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    佳芙司(kafukafuji)

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    POIPOI 71

    アッシュ誕生日(ジェイアシュ)。多分同棲しているX年後の世界。

    #ジェイアシュ
    j.a.s.

    日付変更線上の祝歌 そろそろ日付が変わるなと思った次の瞬間に朗らか、もとい騒がしい笑顔で誕生日を祝われた日も懐かしい。だいたいにしてその笑顔が既にうるさいのだ。仕事中は一欠片も見せない油断を、スイッチがプライベートに切り替わった瞬間に駄々漏れにするのだから気付かないようにする方が苦労する。気付いてほしいとか喜んでほしいとかいつもと違う反応が見たいとかの雑多な欲求が多過ぎるのも問題だ。こんな人間だからこそこの、人好きする年増の男を皆甘やかしてきたのだろうし、またその好意を甘んじて享受してきたからこそ受けた報いもあったんだろう。
     だからもうコイツを甘やかしてやれるのは俺しかいない。これは許容ではない、惚れた弱味などでは決してない。妥協と諦観、こちらが折れてやったのだ。
     今年もきっと、老いぼれはくだらない事を考えている。


    ***


     遥か海と空の向こうの子午線が二三時五五分の時刻を割り出した。
     もう計測上の一日は幾許もない、その僅かな時間を邪魔する可能性があった野暮な瑣末事はすべて片付けてきた。遮るものはなにもない。だからきっと待ちかねていただろうこの一言、あと数分で新しい歳を重ねる彼を言祝ぐ決まり文句を。

    「ビシッと決めて締め括るつもりだったんだけどなぁ」
    「いっそ清々しい小細工だな、ええ? この程度で驚く俺と思ったか」

     前回は日付が変わる瞬間に祝ったから今度は逆に日付が変わるギリギリまでハッキリとお祝いは言わないでおこう、という計画は本日より遡る事一週間前からあたためていたサプライズだった。しかし何処から漏れたのか、或いはこちらの考えそうな事などお見通しという事なのか。あっさりと見破って悠々と待ち構えていたターゲットは、態とらしくやれやれと肩を竦めて笑った。
     照準を合わせていたのは俺の方だった筈なのに、どうにも彼の前では見せたい格好良い自分でいられない。

    「次は諦めて正面突破するんだな」
    「おっ来年も祝わせてくれるのか!」
    「ああそうだ、挽回の機会を与えてやる」

     但し二度目はない。と言外に添えている眇めた眸は一旦見なかった事にして、いやぁよかったよかったと腰に当てている彼の手を捕まえた。ぎゅっと握ってしまえば両手は拘束したも同然になるというのに案外注意不足だ。気を許されていると思えばこそばゆい。逃がす訳にはいかない。

    「その機会には全身全霊で、今すぐにでも」



    〈了〉
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    佳芙司(kafukafuji)

    REHABILI園子さんは正真正銘のお嬢様なので本人も気付いてないような細かなところで育ちの良さが出ている。というのを早い段階で見抜いていた京極さんの話。
    元ネタ【https://twitter.com/msrnkn/status/1694614503923871965】
    京園⑰

     思い当たるところはいくらでもあった。
     元気で明るくて表情豊か。という、いつかの簡潔な第一印象を踏まえて、再会した時の彼女の立ち居振る舞いを見て気付いたのはまた別の印象だった。旅館の仲居達と交わしていた挨拶や立ち話の姿からして、慣れている、という雰囲気があった。給仕を受ける事に対して必要以上の緊張がない。此方の仕事を理解して弁えた態度で饗しを受ける、一人の客として振る舞う様子。行儀よくしようとしている風でも、慣れない旅先の土地で気を遣って張り詰めている風でもない。旅慣れているのかとも考えたが、最大の根拠になったのは、食堂で海鮮料理を食べた彼女の食後の後始末だった。
     子供を含めた四人の席、否や食堂全体で見ても、彼女の使った皿は一目で分かるほど他のどれとも違っていた。大抵の場合、そのままになっているか避けられている事が多いかいしきの笹の葉で、魚の頭や鰭や骨を被ってあった。綺麗に食べ終わった状態にしてはあまりに整いすぎている。此処に座っていた彼女達が東京から泊まりに来た高校生の予約客だと分かった上で、長く仲居として勤めている年輩の女性が『今時の若い子なのに珍しいわね』と、下膳を手伝ってくれた際に呟いていたのを聞き逃す事は勿論出来なかった。
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