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    azusa_n

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    モクルクとニンジャジャン5
    同道組はエリントンの近くの国にいた様子。
    そういえばまだショーそのものをやってなかったなと思った次第。今回はチケットを渡すだけ。

    #モクルク

    退院祝いにと二人で行った食事ではミカグラの酒を一合ずつ一緒に飲んだだけ。
    「今日はモクマさんのお祝いなので」と量を飲めないこちらに遠慮したようだ。
    終始ご機嫌なルークと食べる飯は、それまで栄養に重きを置いた味気ないものだったことを差し引いても格別だったけど。

    退院してしまえばすぐにミカグラを離れる日になった。忙しい日々が始まり、気付けばもう冬。
    アーロンはハスマリーに戻り、ルークも復職し、忙しい日々を過ごしているとのことだ。時折連絡はとるが、あれは眩しい夢だったのではないかと思う日もある。

    そんな時にチェズレイに言われた。
    「今週末にエリントンで行われるニンジャジャンショーの出演依頼、ご興味おありでしょうか」と。
    週末はショーに出ること、裏組織を潰すのと合わせて一週間で。
    アジトの間取りや潜入の決行日、必要な要人の一覧まで事前調査が至れり尽くせりなのは、残った期間は好きな場所ルークの家で休暇に充てろということだろう。
    一も二もなく飛び付くと、渡されたのは航空券。
    …3時間後には搭乗手続きを行う時間の。
    「急すぎない?」
    「では、私が行きましょうか。ボスに直接渡したいものもありますから。」
    「…や、大丈夫。荷物少ないからすぐまとめ終わるし。」
    「次はありませんので、ご健闘を。
    ああ、もしボスの望まぬ行為をしたら切り落としますので、そのつもりで。」
    「……それ、何をか聞いても大丈夫なやつ…?」
    「何、ですかねェ。命やあなたの仕事には影響しないかと。」
    不敵に笑う相棒にそれ以上問うことはせず、大急ぎで準備をし、リカルド行きに乗り込むのだった。



    「もしもしルーク、今大丈夫?」
    『モクマさん! はい、少しなら。』
    「あんがと。こっちは随分寒いよ、もう冬だねぇ。そっちはどう、今晴れてる?」
    『夕方から降るらしいですけど今は、……ああ、曇りみたいです。降り出しそうな雲ですがまだ降ってな…い……、って、え?モクマさん?!』

    来客でも使用する署の駐車場から、ブラインドが動いた所に向けて手を振る。こっちからは顔を確認できないが、ルークなら分かっただろう。アーロンの視力が異様に高いせいで見落とされがちだが、射撃を得意とするルークの視力も相当良いのだから。
    「ご明察。今、ちっと出てこれる?」
    『はい! すぐ行きますから待っててください』

    数分後にやってきたルークは走ってきたそのまま飛びついてきた。相手が俺じゃなきゃ尻餅つくんじゃなかろうかって勢いだ。流石はドギーと言っていいものか。

    「モクマさん、本物だぁ」

    全力疾走の後の荒い呼吸のまま、体重をかけて抱きついてくる。なかなかグッとくるものがあるなと感動の再会に似つかわしくないことも考えつつ、こっちからも腕を回して、背中をぽんぽんと撫でつつ息が整うのを待つ。

    「熱烈な歓迎だねぇ。そんなに寂しかった?」
    「はい。 …なんて、月に一度は連絡くれてるのに、贅沢ですよね。すみません。」
    軽口のつもりで言ったら真正面からカウンターを食らってしまった。思わず手が止まった。抱き締める意味が変わりそうで、ルークの背中で拳を握る。
    「うんにゃ、そう思ってくれるのは嬉しいもんだよ。本当に。」
    これ以上くっついていると歯止めが効かなくなりそうで、可愛い子ぶる表情をつくって高い声を引き出す。
    「俺もね、……ルークに会いたくて仕方なくなっちゃって、思わず来ちゃったの。お仕事中なのは分かってたんだけど我慢できなくて。」
    ルークが思わず吹き出して、ついでに身体も離れた。こんな所でいつまでも抱き合ってるのもどうかと思うが、離れればエリントンの寒さが身にしみる。

    「電話にすぐ出られないことも多いんですから、来るなら来るって言ってくださいよ。教えてくれれば空港まで迎えに行ったのに。」
    「今回、急だったからさ。今朝はまだここに来るって思ってなかったくらい。ほんとチェズレイったら人遣いが荒いんだから。」
    「そういえば、チェズレイは一緒じゃないんですね」
    「今回はひとり。届け物があってね。」
    「届け物?」
    最低限の荷物しか持っていないから、たまにチェズレイが送っているような大きめの小包なんて今はない。
    「これ。チェズレイから」
    分厚く、『あなたのピアノの先生より』と記載された封筒を渡す。
    「今確認しても大丈夫ですか?」
    「ああ」
    そっと封を破り、紙の束の最初の一枚に目を通すと、眉間に手をやってしばらく考え込んでいた。
    続けて数枚を捲り、小さく溜め息を吐いた。
    「……なるほど、明日の…。 …詳しくは聞けませんが、モクマさんもどうか気をつけて。」
    想像はしていたが、手紙には今回の任務に関わることが書いてあったらしい。
    「ん、気をつけるよ。それからこれは俺からのおみやげ。」
    薄い紙が数枚入っただけの、封もしていない封筒を渡す。
    一言断って中身を取り出すと、ルークの目が輝いた。

