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    🪦村川🪦

    twst中心二次創作用垢/20↑/twst→🌸監(男装♀)で文章書いたり妄想したり。🦁さんの夢女。🐚寮箱推し気味ですが皆大好き/おべいみにどハマり中。次男と🌸MCちゃん推しで四男六男の夢女/のんびりまったり/腐×ですごめんなさい/アイコンは@tunral様よりお借りしています/FRBご自由に/お友達募集中です

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    🪦村川🪦

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    アズ監書きかけ

    #twst小話@村川
    twstSmallStory@Murakawa

    恋と病熱


    ああ、これは夢だと自覚した。
    夢の中で夢だとわかる夢、いわゆる明晰夢というやつだ。己の現状が腑に落ちた。なにせ今目の前にいるのは、可愛らしい白の洋服に青のスカートを翻し、にこやかな笑顔の監督生さんだ。これが夢でないというなら一体何なのか。僕の前でそんな姿を見せることなどあり得ない。僕と彼女は……どう好意的に見積もっても知人以上友人未満で、普段男装をして過ごしている彼女がこんな風に女性らしいお洒落をして出かける相手に僕を選んでくれるとはとても思えない。
    キリ、と喉元が痛んだ。
    どうせ夢なら自分の都合のいい展開になってくれないだろうか、と思った瞬間に、夢の中の彼女が声を発する。
    「アズール先輩、早く行きましょう!」
    差し出された手を握った。柔らかく温かいそれは存外強い力で僕をどこかへと引っ張っていく。どこへ向かっているかわからないまま、ひたすら足を動かした。
    周りの景色が変化する。学園の廊下、オクタヴィネル寮の入り口、温室、教室に入ってモストロ・ラウンジから出る。鏡の間を通ってグラウンドに着いた頃、ひたすら前を見つめて歩いていた彼女が振り返ってにこりと微笑んだ。
    頬が熱くなる。以前は相棒(グリム)とハーツラビュルのエース・トラッポラとデュース・スペード、その少し後からサバナクローのジャック・ハウル、直近では自分にも少しは向けてくれるようになった笑顔。
    「楽しいですね、アズール先輩」
    呼んでくれるようになった名前。繋がれたままの手。
    確かに都合のいい展開だ。誰に? 自分に。どこが? 彼女が親しく接してくれることが。何故? 現実とは異なるから。
    何故、現実とは異なり彼女が親しくしてくれることが自分にとって都合がいいのか?

    脚がもつれた。

    無様に転ぶ。反射神経があまりいいと言えない自覚はあるが、とっさに彼女の手を離せた事を褒めてやりたい。彼女の前で醜態を晒した事は夢だからいいとしても、夢のくせに妙に顔面が痛くて腹が立つ。そんなところは鮮明にしなくていいんだよ明晰夢。どうせなら彼女の掌の柔らかさを再現しろ僕の脳。再現も何も脳に蓄積されていない事象(データ)だが。ああそうかこの痛み、2週間ほど前に飛行術の授業中にバランスを崩して顔面から落ちた時のものにそっくりだ。再現に問題はないぞ僕の脳、夢の中では余計なことをするんじゃない。
    目の前に白魚のような指が差し出される。眼鏡をかけていないのによく見えることに気付いた。夢なので何の問題もない。顔面が破片で血だらけにならずよかった。
    「大丈夫ですか、アズール先輩」
    だいじょうぶです、と口にしたつもりが音は発せられなかった。発語機能は再現されなかったらしい。夢の中の彼女は心配そうにこちらを覗き込んでいる。あまり見たことのない表情だったので、なかなかいい仕事をするじゃないか僕の脳、と悦に浸りながら差し出された手を再び握った。
    立ち上がろうとしたが脚が全くいうことを聞かない。陸に打ち上げられた魚のようにもがく事しかできなかった。段々息も苦しくなってきた気がする。前言撤回、もっとまともに働け僕の脳。アズール先輩、焦ったような彼女の声が遠くなる。夢から醒める寸前、せめてこの手だけは離すまいと必死に力を込めた。

