出られない部屋(明治、非エロ)「なんじゃあここは!!」
「相変わらず騒がしいですなあ」
俺たちは部屋のようなところに閉じ込められているようだった。白っぽい壁と床に囲まれており、1面だけ扉らしきものがある。ただし錠付き、薩摩隼人の鯉登があれこれしたってびくともしない。
扉の上には文字が大きく書かれている。互いに、本心から褒め合えば出られるとのことだった。固く閉じた扉と文章のみのこの部屋から出る方法はこれ以外無さそうだ。
「……書かれてある通りのことをすりゃあさっさと出られるのではないですかねェ」
「クソッ!それしかないのか……尾形上等兵の良いところ!どこだッ!」
「酷い言い分ですなァ。本心でないと駄目だそうですから。真剣に考えてください」
「声ッ!声だッ!尾形上等兵は声がイイッ!次!!尾形上等兵も私を心から褒めろッ!良いところを挙げろ!!」
「……」
「早く言わんかッ」
「鯉登少尉殿は剣術に秀でている」
「エッ」『カチャッ』
鯉登少尉が声を上げるのとほぼ同時に解錠されたような音が耳に入る。扉に手をかければあっさりと開いた。無事、条件を満たしていたようだ。
「開きましたよ。早く出ましょう」
「……ウン」
「それにしても、驚きましたなァ。鯉登少尉殿が俺の声をイイと思ってくださってるとは。精々、銃の扱いが上手いだとか何だとかを言われるものかと思ってましたが」
「これ以上、言うなッ!!」
首まで紅くして涙目になっている鯉登。じわじわと湧いてくるこの感情は何だろうか。ただ、このまま手を引いてどこか連れ去ってやったら面白そうだと、思った。