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    tamahibari369

    @tamahibari369

    二次創作のrkgkとか補足とか用

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    tamahibari369

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    忍がみんなを連れて戦場から抜け出し、先生に会いに行くまでの話
    2話忍以外の目線、ここから忍目線の話になる予定でした

    世界線2を作ろうとしたのはここが書きたかっただけと言っても過言じゃない

    #転生剣士忍の血風録

    もし世界線2を作ってたなら入れてた話⑤第三章 3


    12-1 脱獄



    「待たせた。
    仲間達には一先ず待機と伝えている。
    拠点までは敵方に割れていまいだろうし、下手に動かぬ方がいいだろう」
    「助かるよ。
    それじゃ、銀の所へ行こう」

    ヅラを待って、僕らは歩き出す。
    ってことで。

    すんません生きてました!忍です!
    ちょっとワケあって死んだフリしてました!
    いや僕が本当に死んでたらこの小説終わってっから。シリーズ名“転生剣士忍の血風録”だからね。忍さん死んじゃったらこのシリーズ終わっちゃうからね。
    JOY4には胃が痛い展開にしちゃったの本当に申し訳ないけど、幕府の目を欺きながら作戦を成功するにはこうするしかなかったの。石でも文句でも何でも投げていいけど!僕だって割と頑張ったんだから!そこは認めてほしい!


    「ところで忍、銀時の居場所は分かるのか?」

    ヅラの問いに、僕は答える。

    「んー、大体は?
    奈落の協力者に烏を使って特定してもらってるけど、場合によっては助け出すのムズいかもなぁ」

    原作の記憶を使って探し出そうとしたけど、どういう場所かまでしか分からないからね。詳しくはどこだか分からない。
    けれど恐らく、近くの町のどこかにいるはずだ。
    辰馬との会話の所か、朝右衛門と出会った所か。
    そこまで朧に伝えてあるから、烏を使って場所を特定し、見つかれば連絡くれるはずだった。

    「助け出す、とは……?」
    「捕まってる可能性もあるってこと。
    そうでないことを祈りたいけど、もしそうだったら、“逃げの小太郎”さんの力をお借りしたいな」

    拷問される前に助け出したい所だけど、間に合わなかったら、捕らえられた檻から脱獄させるしかない。
    けどその点、ここに心強すぎる助っ人、脱獄のスペシャリストがいる。
    それに先代夜右衛門がいるから、きっと大丈夫。なんとかなる!(テキトー)



    変装も兼ねてマフラーと笠で髪と顔を隠し、協力者が送ってくれた場所に向かう。
    そこは最悪の予想通り、処刑場だった。
    警備の人を峰打ちで倒し、そいつの服と鍵を奪って変装し、銀時の牢へ向かう。
    廊下の曲がり角でヅラに見張りを任せ、僕一人で銀時の元へ向かった。

    「囚人番号○○番、出ろ。
    食事の時間だ」

    壁にもたれ掛かり、生気を失ったように項垂れている銀時に胸を痛めながらも、声を変えて言いながら、牢の鍵を開ける。
    ゆっくりと顔を上げ、怠そうに、それでも銀時はのっそりと立ち上がり、歩み寄ってくる。

    「……ハッ、食事で外に出されることなんざ、今までなかったのにな。
    遂に最後の晩餐ってか」
    「(え、そうだったの!?)
    無駄口はいいからとっとと来い。
    ……って、もういいや。銀、僕だよ。忍だよ」

    肩に手を置き、表情と声をいつものに戻す。
    ……うわっ、めっちゃ痩せてる……!
    しかも顔とかアザだらけだし……
    と思った僕の向かい側、銀時も、未確認生物にでも会ったような表情してた。

    「とにかく逃げよう。ヅラも待ってる」
    「……?」

    あのー表情とリアクション抜け落ちてますよ銀時さーん。
    マジ可哀想すぎてしんどいので早く先生の元に投げつけてやりたい。
    そう思いながらも腕を引き、ヅラと合流する。