    「…………何をやっているんだ僕は」

    虚空に発した声はカスカスに掠れている。
    自室のベッドの横で床と頬擦りしている己の現状を把握し、あのリアルな痛みは顔面から床に落ちた時のものだったのだとシーツを握りしめたままのアズールは理解した。こんなアクロバティックな寝相を披露したのは初めて陸で眠った時以来だ。
    深いため息を吐き、起き上がろうとするも体にはうまく力が入らない。ずっと変な体勢で寝ていたからだろうか。頭に血が昇っている感じがするし、頬は熱くて手足は妙に冷えている。ドクドクと鳴る心臓の音が耳の奥で煩く響いて落ち着かない。ガチガチに固まった首や肩をそっと揉むと、伝わってくる感触はあの柔らかさとは程遠かった。
    ふ、と脳裏に夢の中の笑顔がよぎる。
    身体の真ん中あたりがギュ、と絞められる。
    耳鳴りがゴウゴウとひどい。吐き出す息は熱く、視界がくらりと揺れた。これは、これはもしかして。
    「…………噂に聞く、風邪というやつでは……?」
    掠れた声が脳内にガンガン反響する感覚に耐えきれず、人生で初めて風邪にかかったアズールは真っ赤な顔でベッドに突っ伏した。


    「アズール先輩が風邪!?」
    「わぁ、小エビちゃん声でけえ」
    「あっ、すみません」
    単純におうむ返しをしたつもりが、驚きすぎて声が大きくなってしまった。顔を歪めたフロイドに、小エビちゃんことオンボロ寮監督生は謝罪する。
    しかし、あのアズール先輩が風邪とは。体調不良とは無縁の自己管理の鬼みたいな印象があっただけに意外だ。どちらかといえば雨の中で急に踊り出したり、バスケ部で動き回ったあと汗だくのまま昼寝をしてしまうような自由奔放なフロイド先輩の方がかかりやすそうだけれど。
    「なんか今失礼なこと考えなかった?」
    「イエ、メッソウモナイデス」
    勘が鋭い。
    元々座っていた席にちらりと目をやると、心配そうな顔をしているエースとデュース、関係ないといった風にひたすら目の前の昼食を頬張っているグリムが見える。ちょっと話があるんだけどぉ、とフロイドに半強制的に離されたのだが、成る程これは確かにあまり他人に知られたくはない話だと思う。最近はかなり丸くなったとはいえ、以前は契約違反者に対しては脅し暴力当たり前な対応をしていたという3人に対し快く思っていない生徒もいるだろうし、弱っている所を狙うのは強者に対する時の弱者の知恵の一つだ。
    いつもあと2人いるはずのテーブル。その空席に視線を向けながら口を開く。
    「ジェイド先輩は、アズール先輩の看病ですか?」
    「んーん、アズールの代わりにモストロ・ラウンジの業務書類まとめてる。ちょっと出さなきゃいけない書類溜まっちゃってて、それに根詰めてたのが風邪の原因なんだけどさ」
    多分今日だけじゃ終わんないから、明日はオレ担当なんだよねぇ〜とやる気なさげに大盛りのパスタを口に入れるフロイド。
    書類仕事できるんだこのひと。『やる気になれば何でもできるのに、やる気にさせるのが一番難題なんですよねぇフロイドは』とぼやいていたアズールの言葉を監督生は思い出す。
    視線に気づいたのか、パスタを巻く手を止めて気分屋(フロイド)は言った。
    「タコちゃん頑張り屋さんだからさー。エレメンタリースクールの頃からそうなんだけど、体調崩すまで頑張るのをやめらんねえ時があってさ」
    「昔からよく風邪引いてたんですね」
    「んーん、人魚は風邪引かない」
    「えっ、そうなんですか」
    「ソウナンデス。人魚の体調不良って筋肉痛みたいなもんで、ほんと動けなくなんの。全身痛くて。でも熱が出るのは地上でだけだから、アズールは初めての熱だと思う」
    オレは地上に出たばっかの頃、雨の中で踊りまくって熱出した。マジで死ぬかと思った。と、あまり見せることのない神妙な表情でフロイドがぼやく。相当きつかったのだろう。
    手持ち無沙汰に転がしていたブロッコリーを口に含む。
    「だからさー、小エビちゃんアズールのお見舞い行ってやってよ」
    「ふぐっ」
    咽せた。
    「そんなに焦んなくてもいーじゃん」
    こちらの心情を知ってか知らずかニヤニヤしている。口の中のブロッコリーをどうにか胃に収めてから、努めて冷静を装って監督生は言った。
    「私が行ってもお力になれるとは思えませんし、第一アズール先輩が嫌がると思いますけど」
    弱ったところを他人に見せることを是としない人だと、あまり長くない付き合いだがそう認識している。喜ばれないとわかっていることを進んで行うのは憚られた。
    喉の奥の辺りがつかえたような感覚。同時に、フロイドを呼ぶ声が聞こえた。
    「フロイド・リーチ君! よかった、見つからないかと思った」
    「あ?」
    マブ達がいる席とは反対方向のこちらに向かって手を振っているのは、何度か話したことがあるポムフィオーレ寮の三年生だった。フロイドの表情から険が抜ける。
    なんか用? と近付いていき、何往復か言葉を交わした後に何かを受け取り、手を振って去っていく三年生に怠そうに軽く手を上げて戻ってきた。
    やっぱり先輩身長高いなあ、などと考えながらその姿をぼんやりと見ていた監督生に、はい、と差し出されたのは濃緑色の液体の入った小瓶。
    「…………はい?」
    「これ、イシダイせんせぇが作った風邪薬だって。だからぁ、小エビちゃんにあげる♡」
    「はい??」
    「オレ今日はバスケの気分だから部活行こうと思ってたんだよね。さっきも言ったけど、明日は書類片付けなきゃなんないから顔出せねえし。別に受けとんないのは小エビちゃんの自由だけど、どっかの誰かのとこに届くのが早いか遅いかって、それだけの話」
    普段は柔和にすら見えるオッドアイが意地悪く愉しげに弧を描く。
    「理由ができて、よかったねぇ?」
    「……アリガトウゴザイマス」
    これは絶対に勘付かれている。悔しいが、この免罪符がなければ最近気になる相手の部屋にお見舞いに行くなどという一大イベントを起こせそうにないのも事実だった。
    監督生ー、そろそろ移動するぞー、と遠慮がちに呼ぶエースの声が聞こえる。受け取った小瓶の中で、濁った液体がどろりと揺れた。