    「これは……ニンジャジャンショーのチケットですか。今週の土曜日と日曜日、ですね。ありがとうございます! モクマさんが出るんですか?」
    「うん。今週末だけね。どれか時間が合うやつがあったら見に来てよ。」
    「もちろん、全部見に行きます。」
    「公演内容はどれも変わらんからね。ルーク、ちと疲れ気味みたいだからあんまり無理せんで欲しいけど。」
    目の下の隈やら、無精髭だとか、少し痩せたんじゃないかとか。色々つっこみたいところではあるが、苦笑いを浮かべている本人が一番分かっていそうなのでそこまでにしておく。
    「ちゅうか、もう持ってたりした?」
    「いえ、休みが合う気がしませんでしたから。
    ……それに、こっちに戻ってから一度見に行ったんですが。ふと、モクマさんのショーと比べてるって気付いてしまって。それからはショーは行かないようにしてました。」
    「ルーク……」
    特撮もアニメも映画もどれも楽しんでいるルークが。アーロンの棒読みワルサムライもすんなり受け入れていたっていうのに。
    それは他人の食べ物を奪うワルサムライの姿と気を抜くとルークの飯を奪うアーロンがダブって見えたことが原因かもしれんが。

    これはちょっとは自惚れても仕方ないんじゃなかろうか。
    「またモクマさんのニンジャジャンが見れるの、すっごく楽しみにしてます。」
    「こいつは気合いいれないとね。」

    「ところでモクマさん、泊まるところは決まってるんですか?というか、こっちにはいつまで?」
    「土曜日の分まではショーの運営側で宿用意してもらってるよ。こっちにいるのは、今のところ火曜までかな。」
    「それなら、ご迷惑でなければうち来ませんか?」
    「いいの? そいつは助かるけど」
    「もちろんです。モクマさんならいつだって構いませんって。」
    「ありがとね。実はこの後お願いしようと思ってたんだ。」

    冷たい風の吹く中、ふと水滴が当たった感覚。
    もうすぐ雨と言っていたっけか。
    「そろそろ本格的に降り出しそうだ。寒空の下あんまり引き止めちゃ悪いね。」
    「…そう、ですね。 あ、モクマさんは傘持ってますか?」
    「いや。でも借りたらルークのなくなっちゃうでしょ?」
    「いえ、折り畳みと置き傘、両方ありますから。」

    帰りがけに借りたのは、年季の入った黒い傘。
    キャラクターものか青い傘を選びそうなルークらしくもない、もっと年嵩の男が使うような品だ。

    ルークの家はこんな物がたくさん転がっているんだろう。いっそ片っ端から思い出を聞いて回ろうか。
    俺と思い出を話した物として、家の中を塗り替えるみたいに。
    それは、死人にはもう出来ないことだろう?

    「……なんて言って、脱獄したとかナデシコちゃんから連絡が入ったらどうしようね。」
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    PROGRESS第9回お題「野菜」お借りしました。
    #チェズルク版ワンドロワンライ
     分厚い紙の束を取り出すと、つやつやとした様々な色合いが目に飛び込んでくる。
     グリーン、ホワイト、パープル、レッド、イエロー……派手な色が多い割に、目に優しいと思えるのは、きっとそれらが自然と調和していた色だから、なんだろうな。
     大ぶりの葉野菜に手をのばして、またよくわからない植物が入っているな、と首を傾げる。
     世界中をひっちゃかめっちゃかにかき回し続けている「ピアノの先生」から送られてくる荷物は、半分が彼の綴るうつくしい筆致の手紙で、もう半分は野菜で埋め尽くされていることがほとんどだ。時折、隙間には僕の仕事に役立ちそうなので、等と書いたメモや資料が入っていることもある。惜しげもなく呈されたそれらに目を通すと、何故か自分が追っている真っ最中、外部に漏らしているはずのない隠匿された事件にかかわりのある証拠や証言が記載されていたりする。助かる……と手放しで喜べるような状況じゃないよな、と思いながらも、見なかったフリをするには整いすぎたそれらの内容を無視するわけにもいかず、結局善意の第三者からの情報提供として処理をすることにしている。とてもありがたい反面、ちょっと困るんだよなあ。
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