    「今のところ誰も来ていない。
    ……にしても銀時、そんな可哀想な姿になりおって……
    いつも何があっても図太く構えるお前が、どうしたというのだ」
    「ヅ、ラ……?」

    ……高杉もそうだったけど、なんというか、僕見た時呆然とするクセに、ヅラ見たらちゃんとその存在確認する感じなんなんだろ。
    これが生き返った死人を見た時の反応か。面白いな。(おい)


    銀時を引き連れ、素早く脱出に向かう!
    ……途中人がざわめく声が聞こえた気がしたけど、おっさんの声で皆遠ざかって行ったのを感じた。もしかして先代が助けてくれたのかもしれない。
    感謝しつつ、脱出し、安全圏の路地裏で息をつく。

    「ハァ、ハァ……
    これでもう、大丈夫かな……」
    「どうした銀時、心ここに非ず状態だぞ」
    「……いや、妙な夢だと思ってよ。
    ヅラと忍に引き連れられて脱獄なんざ……俺もついにイカれたか」
    「そうなると俺もマズい状態かもしれんな。
    忍と共にお前を脱獄させる夢なんて、どうかしてる」
    「ヅラそっちに乗らないで。
    夢じゃないから」

    ヅラの言葉に内心焦る。
    前話であんなに頑張って説明したのに、まだ夢だと疑ってるの!?
    ……仕方ないか。僕死んだことになってるしな。

    「じゃあなんだ、遂に迎えが来たってのか」
    「揃いも揃って同じ反応すんな。
    ほんとお前高と仲良いな」
    「は?アイツと同じ反応!?
    ハァ……最悪、Take2頼む」
    「何のTake2だよ」

    ツッコみながらも、両手で銀時の肩を掴み、その目をしっかりと見て言う。

    「もうこの際夢だと思ってもらってもいい。
    けど、僕の言うことに従って、ついてきてほしい。
    みんなで、松陽先生に会いに行こう」

    夢なら多少大人しく言うこと聞いてくれるんじゃね!?と半ば投げやりになってそう言う。
    すると銀時は、フッと笑った。

    「わーったよ。
    夢ん中だから、大人しくてめぇに付き合ってやるよ」



    12-2 集合



    こうして銀時とヅラを獲得した僕は、高杉を回収しに攘夷軍の基地に戻り、3人揃った旨を朧に伝え、用意していた宙船に乗った。
    辰馬は既に宙に出ちゃったらしいから、もうこれは諦め。陸奥に拾ってもらってることを祈るしかない。
    というか3人とも大人しすぎて逆に僕がテンション狂う。いや僕が死んだことになってんのが悪いんだけども!!


    「じゃ、3人揃ったので、全部説明しまーす!
    まず、何か質問ある人!」
    「説明すんじゃねぇのかよ!?
    なんで質疑応答から入るんだよ!?」

    完全に変なノリで始めたら、銀時が生気取り戻したツッコミしてくれた。
    魂レベルの反応だったな。これぞ銀時。

    「だって話聞くだけって眠くなるじゃん?」
    「つっても1も何も分かんねぇのに質問しろって!難易度高すぎだろ!」
    「……銀時がツッコミしてる」
    「おーい高杉くーん?寝てる?大丈夫?」

    僕と銀時のやり取りを見ていた高杉が呆然とした口調で呟く。
    こいつまだ夢の中とかだと思ってやがるな。いい加減目を覚ましてくれ。夢でもいいから。

    「はい先生質問!」
    「なんですかヅラ君!」
    「ヅラじゃない桂だ!」

    そしたら僕のノリにヅラが乗ってくれた。
    久々に聞いた“ヅラじゃない桂だ”!再会してから言ってくれなくて寂しかったんだよ?