    アズール・アーシェングロットは辟易していた。
    海の中には発熱という概念がない。人魚の病気といえば専ら皮膚病だ。毒による体調不良もあるが、ある程度の免疫を獲得した後であれば全身が痺れたように痛む程度で済む。発熱だけではない。咳くしゃみ鼻水、そういったいわゆる風邪の諸症状は存在のみ書物で聞きかじっただけだった。普段であれば貴重な経験として何事も糧とするのだが、これは、流石に。
    (糧に、できるだけの気力も体力もなくなる。これが風邪というものか…)
    ニンゲンとはなんと不便な生き物なのだろうか。体温計が鳴る。また少し熱が上がった。溶けかけた水氷がどぽりと揺れる。
    体調不良時には人魚(もと)の姿には戻れない。どんな影響があるかわからないからだ。戻った途端に己の熱で全身が焼けて死ぬという可能性もゼロではない。あの冷たい海に全身を浸せたらどんなに心地いいことだろうかと考えはするが、この姿のままでは間違いなく心の臓が凍りついて死ぬ。集中力が乱されるので魔法もうまく使えない。もう二度と無茶な徹夜はすまいとアズールは固く心に誓った。こんな状態異常は一度で十分だ。
    身体が重い。目蓋が重い。自身の欲求に逆らわずに身を任せる。ふっと意識が落ちる直前、誰かが呼ぶ声を聞いた気がした。

