幕間:誕生日 思い出すのは、去年の誕生日。
「……あづい」
私はその日、地元を宛もなくぶらぶらと歩いていた。首の裏を焼く太陽と貼り付く空気が不快だったが、引越し先はここまで酷ではないだろうと思うと、多少気が楽になった。
引越し先の学校、玉響学園への編入試験は、結果発表も含めて既に済んでいた。
結果は、無事合格。最近の学校ながら倍率のそこそこ高いのだが、願掛けに学業以外のお守りも色々と買ったのが良かったのかもしれない。
何故だかは分からないが、私は度重なる不運に見舞われる体質だ。道を歩けば転び、犬に追われ、友と遊べば迷子になり、挙句の果てに土砂降りに見舞われる。
幼少期の記憶がそんなものばかりだから、地元に愛着なんてないものかと思っていた。でも、こんな当たり前のはずの景色も、今日で見納めかと思うと、心に隙間風が吹いたような心地がした。
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