深夜のラブソング タクシーのカーステレオから流れるラジオ番組は夜の時間帯にしては聴取率が高いらしい。深夜特有の攻めた企画がコアなリスナーに受けて、さらには選曲センスが高いと評判を集めたという。
とはいえ、そんなプレゼンをされたところで面堂には「へえ、そうか」という感想しか浮かばなかった。災害時等の情報伝達メディアとしての役割は重々承知のうえで、かといって大衆文化の一端を担うラジオ番組を普段から面堂が聞いているわけではないので、何もかもすべて年配のタクシードライバーの受け売りだった。
妙に軽快なパーソナリティの声も、なんてことない日常の笑える話も、あまり興味をそそられない。そんな面堂の気持ちを知ってか知らずか、ドライバーが呟く。
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