    また夢だ。
    「大丈夫ですか? アズール先輩」
    心配そうにこちらを見る監督生さん。成る程、前回の明晰夢の続きのようだ。場所は変わってオクタヴィネル寮の自室。この場所に彼女がいる光景が、夢とはいえなんだかとても嬉しかった。
    声を出そうとしたがやはり今回もうまく出てくれない。そこは現実を反映しなくていいんだよ僕の脳。気になる相手と二人きりになれたのに言葉を発することができないなんて、無意識に人魚姫にでも自己投影していたのかもしれない。生憎泡になってやる気は一切ないが。
    ごほ、と咳き込んでから精一杯の声量を振り絞る。
    「か、んと、ごほっ」
    「声が出ないんですね。無理させてごめんなさい」
    飲めますか? と差し出されたのは愛用のコップ。重い体をなんとか起こしてコップを受け取る。なんで夢の中なのにこんなに体が重いんだ。風邪をひいているという現実をこうも丁寧に反映するなんて、僕の脳はよほど律儀なようだ。
    水は冷たくて、喉を通っていく感触が酷く心地いい。熱く燃えるような全身に染み渡っていく。
    「ありがとう、ございます」
    先程よりは声が出た。彼女はコップを受け取ると、心なしか嬉しそうに微笑む。
    「よかった、さっきよりはいいですね」
    監督生さんは水差しからコップに水を移しながら、あ、と小さく声を上げ、水仕事で少し荒れ気味の指が何かを摘んだ。
    (……ん?)
    違和感は優しい声にかき消される。
    「これ、クルーウェル先生からのお届け物です。眠っていたみたいなので、枕元にでも置いておこうかと思ったら起こしてしまって。すみません」
    依頼した薬を持ってきてくれたと彼女は言う。現実ではフロイドに渡してもらうよう依頼をしてあるから、これはやはり都合の良い夢なのだろう。なら心ゆくまで堪能するまでだ。
    「栓を、開けていただけますか」
    思っていたより弱々しい声が出たことに我ながら驚く。彼女は訝しむ素振りも拒否することもなく栓をひねり、キュポンと軽快な音を立ててそれが抜かれた瞬間表情を歪ませて唇を引き結んだ。
    「……ああ、すみません。効果は高いのですが、悪臭と風味が難点なんです、その薬」
    自分の妄想(ゆめ)を相手に何を謝っているんだと心中で自嘲しながら、見たことのない表情に申し訳なさで胸が軋む。熱に浮かされる中で自覚した気持ち。どうせ見るなら、どうせ想うなら、笑っている顔がいいなどと。
    「あ、ずーる先輩、これ、のむんですか」
    「鼻も味覚も馬鹿になってしまっていますから、問題ないですよ」
    夢の中だ、苦味もえぐみも感じないだろう。現実で飲むときはフロイドに大量の水を用意させようと思いながら小瓶を傾けてーーーー

    流石はアズール先輩、一気飲みとは度胸がすごい。自分なら何回覚悟してもあの薬は飲めそうにない。臭いから推測するに夏の暑い日にボトルで二週間熟成させた藻の浮いた沼の水みたいな味がしそうだ。クルーウェル先生はつくづく甘いだけの対応はしないなあと思っていると、
    「ゔぇっっ!?」
    先輩がえずいた。
    「だ、大丈夫ですか!?」
    気管にでも入ってしまったのだろうか。どろりとしていて飲み辛そうだしあの薬。
    咳き込む背中をなるべく優しくさする。
    「落ち着いたら、お水飲んでくださいね」
    さすり続けていると、咳は少しずつ治まってきた。安心すると同時に掌に感じる熱や意外と大きな背中を意識してしまい脈が早くなる。伝わってほしいようなほしくないような、出口のない感情を誤魔化すように水を差し出す。
    「飲めますか……?」
    無言でコップを手に取った先輩はそれを一気に飲み干した。差し戻されたそれになんとなくまた水を注ぐと、また一気に飲み干される。錠剤でも多めの水で飲めと書いてあったりするし、液体もきっとそうなのだろう。
    やっと落ち着いた様子の先輩がこちらを見る。部屋に入ってきた時より瞳に生命力が戻っているし、呼吸も穏やかだ。魔法薬ってやっぱりすごい。風味と引き換えだけど。
    前髪が汗でしっとりと額に張り付いている。それが無性に気になって、ベッドの上にあったタオルで拭こうと手を伸ばすと、手首を掴まれた。
    「あ、すみません。勝手に拭こうとして」
    「監督生さん…?」
    「はい」
    呼ばれたので返事をするも、その先が返ってこない。
    「アズール先輩?」
    「な、んで、監督生さんが僕の部屋に?」
    「クルーウェル先生に頼まれて、お薬を届けにきたんですよ」
    同じ内容を繰り返す。先輩にしては珍しいけど、さっきは寝ぼけていたのかもしれない。
    「フロイドはどうしたんです。クルーウェル先生にはフロイドに渡すよう頼んだはず……」
    あ、そういうことか。
    「フロイド先輩は、今日はバスケの気分なんだそうです」





    夢を見た。
    穏やかに子守唄を歌う彼女と、腕の中にいる小さな稚魚(こども)と、それを未来永劫守っていくのだと誓う、そんな夢を。
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    🪦村川🪦

