赤幼い頃、父上は戦場に行った。
幼い頃に見た父上の記憶は霧がかったように忘れしまった。顔も声も手を繋いだ感触も全て思い出せなかった。母上は小さい頃の思い出だから覚えていないのも仕方ないと言っていましたが、幼い私にとって寂しいものだった。
一三歳の誕生日を迎えてすぐのこと、父上の訃報を聞いた。母上は泣き崩れ一時期にはご飯も食べれなかったのだった。そのあと、父上の遺品も私たちの元に届いた。それは、錆びれ折れた父上の刀と少しひび割れた赤結晶の耳飾り。これを見ても父上を思い出すことは私には出来なかった。
母上は錆びれ折れた刀を蔵にしまい、赤結晶の耳飾りをお守りのように肩身離さず待っていた。父上の形見と一緒いたいのだと言う。そのせいか、いつも優しい母上が何かが壊れたかのように泣き出すのは日常茶飯事へと変わってしまった。
数年が経つと私も大人びて来た。父上の記憶も思い出せぬままここまできてしまったことを私はひどく悔やんだ。
なぜならその日、私の元に来たのは赤紙。母上は狂ったように泣いていた。きーん耳鳴りがする。これが現実なのか、はたまた夢なのか。目の前が歪んだような気がした。戦争はいつになったら終わるのか、私は生きて帰って来れるのだろうか。私に明日がくるのだろうか。冷や汗が全身から噴き出た。
私も父上の元へ行くことになってしまうのだろうか