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    CQUEEN57235332

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    切島くん夢

    #hrak夢

    1.いざ雄英へ頭の中の未来フィルム.1
     あれから半年。憂無は青革手帳に要点をまとめ、赤革手帳に毎日を綴っていた。もう、受験の季節である。憂無は珍しく次の日の夢ではなく、先の時間軸の──雄英高校受験結果を見た。結果、ヒーロー科は落ち──別の高校へと行く夢であった。憂無は慌てて天哉の母に話しに行く。
    「おばさん、おばさん!!」
    「どうしたの? 憂無」
     それが……と、憂無は雄英の普通科も受けたいという旨を話した。
    「いいけれど……急に、どうしたの?」
    「いや、別に……ただ、予防線を張っておきたくて……」
     天哉の母は快く普通科への受験を許してくれた。憂無はこれで安心して受験勉強が出来る。そうホッとしたのも束の間、すぐにその日は来る。

     § § §

     ヒーロー科実技試験。ロボットを倒し、P(ポイント)を獲得していく方式らしい。走って走って、ロボットをどうにか倒していく。二、三体倒したところで近くにいた黒髪の男子がロボットの破片が頭に当たりそうになるところで──目が覚めた。

     § § §
     
     受験日当日。憂無は制服に着替え、マフラーを目深に巻く。
    「さあ今日は受験日だ! 行くぞ憂無!!」
    「ハイハイ」
     ところで、と天哉は話す。
    「君は『普通科』も受けていたな。どうしてだい?」
     そう来たか……。
     憂無はそう思いつつ気怠げに話す。
    「そりゃー……ボクは天哉みたいに強い『個性』でもないし……一応予防線だよ、予防線」
     そうか……と天哉はまた話して来そうであったので憂無はさっさと早歩きで雄英高校まで向かった。天哉が途中で話し掛けて来ても無視を決め込んだ。
     そびえ立つ雄英高校。広く、大きい。受験者達はホールに集められる。筆記試験が終わると、実技試験の説明に移った。ボイスヒーロー、プレゼント・マイクが説明をしている。
    「今日は俺のライヴにようこそー!! エヴィバディセイヘイ!!」
     何も返って来ない。するとプレゼント・マイクは言う。
    「こいつぁシヴィー!! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!?」
     YEAHH!!
     プレゼント・マイクは叫ぶが受験生達は全くもって何も返さない。入試要項通りの説明が為された後、ある生徒──天哉が手を挙げて質問をしていた。どうやら仮想敵(ヴィラン)を三種と言っていたのに対し、プリントには四種と記載されていたのがどうしても気になったらしい。
     うーん天哉らしいけどさあ。
     憂無はそう思って話の続きを聞く。
    「俺からは以上だ!! 最後にリスナーへ我が校『校訓』をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った! 『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!! 『Plus  Ultra』!!」
     それでは皆良い受難を!!
     そこで憂無は立ち上がり──制服を脱ぐと模擬市街地へと向かった。制服やら通学鞄の諸々は所定の場所へと置く。
    「いやあ制服の下にジャージ着といて良かったよ。温かかったし」
     周りからはギョッとされたがそれを気にする彼女ではない。受験票に載っている番号を頼りに充てがわれた模擬市街地へと向かった。
    「げ」
     憂無は天哉の姿を見つけると慌てて人波に姿を隠す。どうやら天哉は男子生徒に注意をしていたようだ。まあそれ以上は見ていないので彼女は知らない。憂無は今か今かと開始の合図を待つ。
    「ハイスタートー!」
    「………………まさか」
     これが合図?
     思わず立ち尽くしていると更に追い討ちが来る。
    「どうしたあ!? 実戦じゃカウントなんざねえんだよ!! 走れ走れぇ!!」
     賽は投げられてんぞ!?
     その言葉で憂無は走る。他受験者も皆、走っていた。細い体で1P(ポイント)敵(ヴィラン)にタックルをする。グラリ、仮想敵(ヴィラン)が倒れた。
    「まずは……1P(ポイント)!」
     憂無は少しずつ、周りには劣るが着実にP(ポイント)を稼いでいた。幾らか倒したところで、黒髪のジャージの男子生徒が仮想敵を倒すところを見る。
    「あ」
     遠くから破片が飛ぶ、それはとても鋭くて。当たれば怪我は免れない大きさだった。
    「危ない!!」
     男子生徒の前に出るようにタックルをした。
     硬っ……! 壁!?
     ガツッ、と憂無の額に破片がぶつかり──そこでブツンと意識が途切れた。血が溢れる。頭から、大量の血が。
    「っ、オイ! 大丈夫か!?」
     男子生徒の声は届かない。憂無は以前気絶したままだ。男子生徒は憂無の頭をジャージの上着で止血し、道の脇に転がす。
    「……これで大丈夫だといいけどよ…………」
     そう言って男子生徒は去っていった。男子生徒の『個性』は『硬化』。つまり、憂無が庇わなくても大丈夫だったのであるが──彼女はまだ知らない。
    「チユ〜!!」
    「………………はっ!」
     憂無は目を覚ます。身体には止血の代わりに巻かれていたジャージがかけられており、破片にぶつかったはずの頭はなんとも無い。慌てて周りを見るも、前には背の小さいお婆さんしかいなかった。
    「全く、こんな見つかりにくい場所にいたなんて! 危うく取り零すところだったよ!」
    「えっと…………」
     ここは雄英の模擬市街地だ。ならこの人は──。
    「リカバリーガール……?」
    「そうさね。もう試験は終わったよ。ホラお帰り」
     リカバリーガールにクマ型のグミを貰い、憂無は雄英を後にした。
    「遅かったじゃないか! 憂無!!」
     自宅へ戻った際いの一番に天哉が憂無に声をかけて来た。憂無はバツが悪そうに言う。
    「……ただいま」
    「……おかえり! もうご飯は出来ているぞ!」
     そうなんだ、と憂無は言った。自室に戻り、赤革の手帳に記す。他人を救けて自分が倒れてちゃダメだ。そう思いつつ、書いた。そしてご飯を食べにリビングへと向かう。夕食を食べた後、憂無は血に濡れた誰のものかわからないジャージを水で洗った。そうして洗濯機の中へと放り込む。