    「この船はどこに向かってるんですか!」
    「これは先生がいる無人星に向かっています!
    今そこには先生と兄弟子と妹弟子がいるかな」
    「……先生、この時点で情報量多すぎるんですが!
    なんですか無人星って!
    妹弟子ってなんですか!?
    先生はなんでそこにいるんですか!?」

    あー、やっぱり質疑応答形式には無理があったか。
    そう思い、諦めて普通口調に戻す。

    「妹弟子は、先生が捕らえられていた監獄で、先生から教えを説いてもらっていた少女のこと。
    先生は幕府に連行されてからも、その先で学のない囚人や看守の人達に教えを説いていた。
    特に奈落出身のその子と朧は、今回の先生救出作戦を手伝ってくれた協力者なんだ」
    「……ハッ、俺の左目潰した男が、協力者だってのか」

    高杉の言葉に、僕は顔を顰める。
    やっぱりその左目は朧がやったのか……
    暗殺組織出身の人を完全に信用するのはまだ早かったか。でも朧って超素直な人だしな……

    「無人星ってのは、D○SH島みたいな感じの星ってこと。
    地球から遠すぎず、近くもない。
    そしてその場所をしるのは、この作戦の協力者のみ。幕府も誰も見つけていない、そんな星」
    「何故先生はそんな所にいるのだ?」
    「とある理由があって、先生を地球から引き離すべきだと考えたから」
    「とある理由……?」

    ……本音言っていい?
    今すぐ銀魂全巻持ってきたい。いやさらば真選組篇からでいいや。
    説明するの面倒臭すぎる。

    「……まずは、先生の正体の話をしよう」
    「なんか話がどんどん複雑になってくんだけど」

    さて、残り6000字でどこまで説明できるでしょうか。



    12-3 正体



    「まず、松陽先生は、アルタナから生まれた不死者」
    「……アルタナ?不死者?」
    「アルタナとは、地球の奥底に眠るエネルギーみたいなもの。まぁこれは置いといて。
    つまり先生は、永遠に歳取らない、怪我しても瞬時に回復する、つまり“死ねない”体質の人。
    僕らと出会った時点で、既に数百年の時を生きている」
    「……話の内容がファンタジーすぎて頭に入ってこないんですが先生」

    ヅラの言葉に激しく同意する。
    この魔法もクソもない現代世界に急に不死者とか出てきても混乱するよな。
    そんな君らに言いたいけど、この時代に宇宙人って本当は有り得ないことなんだよ。今乗ってる宇宙船ってのも、本来はこの先200年後でも存在しないからね?

    「ただ、この不死者というのには条件がある。
    それは地球のアルタナを喰らい続けるかぎり、つまり先生は、地球にいる限り、永遠に死ねないということ」
    「地球にいると自然にその“アルタナ”っつーエネルギーを食らっちまうからってことか」
    「そ、銀、その通り。
    そして僕は、先生を“救う”ために、先生を地球から引き離すことを決めた。
    救うと言っても、言い方を変えれば、先生を“殺す”ために、だけど」
    「……何故だ?
    不死は誰もが望むモンじゃねェのか」

    高杉の言葉に、彼らがまだ若いことを実感する。原作高杉は永遠の生なんて望んでなさそうだったよな。

    「……先生はその不可思議な体質のせいで、人間たちから虐められてきた。
    酷い拷問、仕打ち、何をされても、死ぬ事ができなかった。
    そんな先生を気味悪がって、人間達は彼を“鬼”と呼び、忌み嫌ってきた」
    「鬼……」

    呟いた銀時に、高杉とヅラも視線を向ける。
    意味ありげな彼の視線の先に重なったのは、幼い頃の自分、松陽先生と出会う前の彼自身だろう。

    「そんな彼は、ある日、人間達に仕返ししようと動き始める。
    ……いや、仕返しなんて思ってなかったのかな。
    自分がやられたことを同じように人間達にやって、それが“生きる”ことだと錯覚していたのかもしれない。
    そうして殺人を繰り返した先、彼は幕府に捕らえられる。
    けれど幕府は彼に“役割”を与えた。
    幕府に背く者を暗殺する役割……
    彼を筆頭に作られた幕府直属の暗殺組織は、後に“奈落”と呼ばれるようになる」
    「……!?
    先生は“奈落”の長だったのか!?」

