Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    na_metropolitan

    @na_metropolitan

    奈々

    JUMP、CLAMP、その他なんでも
    成人しています

    特記のないお話はHQ 黒夜久です
    セリフだけの短い話など

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 3

    na_metropolitan

    ☆quiet follow

    一年生の初めての合宿あたり。なかなか寝付けない黒尾さんについて。夜久さんは寝付き良さそうだと思う。

    #黒夜久

    Insomnia 消灯時間をとっくに過ぎたというのに一向に眠気が訪れず、黒尾は諦めて目を開けた。合宿の初日、日中練習で酷使した体は確実に疲労を訴えているのに、頭だけは冴えて落ち着かない。窓から差し込む月の薄白い光が縞模様のように伸びていて、それさえも眩しいと感じる。
     所狭しと並べられた布団の、右側で寝息を立てている男の顔を横目で見る。少し前までいつものテンションで喋っていたのに、電気を消した瞬間に電源が切れたように寝てしまった。薄々そっち側の人間(寝具が変わったら眠れなくなるような繊細な神経の持ち主)ではなさそうだなと思っていたが、こうも寝付きが良いと鼻でも摘んで嫌がらせの一つでもしてやりたくなる。小さくため息を吐いて、黒尾は特別行きたいわけではなかったが、手洗いに行くためにそっと布団を抜け出して部屋の外へ出て行った。
     
     30分くらい外の風に当たって、布団からはみ出した足やら手を踏まないよう忍び込むように自分の布団に戻って来ると、大きな二つの目がこちらをじっと見つめているのに気がついて、思わず大声を上げそうになるほど驚いた。
    「悪い起こした…?」
    しばし沈黙が続いたあと小声で問うと、夜久はゆっくりと横向きになって欠伸を一つしてから何度か瞬きをした。
    「何だよ、眠れねえの」
    揶揄う素振りのないいつもより低めの掠れた声が、不思議と耳に心地良かったのだ。だから、本当のことを言うつもりなどなかったのについポロッと口から出てしまった。
    「…枕が」
    「枕?」
    「2つないと落ち着かないんだよね」
    「2つ?」
    何を言われたのか分からずにポカンとした夜久の顔を見て、やっぱり言わなきゃよかったと後悔したのはもう染みついた己の性分だ。なぜかと詮索されたら、うまく説明をする心の準備が出来ていなかった。どくどくと脈打つ心臓の音を飼い慣らしながら手を握りしめる。だが、夜久はその理由には大して興味がなかったのか、徐に自分の頭の下にあった枕をぐいと引き抜いて、黒尾に押し付けた。
    「へえ。じゃあ俺の貸してやるよ」
    今度は自分がポカンとする番だった。
    「いいよ、夜久のがなくなるじゃん」
    「俺は無くても寝られる。明日に響くから早く寝ろよ、おやすみ」
     緩く弧を描いた形の良い唇は、あっという間に一文字に戻って、夜久はまた仰向けに直ってすうっと眠ってしまった。夢でも見ていたのかと思ったが、渡された枕がまだほんのりと暖かく、さっきまでのやり取りが幻ではなかったのだと思い知る。
    しばらくその横顔をぼんやりと眺めていたが、規則正しい呼吸の音を聞いていると、次第に身体が重たくなっていくのを感じて黒尾はそのままうつ伏せになった。借りた枕で頭を覆うと少しずつ意識が遠のいて、もとより泥のように疲れていた身体はそのまま眠りの波に沈んでいった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    msk11170808

    DONE画像に出来なかったのでこっちに投げましたー!
    ワードパレット「ネコヤナギ」お借りしました😊
    薄くなったアイスコーヒーの理由【黒夜久】『仕事何時に終わる?』
    ぽこんと間の抜けた通知音に慣れた手つきでスマホを操作すれば、恋人からのメッセージだった。親善試合前の合宿中のはずの夜久から連絡が来るのは珍しい。つい数時間前、練習場に顔を出した際練習中の姿を見かけたけれど、声をかけることも出来なかった。何かあっただろうか? と一瞬不安がよぎったけれど、怪我などの情報ならいち早く届くような職場にいる。そういう話は聞いていないから怪我などではないとホッと息を吐いた。
    声でも聞きたいとか? だったらいいなと思ったものの、夜久に限ってそれはないかぁと肩を竦める。とりあえず、仕事を早めに片付けて、今会社出たとこって返事を入れた。
    今日は車で来ていたので、眠気覚ましに乗り込む前にコーヒーでも買うかとふらりと駅前に向かう。目的のカフェの手前で返事をしたきりうんともすんとも言わなくなったスマホを手に信号待ちをしていたら、突然震え出した。液晶に映し出される名前は『夜久』。それを確認して、すぐに通話ボタンをタップしそうになった自分に待てをして、ゆっくり一呼吸。緩みそうになる口元に力を入れて、通話ボタンをタップした。
    2902