    DONEおべみ四男中心夢になる予定の前日譚。
    ※がっつり個性あり夢主&MCがいる
    ※MCのデフォ名あり(伊吹)
    ※L20クリア済みの方向け
    ※村川本人は現在21-5あたり
    猫はただ、のんびりと暮らしていた。
    主人(あるじ)は平凡で人畜無害で心の優しい人間の女で、一人暮らしをするのだと言い出した時はどうついて行こうかと画策したものだったが、結果的に主人自ら猫を連れて行ってくれたので、のんびりとした二人暮らしをそこそこ楽しんでいた。
    主人は朝に出かけて夕と夜の間くらいに帰ってくる。留守の間は家を守っている時もあったし、気ままに散歩に出たり、主人の様子を見に行ったりもした。情報収集、縄張りの見回り、無意味に街を散策したりもした。そんな穏やかな日常は一変する。
    主人が帰って来なくなった。
    猫は待った。大人しく待っていたわけではない。探し歩いて、住処に戻って、探し歩いてはまた戻った。どこにも主人の足跡はなく、そうこうしているうちに主人の実家へと戻された。
    そこでの会話からすると、主人は留学をしたらしい。
    おかしい。主人は猫には何でも話す。その日あった出来事、自分の気持ち、今後の予定、楽しいことも辛いこともなんでもないことも何でも話す。その主人が、猫に何も言わずに留学などという一大事へと旅立つはずがない。そもそも、部屋の片付けも荷物のまとめも、猫をどこかへーーそれこ 2570

    🪦村川🪦

    DONEおべみ四男中心夢。
    ※がっつり個性あり夢主&MCがいる
    ※夢主はMCが人間界で飼ってた黒猫。正体は猫又
    ※猫を前にした四男のテンションを掴みかねている
    ※今作では次男の扱いが雑
    猫の日習作



    どこの世界でも、縄張り争いというのは等しく起こるものらしい。
    ひび割れたガラスのようなずれた音が煩わしくて、猫は不愉快げに目を細める。その態度すら気に入らなかったのか、猫を囲むように立っている黒い靄を纏った悪魔たちはまたぎいぎいと騒いだ。
    「なんだその顔は」
    「お前などが近付いていい場所では」
    「あの方々をどなただと心得るか」
    「テメーなんて引き裂いて食ってやっても」
    今は頭上にない耳をぴるぴると動かしたい気分だった。億劫そうに睥睨して、猫はあくまで穏便に済ませようと口を開く。
    「……つまり、あの屋敷に、あの七人に近付くなと、そう言いたいのだろう?」
    「そうだ」
    「物分かりがいいな」
    「その通りだ」
    不協和音が勢いを増す。どうしたものかと猫は考える。散歩から帰宅途中の突然の因縁。別にあの屋敷にもあの七人にも特に何の未練も感情もないのだ。そこに含まれていないただ一人を除いて。
    「あの七人に近付かないことはできる。ただ、あの屋敷に近付かないのは無理だ。主人(あるじ)がそこにいるからな。帰らねばならない」
    「主人だと!?」
    「どのお方に仕えたのだ!?」
    空気が一転して友好ム 3158

    🪦村川🪦

    MOURNINGレオナさん夢…10ヶ月前に書いたやつ…夢主のキャラもレオナさんのキャラもうまく掴めず挫折したやつ…リヴィエール(夢主)はちゃんとどこかで書き切りたいなあ…供養供養…
    しかし私の中の初期の監、こんな感じだったんだなあ笑
    「断る」
    事情説明後の冷たい第一声に、斜め前のジャックくんの耳がピンと伸びて毛が逆立つのがわかった。まあそりゃあそうですよね、とどこか他人事のように思う。纏めてきた荷物が地味に重い。そんなに入っていないはずなんだけど。
    薄ぼんやりした頭の中に「第一部屋がねえだろ。空いてる部屋は物置になってる。今から片付けてたら朝になっちまうぞ」というレオナ先輩の声が響いた。ねむい。今から片付けはちょっと無理そうだけど、この際物置でもいいから端っこで寝かせてくれないだろうか。というか本当に荷物が重い。目線をそちらに向ければちゃっかり乗っかっているグリムがいた。そりゃ重いわけだ。下ろそう。
    「じゃあレオナさんの部屋に泊めればいいんじゃないッスか?」
    この声はラギー先輩だな。レオナ先輩のお部屋なんて恐れ多くて眠れない。いやウソです今ならどこでも5秒で眠れる。大丈夫。ほんとこの談話室のソファー…いや贅沢は言わないのですみっこを、すみっこを貸してほしい。レオナ先輩とラギー先輩が言い合っている。グリムを下ろすにはまず床に荷物をおかないといけないんだけど怒られるかな。とばっちりは勘弁だな…。
    「レオナ、部屋に泊めて 1616

