妖怪パロ脹虎「そんなちっこい身体じゃアイツら全員守るのも大変だろ?将来は兄弟全員守れるくらい立派な狐になんねえとな。その次いでに、うちの田んぼの実入りが良くなるようにお前から神様にお願いしてくんない?」
その人間は罠に掛かった脹相に止めも刺さず、かと言って後ろの茂みで震える弟たちを捕まえもしなかった。一体何が可笑しいのかそんな冗談を飛ばし、脹相の前脚に深く噛みついた虎鋏に手を伸ばす、その時だった。突如ボボボッと脹相と人間の間で勢いよく炎が噴き上がる。
「うわっ、熱っちぃ!」
間一髪飛び退いた人間の前髪を真っ赤な狐火がべろりと舐める。脹相に危害を加えると思ったのだろう。茂みに隠れていた弟たちがきゅーきゅー鳴いて、人間を遠ざけようと必死に威嚇したのだ。でも、その人間はほかの奴らとはやはり何かが違ったらしい。髪がまばらに焦げても腹を立てず、脹相たちを化け狐と罵りもしなかった。
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