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ノックもせずに部屋に足を踏み入れたルックの目の前に広がっていたのは、身動ぎもせず応接用のソファに沈み込んだ、情けない軍主の姿だった。取り柄とも言える跳ね返るほどの溌剌さも今は鳴りを潜めている。
「……何やってるの。だらしないな」
その姿に、ルックは思わず声に苦渋を滲ませた。
ルックの声が僅かに反響した執務室内は静寂に包まれており、辺りに人の気配は感じられない。目の前に寝そべるリアン以外の人物は席を外しているようだった。少なくとも、その姿からして軍師兼お目付役であるシュウがものの数分では帰って来ないことだけは察することができる。
勝手知ったるなんとやら、ルックはリアンが寝転がっていない、テーブルを挟んだ先にあるソファへと勢い良く腰掛けた。
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