    🪦村川🪦

    MAIKINGイド監に挑戦しようと思って躓いてる書きかけ三人は「なかよし」


    立てば上品座れば紳士、歩く姿も擬態済み。お触り禁止の確信犯、咬魚の片割れジェイド・リーチ。
    立てば気紛れ座れば暴君、歩く姿は破壊神。誰が言ったか愉快犯、咬魚の片割れフロイド・リーチ。
    決して善良とは言えないNECの生徒が口を揃えて唱える言葉。
    『リーチ兄弟(あいつら)には関わるな』
    脅しに暴力なんでもござれ、証拠隠滅どんとこい。気に入られても疎まれてもどちらも末は地獄行き。厄介極まりないこの兄弟に最近捕まった運のない人間といえば、誰もが口を揃えてオンボロ寮の監督生の名を挙げる。
    弟のリーチに後ろから抱きつかれ「小エビちゃーん!」と絞めあげられているその姿。おやおやフロイド、手加減しないと監督生さんも苦しそうですよ。と口を出すものの手助けをする気配は微塵もなくにこにこと眺めているだけのリーチ兄。男子校で唯一の異性である彼女を双子が気に入っておもちゃにしていることは誰の目にも明らかだった。同情はすれど助けはしない。弱肉強食が世の常だ。それは監督生にとって数少ない味方である友人達にも適用される。一学年上で腕力も魔力も優れているリーチ兄弟にとって、彼らは紛れもなく弱者だ 634

    🪦村川🪦

    MAIKING四男とMCの話。オチを見失っている。見直してないから口調違うかも。サタンがMCに頼まれて媚薬を作る話


    期待か緊張か、或いはその両方か。
    珍しく顔を硬らせて、しかし瞳にだけはきらきらと生気を湛えながら、目の前の少女はもう一度同じ言葉を口にする。
    「サタンに、媚薬を作って欲しい」
    先程言われた言葉と一言一句違わない。脳に全く染み込まない、右耳から入って左耳から出ていくような感覚にサタンは思わず天を仰いだ。
    「ご、ごめん、こんなこと頼めるのサタンしかいなくて」
    少しだけ気分が上向く。頼られるのは悪くない。
    一番適任なのはアスモだ。何せ色欲の悪魔、気が向いたらその類の商品の監修もしているのは有名な話である。しかし、彼に頼んだら最後、使用用途から対象から事細かに訊かれるに決まっているし、なんだかんだと丸め込まれて自分に盛られた上にどうにかされてしまう可能性も十二分にあり得る。ーーそこまで考えて、過ぎってしまう想像。まさか相手はアスモなのでは? だからアスモには頼めなくてこちらに来たのでは?
    口の端が歪む。
    「……相手は人間? それとも天使? 悪魔? 動物?」
    「動物ではないけど……それ、言わないとだめ?」
    「だめだ。人間相手に悪魔(おれたち)用の分量で作っ 2685

    🪦村川🪦

    MAIKING監のためにラップバトルをするジェの話。ぺとりさんへのお題作品。収集がつかねえ。始まる 拍動 怒涛


    監督生はスマホを所持していなかった。オンボロ寮にテレビなどはなく、この世界のあれこれは図書館で借りてきた本から情報を得ていた。なので最新のヒットチャートや流行りの服やトレンドなどは全く知らず、ケイトやエースから話を聞いたりたまにスマホを借りて映像を見るなどするくらいであった。
    そんな生活が、学園長からスマホを支給されたことで一変した。
    まずはケイトから是非にと勧められたマジカメの登録。次いで学園生活で縁ができた人物をフォロー。大まかな使い方を教わり、数件の投稿や検索なんかも少しだけ自分でできるようになってきた頃、その衝撃的な出会いは訪れた。

