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    たぴおかりあん

    @tapiioka_taan

    ☀️くんに心奪われた新参者。
    ジャミカリ幸せだと嬉しい。
    みんなが幸せだと嬉しい。文字をちまちまと。

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    たぴおかりあん

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    寮服⚔️くんpsst後の捏造🐍☀️。
    ころころ変わる表情の話。
    ネタバレ注意です。6章後、付き合ってる、的な設定で書いてます。

    五十歩を以て百歩を笑う ジャミルとカリムがスカラビア寮に帰ってくる頃には、時刻はすっかり日暮れの頃を迎えていた。
     鼻歌を歌いながら歩くカリムを隣に連れて、真っ直ぐカリムの自室へ帰る。扉を開くと、開放的な窓の向こうで、残照が砂漠の色を濃くしながら、薄藍色の空との境界に燎火を並べていた。温かな色をした空とは逆に、頬を撫でる風は夜の色に近づいている。
     カリムはベッドの上にぽすんと座ると、ジャミルを見上げた。今日はもう寮から出る予定もなければ、宴の予定もない。もう、ゆったりとした格好をしても問題ないだろう、とジャミルは判断した。
     カリムの頭にそっと手を伸ばし、金の頭飾りをそっと取り上げ、ターバンを優しく解く。真珠色の髪が、夜風に誘われてさらりと揺れた。

    「シルバーのやつ、上手くできたかなあ」
    「解決の糸口が見つかったと自分で言っていたんだ。これ以上、俺たちの出る幕はないだろう」

     他寮に赴き、友人であるシルバーの悩みを解決するべく動いた二人だったが、結局目的が果たされたかは定かではない。どうやらカリムはシルバーのその後が気になるようで、今も眉を寄せてうんうん唸っている。
     ジャミルは、十分すぎるほど相談には乗ったし、よりシルバーと距離の近いだろう寮生が帰ってきたようだから、心配する必要もないだろう、と思う。
     しかし、カリムに不要な悩みだと伝えて安心させるより前に、ジャミルはカリムに言うべきことがあった。
     いつも通り、赤いインナーの上に白いカーディガンを羽織らせた後、ジャミルは難しい顔をしているカリムの両頬を摘まむ。

    「いひゃいぞじゃみう!」

     柔らかな頬をみょんみょんと伸ばしながら、ジャミルは不機嫌そうに言葉を放った。

    「今日は部活がないから、ゆっくり夕飯の支度をするつもりだったんだ。急に連れ出すから、時間がなくなっただろ」
    「ええ!ごめんあ、じゃいう~」

     カリムは大袈裟に見えるほど目を丸くした後、ぎゅっと寄せていた眉を八の字にした。瞳を潤ませているのは、罪悪感ではなく摘ままれている頬のせいである。
     本来なら、今日、ジャミルは最近入手したレシピを見ながら料理をしている予定だった。しかも、先日カリムが何気なく食べてみたい、と言った料理のレシピなのだ。せっかく材料まで用意したのに、という微かな苛立ちをカリムの頬に十分に乗せた後、指を離す。
     あう、と情けない声を出して頬を摩るカリムを見て心を満たした後に、片手を柔らかな頭に乗せた。

    「罰として、今日はお手伝いの刑だ。しっかり、スープを見守っててもらうからな」

     ジャミルの声に、カリムは赤みの残る頬のまま、ジャミルを見上げた。丸い宝石のような瞳が、一拍の後に幸せそうに細められる。困ったように刻まれていた額の皺が全て消えて、口角が上がり、顔を彩る全てのパーツが華やいだ。残照が地平線に飲み込まれて尚、その光だけは沈む気配を見せない。

    「おう!まかせてくれ。見守るのは得意だ!」

     ジャミルは満面の笑みを向けたカリムの頭から手を離した。カリムは依然としてにこにことジャミルを見上げている。

    「お前は本当に表情豊かだな」
    「そうか?オレ、ジャミルの方が表情豊かだと思うぞ?」
    「俺が?」
    「その顔とか!」

     ジャミルはカリムの言葉に思い当たる節がなかった。確かにシルバーよりは動く表情筋を持っているだろうが、こんなにも分かりやすいカリムよりも、自分の表情が感情と直結しているとは思えない。
     不服な気持ちが多少なりとも表れていたらしく、カリムに笑ったまま指摘されてしまった。
     ジャミルは一度咳払いをすると、表情に力を入れる。

    「それは、お前が突拍子もないことを言うからだ」

     いつも通り、カリムの突飛な行動を呆れながら窘めるような声色で反論すると、突然ジャミルの上体が前に倒れた。原因は不意にひかれた右腕のせい。そのまま、唇に慣れた柔らかい感触が触れた。考えるまでもなく、犯人はカリムで、触れたものはカリムの唇だ。
     一気に近づいたカリムの瞳の中に、ジャミルの顔が映る。暗がりでも分かるほど、自身の顔に赤色が差していた。
     目の前で、カリムが悪戯っ子のように笑う。

    「ほら、すぐ顔赤くなるだろ?」

     満面の笑みに、一滴苦いスパイスを垂らしたような、少年が大人を焚き付ける笑み。その笑みに煽られたわけではない。ただ、カリムの方がすぐ顔に出る分かりやすい人間なんだと、見せつけてやりたいだけだと心の中で呟き、今度はジャミルの方から距離を詰めた。
     顎を掴んで、自身の唇を押し付ける。ふに、とした感触を数秒味わって、顔を話した。ジャミルは不敵に笑って、口を開く。

    「嬉しそうな顔しやがって」
    「ジャミルだって、負けず嫌いな顔してる」

     夜の瞳と暁の瞳に、それぞれの表情が映し出される。ジャミルが見た己の表情は、想像しているよりもギラギラとしていて、強気な笑みを浮かべていた。
     自分が考えているより、自分は分かりやすいのか。しかしそれだって、表情豊かなカリムが隣にいるためであり、少なからず影響を受けてしまったせいではないのか。
     ぐるぐると思考した上で、ジャミルはふわふわとした笑みを浮かべるカリムの額を指で弾いた。

    「いたっ」
    「からかった分、しっかりお返しするからな。覚えておけよ」
    「夜のお誘いか!?」
    「その前に、夕飯の準備だ。ほら、行くぞ」

     ジャミルは踵を返して、部屋の外へ向かう。待ってくれよ、と呼び止めるカリムの声には振り向かずに、ジャミルは深くフードを被った。
     カリムより分かりやすいなんて、認めてなるものか。
     この話の続きは、自分に有利なベッドの上にまで持ち越すことにする。固く決意をして、ジャミルは駆け寄ってきたカリムの手を、逃がさぬように握った。


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