左手を好き勝手触りながら不服そうな色を滲ませて返した。手のひらを這う親指が手相をなぞっていく。生命線を数度も往復し、ときおり甲に回った指が骨を辿る。
     触れられるのは不快じゃあない。むしろオレより熱いその手は微睡みを誘うような心地よささえ感じる。気の済むまでさせてやろうと黙って目を瞑っていると、暁人の指がオレの薬指の根本を撫でた。たまたま触れたわけでもなく、ありもしない輪の形を辿るように、しつこく。
    「KKもやっぱり指輪してた?」
     先ほどよりも低い声が鼓膜を震わせる。わずかに沈みかけていた意識がゆるりと浮上して、重くなっていた瞼を薄く開いた。
    「何でんなこと聞くんだよ」
    「別に。気になっただけ」
     一瞬だけ合った視線が外される。その仕草を見た瞬間、元よりオレの過去のことはほとんど詮索しない暁人が何故わざわざこんなことを聞いてきたのか、何となく合点がいった。
    「嫉妬か?」
     伏せていた暁人のまつ毛が持ち上がり、オレを睨みつける。たかが子供のヤキモチで過去のことを掘り返されて、睨みたいのはこっちの方だ。だが暁人はオレの薬指を撫でる指を止めないまま「さあ」と曖昧に返した。
    「今日何の日か知ってる? プロポーズの日なんだってさ」
    「だから気になったってか」
    「そうかも」
     だとしたらセンチメンタルにも程がある。10代の女子供ならいざ知らず成人した大の大人、それも一端の男だ。呆れるところのはずだが、可愛いところもあるもんだと思わず吹き出してしまう。
    「暁人、オマエもプロポーズしてほしいクチか?」
    「いらないよ。そんなの」
     だが暁人はキッパリと、からかいの混じったオレの申し出を断った。見せつけるように撫で回していた薬指を口に含む。口淫を思わせる動きで舌に唾液をまとわり付かせながら奥まで咥えると、その根元で前歯を立てた。予想していなかった痛みに思わず喉の奥で唸る。暁人はゆっくりとオレの薬指を口から出すと、オレの目を見てニヤと片頬を上げた。
    「言葉も物もいらないよ。そんなのなくたってKKは僕のだ」
     さっきまでセンチメンタルかましてたやつがよく言う。受けてやるよ青二才。
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    takeke_919

    DONE #毎月25日はK暁デー
    素敵タグにギリギリ間に合いました💦
    お題は「おはよう」
    Kは成仏したのではなく、暁の中で眠りに付いたという説を添えて。
    毛色の違う話が書きたいなぁと思い至ったまでは良いものの、毎度のことながらお題に添えているかは迷走してます🤣
    目醒めの言の葉 東京の街を覆っていた濃く暗い霧は晴れ、東の空からは眩い光を放つ日輪が顔を覗かせている。

     幾重にも連立する朱鳥居を潜り、石燈籠の淡く揺らめく灯りに照らされた石階段を登る暁人の胸中には全てを終わらせた事による達成感と、追い求めた者を失ってしまった喪失感。そして、自身の中に宿る男への寂寥感が入り混じっていた。男の悲願は達成され、その魂が刻一刻と眠りに就こうとしているのを肌身に感じる。

     本当に独りぼっちになってしまう。

     そうは思うものの、妹に、両親に誓った。泣いても、みっともなくても生きていくのだと。次に会うのは、最後の最後まで生き抜いた、その後なのだと。

     一歩一歩、階段を登る最中にKKから彼の妻子に向けての言伝を預かった。『最後まで、あきらめずに生き抜いた』と、そう語られた言葉は、彼の想いが沢山、たくさん詰まった大切なモノだ。何があっても絶対に伝えなくてはと、しかと心に刻み込んだ。
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