    驚く3人。
    その中で、ヅラがハッと閃く。

    「……そうか。
    朧と繋がりがあったのは……」
    「そう。
    朧と先生は、奈落にいる時に会ったんだ」
    「そんな暗殺組織の長が、なんであんな辺境の地で、寺子屋なんて開いてたんだよ」

    銀時の問いに、僕は答える。

    「先生は、人間達からの酷い仕打ちの中で、自分の心を護る為に、耐えるために、沢山の人格を生んだ。
    先生は、多重人格なんだ。
    ……いや、多重人格の中の一つが“吉田松陽”だった、そう言った方が正しいかな」
    「多重人格……」
    「そう。
    殺人を繰り返す自分に抗いたくて生んだ人格、それが“吉田松陽”。
    だから彼は奈落を抜け、朧と共に、一本の松の下で塾を作った。それが“松下村塾”ってわけだ」
    「松下村塾はそうやって作られたのか……」

    自分達が出会った塾の誕生話に、皆感心する。
    朧と前会った時はあまり掘り下げられなかったからね。

    「けれど奈落の追手に追われ、朧は自分を犠牲に先生を護った。
    だから、朧は奈落に戻った。
    一人残された先生が出会ったのが、銀時、お前だった。そういうことになるのかな」

    先生が朧と別れてから銀時と会うまで、どれくらいの期間があったか、何かあったか、それは分からない。
    けれど、屍の中にいる銀時を見つけ、自分と重ねたのは確かだろう。

    「……先生は、銀に、僕ら弟子に倒してもらうことを願っていた。
    永遠の生を終えたいと、死んでも死ねないその生を、終わらせたかったんだろう」
    「……だから、首を斬っても死ななかったということか」
    「いや、銀、お前が斬ったのは先生じゃないよ」
    「……!?
    どういうことだ!?」

    驚く3人に、話す。
    ここから、僕の“作戦”の話だ。



    12-4 作戦



    「先生に死を与えると、別の人格が出てくることを、僕は知っていた。
    それは最強最悪の人格。世界を滅ぼしうる可能性もある。
    先生がそれに抗おうとしていたこともしっていた。だから僕は、この作戦を決行した」
    「どういうことだ?
    なぜお前はそれを知っているんだ?」
    「……それについてはちょっと置いといていい?」

    そこ僕の正体の話をするとちょっと話が逸れちゃうから、ヅラの質問を一旦流して、僕は説明を続ける。

    「先生を斬るわけにはいかない。
    先生を先生のままで、吉田松陽のままで、死なせたかった。
    人に愛されたことのなかった彼を、人に愛された人格のまま終わらせたかった。そのために僕は、この作戦を立て、決行した。
    誰にも話さなかったのは、先生を“救う”の意味がみんなと真逆だったからってのが一つ。
    もう一つは、この作戦のために、どうしても兄弟子と天人側の協力が必要だったから」
    「……なるほどな。
    地球から離す為に、天人の技術……この宇宙船が必要だったというわけか」
    「そう。
    今まで戦ってきた相手を味方にってのが納得されなさそうだなって思って、言えなかった。
    ただ、幕府の裏切りを話せば、誰かしら先生一人救い出すくらいの協力ならしてくれそうだと思ってさ。
    ……そんな時に出会ったのが、馬董だった」
    「……!」

    ここで一旦、馬董の説明を挟む。
    彼には本当に色々してもらっちゃったんだよね。
    ……辰馬にも聞いてほしかったな、この説明。

    「馬董は、種族の本来の特性を覚醒させようと両眼を縫い付け、今や額の眼を鍛えて、人の考えてることも視えるという。
    僕はそれを利用して、僕の本来の目的を彼に“見て”もらった。
    そして、死体の偽装やらなんやら協力してもらったってわけさ」


    『言い遺すことはあるか?』
    『ありがとう』

    その言葉を最後に、馬董はビームサーベルを振り下ろした。
    けれど、それは、僕の服と皮のみを斬り裂いた。

    『……やはり、今殺すのは惜しいな。
    全てが終わった後に、容赦なくその首を跳ね飛ばしてやるとしよう。
    お前が殺そう救おうとしている奴は、間違いなく宇宙最強の剣士なのだろう?
    それと戦り合わせてくれるというのなら、そのための場所作りを協力してやらんこともない』
    『話が早くて助かるよ』

