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    mrst_hori

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    mrst_hori

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    ジェイアシュSS。チアイベで、不調の🍩がよく🍗と一緒に野球観戦しているということが判明したところから妄想した捏造話

    #ジェイアシュ
    j.a.s.

    野球観戦 アッシュが風呂から上がると、ジェイがぼんやりと野球中継を眺めていた。ソファに深く腰掛けながら、どこか虚ろな目をしている。アッシュはその様子に違和感を覚えた。

    「……おい、老いぼれ。上がったぞ」
    「──あ、ああ!おかえり、アッシュ」

     ぶっきらぼうに声をかけると、ジェイはハッとしたようにこちらを見る。瞬く間にその表情が変わり、いつも通りの人好きのする笑顔を浮かべた。だがその表情の奥底にあるものを感じ取り、アッシュは眉を寄せる。
     ジェイが不調によりヒーロー活動を一時休止してから数日。ジェイは何事もないように明るい様子で振舞っている。だが、ふとした瞬間に見せる表情や仕草の端々に、隠しきれない陰りがあることにアッシュは気付いていた。そして今、こうして取り繕ったように笑っているジェイを前にして、アッシュの中には言いようのない不安が広がる。

    「…………」
    「ん? どうしたんだ、アッシュ? そんな怖い顔をして」
     黙って見つめていると、ジェイが不思議そうに見返してくる。
    「……なんでもねぇよ」
    「本当か?」

     アッシュはジェイの視線から逃れるように目を逸らすと、所在なくテレビへと視線を向ける。画面の中では選手たちが真剣勝負を繰り広げていた。

    「……ああ! わかったぞ! お前も野球中継が観たかったんだな?」
    「ハァ!? ちげぇよ!!」
    「遠慮するなって。ほら、隣に座ってくれ!」

     ジェイはアッシュの視線がテレビ画面に向く様子を見て勘違いをしたらしい。嬉しそうな顔をしながらポンポンと自分の隣のスペースを叩き始めた。

    「あぁ? なんで俺が老いぼれなんかと一緒に──」

     そういつもの調子で言いかけたところで、アッシュはふと口をつぐむ。思えば、ジェイはヒーロー活動を休止することになってからのこの数日間、日中はほとんどの時間を一人きりで過ごしているようだった。誰よりもヒーロー活動に情熱を傾けてきた男が、他のヒーローたちが職務に励む中、一人きりで部屋にいるというのはどんな気分なのだろうか。

    (……クソッ!)

     アッシュはチッと舌打ちをして、乱暴にドカッと音を立ててジェイの隣へ腰掛ける。

    「えっ!? 本当に一緒に観てくれるのか、アッシュ!?」
    「ああ!? 何驚いてやがる! テメェが誘ったんだろうが!」
    「いや、そうなんだが……。お前にはいつも誘いを断られてばかりだからな。正直、今回も断られると思ってたんだ」
    「……ふん」

     嬉しそうにニコニコと笑うジェイを見て、アッシュは小さく鼻を鳴らす。ジェイの言う通り、確かに自分は普段から何かと理由をつけてジェイの誘いを断っていた。今日だって本当は相手にしないつもりでいたのだ。
     ──それなのに、今は何故か無性にジェイのことを放っておけない気持ちになっている。今のジェイを一人にしておくべきではないと思った。ずっとこの男のことを気に食わないと思っていたはずなのに、その弱った姿を見ると何故か胸がざわつく。その理由にも薄々勘付いてはいたが、アッシュはそれを認めたくはなかった。思考を振り払うようにテレビ画面へと視線を向ける。今はとにかく目の前の試合に集中しようと思った。

    ***

    「いや〜、今日の試合は面白かったな! アッシュ!」

     試合が終わった後、満足げな顔をしながらジェイが話しかけてくる。

    「あぁん? エレメンツの実力ならもっと打てるはずだろうが。この程度の試合なんかで満足できるかよ」
    「ふふっ、そう言いながらもお前もしっかり楽しんでいただろう? 四番の選手がホームランを打った瞬間に俺と肩を組んで喜んでくれたじゃないか」
    「なっ……! あれはテメェが無理矢理──」
    「ははは、照れるなって」
    「照れてねぇ!」

     ムキになって否定すると、ジェイはまた楽しげに笑い声を上げた。その顔からは先ほど見た陰りは消え去っており、取り繕ったものではなく心からの笑顔を浮かべているように見える。その様子を見て、少しだけ胸のつかえが取れたような気がした。

    「……アッシュ。ありがとうな」
    「ああん?」

     唐突に感謝の言葉を言われ、アッシュは目を丸くする。ジェイは優しげな笑みを浮かべて、真っ直ぐにこちらを見つめていた。

    「お前のおかげで楽しい時間を過ごすことができたよ。……ここ数日は一人でいることが多かったからな。やっぱり誰かと一緒に過ごす時間はいいものだ」
    「……フン。そうかよ」
    「これからもたまにはこうやって付き合ってくれないか? アッシュと一緒だと、俺はすごく楽しいんだ」
    「……!」

     ジェイはアッシュを慈しむかのような目で見ながら微笑んでいる。ストレートな言葉に顔が熱くなるのを感じ、それを誤魔化すためにそっぽを向いた。

    「……まあ、気が向いたら考えてやらなくもねぇ」
    「本当か? 嬉しいぞ、アッシュ! 楽しみに待ってるからな!」

     ジェイは心底嬉しそうにそう言うと、アッシュの頭をわしゃわしゃと撫で回してきた。

    「なっ……!? おいやめろ、触んじゃねぇ!!」

     アッシュはジェイの手を払うと、顔を真っ赤にして怒る。だが、ジェイはそんなアッシュの様子など気にも留めず、朗らかに笑っていた。
     そんなジェイを見ながら、アッシュはぼんやりと考える。

    (もしこのまま老いぼれが復帰できなかったとしたら──)

     そのときはきっと、こんな日常もなくなってしまうのだろう。それはなんだかひどく寂しいことのように思えた。

    (チッ、くだらねぇ……)

     アッシュは自分の考えを頭の中から追い出すように首を横に振った。

     ──その後、イーストセクターのリビングでは、二人が並んで野球観戦をしている姿が度々目撃されるようになるのだった。
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