煙草をもらう葬の話 先ほどから代わり映えしない風景をウルフウッドは車窓から眺めていた。
果てしなく続く砂漠には、時折崩れかけた大岩がぽつりぽつりと立つぐらいで、生物はおろか植物の気配もない。
ジャケットの内ポケットに手を差し入れて、ぺしゃんこになった煙草のパッケージを取り出した。ほとんど惰性で吸っているようなもので、煙草を吸いたいと言うよりは時間を潰すために、吸っては揉み消しを繰り返している。
買い込んでいた煙草もあっという間に底を尽きて手にしている、空色の箱も空になってしまっていた。
これが最後のひと箱だと分かっていたが、それほど焦りを感じていない。無いのなら貰えばいい。
「なぁ、おっちゃん。一本わけてや」
運転席の隣、助手席に向かってウルフウッドは手を伸ばした。今までそう言って、ウルフウッドはロベルトから何本も煙草をくすねている。
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