    それを最後に、僕は攘夷軍から姿を消した。


    「その後僕は、朧との接触を計った。
    先生を救い出すために、先輩の協力は必要不可欠だったからね。
    ありがたいことに後輩も協力してくれたし」
    「そこで兄弟子が出てくるのか」
    「うん。
    処刑の日取りを教えてもらって、当日朧が牢から先生を出し連れ出す道中に一悶着を起こし、他の奈落の奴らがそっちに気を取られている間に、先生と瓜二つに仕立てた影武者と入れ替えた」

    あれは作戦の中で一番ハラハラしたな……
    指定された日時、場所で、信女が起こした爆撃の中から、爆煙に紛れて先生を入れ替えたんだ。

    「朧は他の奈落の人や幕府の目を欺くために、そしてみんなを戦場から引き剥がすために、演技してもらってただけ。
    ……みんなにつらい思いをさせると分かっていながらも、あえてそうさせた。本当に……ごめん」

    どれだけ苦しんだんだろう。
    どれだけつらい思いをさせてしまったんだろう。
    紙面や画面で見るだけでも心が張り裂けそうなこの展開を、変えられなかった。
    それすらも作戦にしてしまった僕を、せめて許さないでいてほしい。

    「……そりゃ、敵わねーな」

    今まで大人しく聞いてた銀時が、足を放り出し、伸びをしながら言う。

    「俺達がただ目の前の敵を斬ってた裏で、てめぇがそんな作戦立てて動いてたなんてな。
    ……俺が斬った松陽が別人だったって聞いた時から、殴ってやるって決めてたのに、こりゃ殴れねーわ」
    「……殴っていいのに。
    それほどのことを僕はした」
    「何をしたってんだよ。
    お前はただ、松陽を、俺達を救おうとしただけだろーが。
    世界を滅ぼす可能性のある不死身のラスボスを救う方法思いつくだなんて、てめぇくらいにしかできねーよ。むしろもう一度“ごめん”なんて頭下げた時には思いっきり宇宙に殴り飛ばしてやるわ」

    ……謝ったら殴られるってどういうことだよ。
    謝り癖のある僕には最悪の罰ゲームだな、そう思いながら苦笑すると、高杉が口を開く。

    「しかもてめェ、作戦のために、馬董ってのに自分の命売りつけたんか。
    ……自分の命さえも作戦のための武器にするって、アホかお前は」
    「いやでも、馬董なんやかんやで僕生き逃してくれたし……」
    「そういうことを言ってんじゃねェ。
    忍、てめェはてめェの存在の重要さを、その命の重要さをもう少し自覚しろ」
    「そうだ。
    高杉も銀時も、お前の飯が食べられずしょげてたぞ」
    「「しょげてねぇ」」

    ヅラの言葉にハモった銀時と高杉が「なんでハモるんだよ」と喧嘩勃発する。
    「あ、そういえばおにぎり作ってあるんだ」と出せば、おにぎりを目視する前に消え去った。しかもちゃんと銀時があずき、高杉がツナマヨ、ヅラが梅を持ってった。瞬発力すご。

    「ほんへ、はへおはえはほほはへいほいほひっへんは」
    「あー、ほへは、へんへーひゃははら」
    「重要な情報を口に物入れたまま出すな」

    みんなに取られる前に確保しといた鮭おにぎりをかぶりつきながらヅラの質問に答えたら、高杉にツッコまれた。

    「言い直すと、何故お前はここまで色々知ってんだ?」
    「言い直すと、それは、転生者だから」
    「おいまた変なファンタジー設定出てきたぞ。
    不死者でハラいっぱいだっつーの」
    「悪かったね。でも事実なんだ、諦めろ」
    「シリーズ3話目までの登場人物が銀時以外普通の人間じゃねェってどうなってんだ」