     § § §

     一週間後。もうそろそろ入試の結果が出てくる頃だ。正直、憂無の気は重い。恐らく──ヒーロー科は落ちているだろう。天哉の母に渡された郵便物を見て封を切る。ピリピリと破かれたそれの中に入っていたのは所謂お祈りメールだ。大して落ち込む事もせず、憂無は普通科の結果を見た。結果は合格。春から雄英の普通科に行く事になるだろう。ふ、と息を吐いた。コンコン、とノックされる。天哉の母だった。憂無は笑って言う。
    「あー。ヒーロー科はダメだったけど、普通科にはなんとか受かったよ」
    「そう……おめでとう! 憂無……」
     そう言って憂無を抱き締める。戒めが解かれると憂無は聞く。
    「……天哉は?」
    「ああ、天哉ね。受かってたわよ、ヒーロー科」
    「そっか……おめでとうって、伝えといて。おばさん」
     そう言い、ドアを閉じる。ベッドにダイブすると憂無は丸まって枕を濡らした。やはり──悔しいものは悔しいのである。憂無は目いっぱい泣くとまた、赤革手帳へと書き記した。

     § § §

     夢を見た。今度は雄英に通う夢。そして金髪の男子生徒に声を掛けられ──そこで画面が変わる──。

     § § §

     四月。雄英高校への初登校日だ。憂無は念入りに櫛を通し、髪を整える。制服はヒーロー科のものとは多少違う。制服を整えて朝食を食べにリビングへと向かった。
    「おはよう! 今日はちゃんと起きてるな!」
    「おはよう。……いつもちゃんと起きてるよ」
    「そうかい? いつも君は──……」
     天哉が話し始めようとした時、憂無は大袈裟に言う。
    「いただきます!!」
     もぐもぐとご飯を食べる。暫くして食べ終わると憂無はごちそうさまでした、と言って新調した通学鞄を手に持つ。天哉が遅いぞ、と言わんばかりの表情で玄関で待っていた。
     それじゃあ──。
     いってきます!
     天哉と憂無はそう言って一歩を踏み出した。天哉は憂無に言う。
    「今日は映えある雄英高校への第一歩! 先輩方や先生方に失礼の無いように……」
     流石に四面四角な天哉の言葉は慣れているのか憂無は軽くあしらう。
    「聞いているのか!?」
    「ハイハイ、聞いてるよ……」
     溜息を吐いて天哉の話を聞いていた。電車に乗ると人が多く、ギュウギュウに詰まっている。天哉は憂無の手を掴むと言う。
    「こっちだ!」
     すぽん、と憂無の体が人混みから抜けると天哉は言う。
    「俺の方が慣れているからね、電車は。さ、大丈夫かい?」
    「ああー。そういや天哉は中学電車通学だっけ……」
    「そうとも! 電車に慣れないうちは俺を存分に頼るといい」
    「ん……まあ、じゃーそうさせてもらうよ……」
     憂無はがたん、ごとん、と電車に揺られつつ外を見ていた。コンクリートジャングル。そして──……。
    「さあ、着いたぞ! 憂無!」
     雄英の最寄駅だ!
     憂無はこくんと頷くと天哉に言う。
    「じゃ、私普通科だから」
    「おお、そうだな! ではまた放課後に会おう!!」
     早い天哉に合わせてたから大分早くなっちゃったな……。人、いないや。
     憂無はぼうっと手帳を見る。読んではいない。ちら、と通学鞄を見る。その中には誰のものか判然としないジャージがしっかりと洗われてしまわれていた。
    「はーーー……」
     溜息。
     このジャージどうしよう? とりあえず持って来ちゃったけど……救けてくれた人が受かってるとも限らないし………………。
     また溜息。
     そうしていると憂無の耳にガヤガヤと人の声が聞こえて来た。手帳を閉じると机の収納スペースへとしまう。その他の教科書やノート類も合わせてしまった。新入生は先に憂無がいる事を少し驚いていたようだった。憂無は挨拶される生徒の名前と似顔絵をサラサラとかいていく。
    「へえ、上手いね。絵」
     後ろの席から声を掛けられる。どうやら手帳にかいていた物が見えたようだ。憂無は軽く笑って言う。