    「エース! デュース! ヒプノシスロッドって知ってる!?」

    会うなり顔を紅潮させてスマホを突き出してきた監督生に、顔を見合わせてマブの二人はそれぞれ口を開く。
    「そりゃー知ってるに決まってるっしょ、今一番勢いあるグループだもん」
    「僕はあまり音楽は聞かないが、名前はよく聞くな。母さんが好きだと言ってたのは確か…Snディビジョン? とかなんとか」
    「何枚かMD(ミュージックディスク)持ってるけど、貸してやろうか?」
    「本当 1764

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    そんな生活が、学園長からスマホを支給されたことで一変した。
    まずはケイトから是非にと勧められたマジカメの登録。次いで学園生活で縁ができた人物をフォロー。大まかな使い方を教わり、数件の投稿や検索なんかも少しだけ自分でできるようになってきた頃、その衝撃的な出会いは訪れた。

    「エース! デュース! ヒプノシスロッドって知ってる!?」

    会うなり顔を紅潮させてスマホを突き出してきた監督生に、顔を見合わせてマブの二人はそれぞれ口を開く。
    「そりゃー知ってるに決まってるっしょ、今一番勢いあるグループだもん」
    「僕はあまり音楽は聞かないが、名前はよく聞くな。母さんが好きだと言ってたのは確か…Snディビジョン? とかなんとか」
    「何枚かMD(ミュージックディスク)持ってるけど、貸してやろうか?」
    「本当 1764

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    立てば気紛れ座れば暴君、歩く姿は破壊神。誰が言ったか愉快犯、咬魚の片割れフロイド・リーチ。
    決して善良とは言えないNECの生徒が口を揃えて唱える言葉。
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    脅しに暴力なんでもござれ、証拠隠滅どんとこい。気に入られても疎まれてもどちらも末は地獄行き。厄介極まりないこの兄弟に最近捕まった運のない人間といえば、誰もが口を揃えてオンボロ寮の監督生の名を挙げる。
    弟のリーチに後ろから抱きつかれ「小エビちゃーん!」と絞めあげられているその姿。おやおやフロイド、手加減しないと監督生さんも苦しそうですよ。と口を出すものの手助けをする気配は微塵もなくにこにこと眺めているだけのリーチ兄。男子校で唯一の異性である彼女を双子が気に入っておもちゃにしていることは誰の目にも明らかだった。同情はすれど助けはしない。弱肉強食が世の常だ。それは監督生にとって数少ない味方である友人達にも適用される。一学年上で腕力も魔力も優れているリーチ兄弟にとって、彼らは紛れもなく弱者だ 634

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    MAIKINGアズ監書きかけ恋と病熱


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    どうせ夢なら自分の都合のいい展開になってくれないだろうか、と思った瞬間に、夢の中の彼女が声を発する。
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    差し出された手を握った。柔らかく温かいそれは存外強い力で僕をどこかへと引っ張っていく。どこへ向かっているかわからないまま、ひたすら足を動かした。
    周りの景色が変化する。学園の廊下、オクタヴィネル寮の入り口、温室、教室に入ってモストロ・ラウンジから出る。鏡の間を通ってグラウンドに着いた頃、ひたすら前を見つめて歩いていた彼女が振り返ってにこりと微笑んだ。
    頬が熱くなる 6387

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    猫の日習作



    どこの世界でも、縄張り争いというのは等しく起こるものらしい。
    ひび割れたガラスのようなずれた音が煩わしくて、猫は不愉快げに目を細める。その態度すら気に入らなかったのか、猫を囲むように立っている黒い靄を纏った悪魔たちはまたぎいぎいと騒いだ。
    「なんだその顔は」
    「お前などが近付いていい場所では」
    「あの方々をどなただと心得るか」
    「テメーなんて引き裂いて食ってやっても」
    今は頭上にない耳をぴるぴると動かしたい気分だった。億劫そうに睥睨して、猫はあくまで穏便に済ませようと口を開く。
    「……つまり、あの屋敷に、あの七人に近付くなと、そう言いたいのだろう?」
    「そうだ」
    「物分かりがいいな」
    「その通りだ」
    不協和音が勢いを増す。どうしたものかと猫は考える。散歩から帰宅途中の突然の因縁。別にあの屋敷にもあの七人にも特に何の未練も感情もないのだ。そこに含まれていないただ一人を除いて。
    「あの七人に近付かないことはできる。ただ、あの屋敷に近付かないのは無理だ。主人(あるじ)がそこにいるからな。帰らねばならない」
    「主人だと!?」
    「どのお方に仕えたのだ!?」
    空気が一転して友好ム 3158