    うん、それはほんとごめん。
    けど僕も頑張って普通の子供になろうとしてたよ?料理スキルと剣の腕はちょっとヤバかったかもしれないけど。頭脳もちょっとヤバかったかもしれないけど。君らそれに張り合えてたから。料理以外は。
    ……こいつら生まれつき天才だからな、比較対象にならない気がする。人生一回目であの戦争生き残ってるし。

    「僕は、別世界で生きていた前世の記憶を持っている。
    そこで銀魂全巻読んでてさ、だから先に何が起こるかを大体知ってたわけさ。
    まぁ、銀時あんま自分の過去語りしてくれないから、半分以上推測と考察、言うなればオタクの妄想が入ってきてるんだけど」
    「確かにな。
    将軍暗殺篇でようやく高杉が掘り下げてくれたくらいだしな」
    「……ボケのつもりで銀魂出したのに、なんで普通に君ら理解してんの。なんで未来の内容知ってんの」

    君ら今銀魂知ってたら色々とまずい歳なんだけど。
    原作軸10年後よ?まだ僕ら推定17歳よ?
    ……まぁ、今回の僕の行動で、原作軸から一気に反れることになるんだけど。

    割と覚悟を決めた暴露発言だったのに、「ふーん」程度で終わった3人に、逆に聞いてしまう。

    「……なんかリアクション薄くない?」
    「逆にてめェは俺達に何を求めてんだよ」
    「だって、元から全部知ってたとか未来知ってたとか、キモっ!てならない?」
    「自己肯定感どうなってんだ」
    「……すまん、松陽先生の正体が衝撃すぎて、お前が軽く見えてしまう」
    「まぁそりゃそうなるわな!僕所詮二次創作のオリキャラだしな!」

    原作ラスボスと並べられたら確かに霞むわ!
    これでも僕人生4回目なんだけどね!?
    ヅラの言葉に自分でも謎なショック受けてる僕に、銀時は言う。

    「今更お前がなんだろーが驚きはしねーよ。
    お前だって、望んで前世の記憶を持ったまま生まれたワケじゃねーだろ。
    望んで奉公所でこき使われて、道端に倒れてたワケじゃねーだろ」
    「……確かに」

    転生も、生まれた環境も、望んだものでも選んだものでもない。
    勝手にそうなってしまった、言うなれば運命というものなのだろう。

    「なら、俺達と何が違うってんだよ。
    俺達がしっている“尾岸忍”は、散々共に馬鹿やって戦ってきた仲間だ。てめぇが何であろうと、それが変わることは一切ねェ。
    これまでも、これからも、な」

    その言葉に、何か気持ちが軽くなった気がした。
    前世の記憶を持って生まれたことに罪悪感を感じ、この身に使命を課して生きてきた。

    そんな自分を、同じだと。
    ただ前世の記憶を持って生まれてきただけの、同じ仲間だと。
    ……みんなと同じと、思っていいんだ、と。

    「……はぁ〜〜」
    「どうした忍!?」

    無意識に、糸が切れたように、膝が折れ、崩れ落ちる。
    そんな僕に、ヅラが慌てる。

    「……いや、なんか、力が抜けちゃって」

    ……こんなことは初めてだ。
    自分でもわけがわからず、それでも弱々しく笑うと、銀時が優しく言う。

    「まぁ、これだけでけェ作戦やってたんだ。
    疲れてて当然だろ」

    一方、高杉は歩み寄ってきた。

    「だが、作戦はまだ終ェじゃねェだろ。
    俺達を先生の元に案内するまで、しっかりしてもらわねェと困るぜ、忍」

    そう言って差し出してもらった手を取り、立ち上がる。

    「……そうだね」

    まだ、作戦は終わりじゃない。
    家に帰るまでが遠足、こいつらと一緒に先生の元に帰るまでが、あの日の約束だから。


    先生と銀時の約束を叶えるために。
    あと少しだけ、頑張ろう。




    12-5 ただいま



    そして、僕らの船は、先生のいる星に辿り着いた。
    先生達の仮の家としておいてある船の横に着地してもらい、扉を開くと。
    向こうの船の前で、松陽先生は待っていた。