    「そう? ありがとう。君は?」
    「俺は心操人使。よろしく」
     しんそうひとし……と名前を書き、横に簡単な似顔絵を描く。手帳をしまうと憂無も挨拶をした。
    「私は前宮憂無。よろしく」
     そう話していると教師が入って来た。簡単な挨拶に、始業式、ガイダンス……そして。
    「自己紹介の時間だ!」
     と担任が言った。皆当たり障りの無い事を喋っていた。そして。
    「次、前宮!」
    「あ、はい」
     気の抜けた声で憂無は言う。
    「前宮憂無です。出身は胡蝶中学校。夢は『最高のサイドキック』になる事です」
     ざわ、とクラスが騒めく。
     引かれるのだって承知も承知だ。これを乗り越えられなかったら──ヒーローなんて夢のまた夢、なんだから。
     その後、心操が自己紹介をしていた。憂無は皆の自己紹介を手帳に書き込みつつ、聞いている。自己紹介が終わった後、憂無の机を数人のクラスメイトが囲んだ。剣呑な雰囲気に手帳をしまう。
    「あのさぁ、前宮さあ……」
    「さっき夢がヒーローつってたじゃん?」
    「それ……」
     めちゃくちゃいいな!!
     歓待に憂無は思わず目を丸くする。憂無は咄嗟に良い言葉が出ず、言う。
    「あ…………うん」
     彼女は少し赤くなっている。その後授業も無く、憂無は天哉のいるであろう一年A組へと向かった。A組では丁度、『個性』把握テストが終わったところでほぼ全員揃っていた。憂無は天哉を探してA組へと足を踏み入れる。
    「天哉〜」
    「お! なぁなぁ、俺と飯とかいかね? この後!」
    「え……………………別に、良いけど」
    「やったー! んじゃ俺、すぐ支度してくっから! 待っててくれよな〜!」
    「うん」
     天哉の姿を探せば彼は既にいなかった。もう帰ったのだろうか? と憂無が思っていると金髪に黒メッシュの先程声を掛けて来た生徒がやって来る。
    「お待たせ! んじゃ行こうぜ!」
     ハンバーガーショップへと行くらしい。なんでも、彼の大好きな物だとか。道すがら話していると彼は上鳴電気というらしい。憂無も自己紹介をする。そしてハンバーガーショップで注文をした後、憂無はポテトを摘みながら聞く。
    「上鳴はさ、なんで私を誘ったの?」
    「ん〜? ビビッと来たっつーか……ノリ?」
    「ノリ」
     上鳴は笑って言う。
    「まあ、いいじゃん? そういう難しい話は」
    「まあ……いいけども」
     それからハンバーガーを食べたり、ジュースで粘ったり、話に花を咲かせていた。あれ? 結構良くね? 等と思う上鳴。そして帰り道。
    「あのさ、前宮。俺……お前の事割と好きかも? って思ったんだよな……」
     だから、付き合わね?
     その言葉に憂無は凍り付く。哀しげな顔を一瞬し──言う。
    「いや、多分。無理だよ、私と上鳴じゃ」
    「へ」
    「じゃあ、私こっちだから」
    「いや待てって!」
     がしりと手首を掴まれる。憂無は上鳴を見、言う。
    「そんなんじゃ流石に俺納得しねぇよ!? 何!?」
     憂無は溜息を吐いて言う。
    「私さあ、すごく、忘れっぽいんだよね。『個性』のせいでさ」
    「『個性』……」
    「そう、『個性』。私の場合は………………『予知夢』なんだけど、その副作用っていうの? 一度『予知夢』を見ると古い順に記憶を失っていくんだよね」
     だから。
    「こんなのと付き合おう、なんて思わない方がいいよ」
     憂無は笑って言った。上鳴はきゅ、と唇を引き結び、言う。
    「俺さ、前宮のそういうのとか知らずに軽々しく言っちまったなって思ったよ。でも! 付き合えなくてもさ……他の関わり方は、あるよな?」
    「何が言いたいの」
     上鳴は手を差し伸べるように出し、笑って言う。
    「友達、なろうぜ!」
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