    「銀時、晋助、小太郎」

    凛とした、優しい声が、静かな星に響く。
    開いた扉の向こうに待っているその存在が、信じられないというように。
    それでも、それは確かな声で。
    その存在を確かめるために、高杉が先に一歩を踏み出す。
    それに続いてヅラが歩き出した。
    固まったままの銀時に目を向けると、彼は、見たことの無いような表情で呟いた。

    「……夢じゃ、ねぇのか」

    その言葉に、微笑み、背を押す。

    「夢じゃ、ないよ」

    ようやく、叶った。
    叶えることができた。

    僕に押され、駆け出した銀時は、ヅラと高杉を追い越す。
    負けじと走り出す二人、争うように走る三人は、そのまま先生に飛び込んだ。


    「先生っ……」
    「……大きくなりましたね、三人とも」

    三人をしっかりと受け止めた先生は、苦しいほどの力で抱き締められる。
    その想いを返すかのように、三人を抱きしめた。

    「……君達には、本当に危険な目に合わせてしまい、辛い思いをさせてしまった。
    忍の手を借りなければ約束を守れなかった私に、こんなことを言う資格はないと思いますが……
    それでも、言わせてくさい」



    「おかえりなさい、銀時、晋助、小太郎」


    その言葉に。
    涙ながらに、彼らは返す。


    幾年越しの、言いたかった言葉を。
    幾年分の、想いを込めて。


    「「「ただいま……っ」」」





    船を降り、歩み寄りながらも、少し離れたところで僕はその光景に涙ぐむ。

    ずっと見たかった、その光景。
    ずっと願い、叶えたかった。

    そんな夢が、今、目の前で叶っている。
    それはまるで、夢のようで。


    そんな僕の背が、誰かに押された気がした。
    振り返ると、そこにいたのは、朧と骸。

    「忍」

    呼ばれ向くと、松陽先生が僕を手招きしていた。
    先生から離れた高杉とヅラがこちらに振り向き、銀時が手を差し出している。


    夢を夢のままで終わらせまいと。
    ……これ以上の贅沢を、求めてしまっていいのか。


    いいのだろうか。
    僕も、ただの弟子になってしまっても。
    ただの、子供に戻ってしまっても。


    「おい、早く来いよ」

    呼ばれ、ようやく踏み出す。
    欲望のままに動かす足は、気づいたら地面を駆けていて。

    銀時に背を押され、僕は先生に抱きついた。



    「……ありがとう、忍。
    そして……おかえりなさい」


    懐かしいにおい。
    体温、声、頭に乗ったその掌。

    その全てが、あたたかくて。



    「……ただいまっ……!!」





    こうして、僕ら4人は。
    ようやく、松下村塾に帰ることができたんだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
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    Replies from the creator

    related works

    tamahibari369

    DOODLE今回のシリーズの核心の部分の補足というか。
    ここまで読んでくれる人おらんだろうけど置いとく。読んでくれたら嬉しい。
    今回のシリーズでテーマになっていた“救い”について私は個人的に、ただ生き延びることが“救い”ではないと考えています。
    虚だって死にたがっていたし、忍だって4回目の転生で最初から「もういいよ」って言ってたし。ただ長く生きることだけが救いじゃない、そう思ってこの結末にしました。
    逆に忍は「いつ死んでもいいや」くらいに思っていたので、最初から最後まで銀時を中心に、誰かに尽くすためだけに動いていた。だから銀ノ魂篇最後で「自分を救うために」という課題を投げつけられてかなり混乱してたんですね。

    話が逸れたけれど、あれだけ救っといてアルタナ組の命を救わなかったのは、生身の人間である忍の限界を兼ね合わせた結果と、私の中で「救い=長生き」ではないから、でした。

    松陽先生と朧は忍が生まれる前からアレだったのでどうにもできず、高杉は銀ノ魂篇で忍が宇宙サイドに行けば救えたかもしれない、けれど真選組がある・白夜叉の影再来・オリ主vs虚が見たかった・朧の行動、これら含めて考えた結果、地球側に来てもらうことになりました。
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