もし世界線2を作ってたなら入れてた話 ラスト14-1 厄介者はまとめた方がラク
終戦、開国からしばらくして、ターミナルが建設された。
今まで勝手に地球に降り立っていた宇宙船は、ターミナルを通じ入出国する必要が出てきた。
……神社を破壊してターミナルを建てられたということは、江戸が天人の支配下に置かれていることを意味する。
幕府の敵である僕らにはどうすることもできず、阿音百音さんの愚痴を聞いたり生活支援をすることしかできなかった。
まぁ奴ら今までは自由に各地に飛び込んでは爆撃落としてたから、まとめて制限・管理くれた方が安全だと思い、あえて見逃したのはあるんだけど。
「……となると、僕らどうしようか」
無人星に全員集まった時、僕は相談を持ちかけた。
そう、問題は、この星に来る手段だ。
この星の場所は関係者以外しられないように細心の注意を払っている。幕府も他の星々の人達も、この星の存在をしらない。
けれど、行先不明の船を、ターミナルから出発させてくれるだろうか。
「問題ない。
そこは俺が根回ししておこう」
そう手を挙げたのは、朧だった。
……暗殺組織だから忘れがちだけど、そうじゃん、朧、一応幕府側の人間じゃん。
朧の協力で、江戸から離れた場所だけど、幕府の目の届かない秘密の発着場が幾つか決められた。
こうして、僕とヅラと高杉は、ターミナル建設後も自由に無人星と行き来できるようになったんだ。
14-2
「よぉ〜兄ちゃん、今週も来たか!
待ってたぞぉ〜」
「待っててくれるなんて嬉しいや。
お客さん、今日は寒いから熱燗でいい?」
江戸の警察庁近くにて。
移動式屋台の中、バンダナを頭に巻き口元を布で覆った姿で大根の煮込み具合を確認していると、常連のおっちゃんが暖簾をくぐってやってきた。
なんでおでんの屋台の店主なんかやってるのかって?やってみたかったんだよ!悪いか!
「あれ、今日は部下の方も連れてきたの?」
「おう。江戸は初めてってんでな。
ようゴリラ、ここが俺の行きつけの屋台だ」
「とっつぁん俺ゴリラって名前じゃないんだけど!?近藤ですけど!?」
……そして常連のおっちゃんと言ったけど、すっげー見覚えのあるこのおっちゃん、実は警察庁長官の松平片栗粉。
しかも今日はゴリ…近藤勲も連れてきた。
歳的に計算すると、まだ真選組はできていない。真選組を設立するための手続きか何かでもしに来たのかな?
おでん屋開いて話すオビワン・松平・近藤
14-3
桂・高杉一派のターミナル襲撃
14-3 どうなってんのこの世界
先生達の活動資金確保のために配信しよう
→無人星でも開拓するか
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ねぇ見た?
JOY5の動画」
「見た見た!
タツマがまたやらかしたよねww」
「1ヵ月かけて作った家を着地失敗で壊すとかww可哀想すぎるwww」
「ノブのブチ切れ激レアだったねw」
「分かる〜
“この黒もじゃ!”って語彙力幼児になっててかわいかったww」
最近、巷に人気のチャンネルがある。
チャンネル名はJOY5。
無人星を開拓するという企画で随時動画を上げているこのチャンネルは、5人の男たちが、顔はいいのにとんでもない馬鹿やり合ってるそのギャップで、多くの人の、主に女子の人気を集めていた。
「つーかその後のギンとタカとヅラのタツマ攻撃よw」
「あれは容赦ないってwww」
「スイカ割りで隣に首並べるってww」
「タツマ生きてるかな〜大丈夫かな」
「あれ最後 音的にカメラも殴られてたよね?ヤバくない!?」
1ヶ月かけて建てた家をタツマにぶち壊され、ブチ切れたメンバーは、タツマを首だけ残して地面に埋め、隣にスイカを起き、スイカ割りを実行した。
そのスイカはこの星で彼ら自身が育てたものだ。それも以前動画で上がっていた。
しかもただのスイカ割りじゃない。ギンの提案で10回回った後のスイカ割りになった。
タツマの額に付けられたカメラが殴られ暗転したところで動画は終わっている。
「あ、新しい動画上がってる!」
「割ったスイカを食べる配信……
タツマ頭真っ赤じゃない?大丈夫??」
「てかなんでスイカに変な顔ついてんのww」
「絶対ヅラがやったなこれw」
「てかギンなんでスイカに小豆のっけてるのww」
「タカはヤクルコぶっかけてるwww
味覚どうなってんのwww」
新作の動画は、荒野を背景に設置された机の前に割ったスイカを並べ、食べようとする5人の姿。
左から、くせっ毛のノブ、長髪眼帯のヅラ、銀髪天パポニテのギン、片目包帯のタカ、サングラス黒もじゃの辰馬で並んでいる。
そんないつも通りの5分間の動画の後。
突然流れた“重大発表”に、世間はざわめく。
“オリジナル曲 制作決定!”
元々5人とも、バカやりすぎて薄まってはいれど、顔も声もかなり良い。
そんな5人の、初めての歌。
いつも通りの江戸の日常の中、世間のJOY5ファン達が一斉に変な声を上げたとかなんだとか。
14-4 幸せ
「歌ってみんのはどうじゃ!?」
その声を上げたのは、辰馬だった。
無人星開拓の動画は、思った以上の評判を受け、今や一種のブームになっているという。
一応変装と称して、それぞれにニックネームをつけその名前で呼び合い(ニックネームというかほぼ僕の呼び方なんだけど)、高杉は包帯、ヅラはキャプテンカツーラ、辰馬はサングラス、銀時はつけ毛、僕はシールでくせっ毛隠してやっている。銀時はまだ髪切ってないから耳隠れてる状態。
まぁ原作で銀時が歌舞伎町で素顔でプラついててあまり騒ぎになってなかったし、見つかってもこの星の場所は関係者以外誰も分からないから、そこまでガチガチに隠さなくても何とかなるだろと思って。時折本名言っちゃったりした時は編集で誤魔化したりして、なんとか上手くやってる。
松陽先生はこちらの動画に出していないし、僕らもオンライン授業の方には出ないようにしている。
でも、僕らの企画で作った農作物は、星にいる人達の食糧になっている。攘夷党・快援隊におすそ分けすることもある。
動画編集は攘夷党の暇な人に任せ、必要な道具は快援隊が集めてくれている。
ってかなんでイケメン4人集団に僕入ってんだ?
って思った人。
安心して、僕も思ってる。
監督に徹しようとしたら、4人と松陽先生に言われてこのメンバーに入ることになってしまった。まさかこの世界線で顔出しYouTuberデビューするとは思わなかった。
「確かに以前から“歌みた出してほしい”との要望は来ていたがな……」
「俺達の歌なんて需要あるか?」
今や僕らの活動拠点となった、松陽先生達が住んでいる小屋のちゃぶ台を囲み、会議する。
お茶を飲みながら呟いたヅラの言葉に、饅頭をかぶりつきながら同意する銀時。
確かにこの4人の歌みたは絶対に需要あると思う。声真似歌みた僕めっちゃ鬼リピしてたもん。
けど自分がやるとなると……うーーん……
するとそこに、松陽先生が割り込んできた。
「あります!ありますよ!
私は見てみたいです!」
「……先生が言うならやるか」
「そうだな」
「即決!?」
先生の言葉で高杉とヅラが折れた。
今や先生がJOY5最推し熱狂ファンになりつつある。弟子が尊いとかよく言ってる。あれ先生こんなキャラだったっけ?
「歌みた……かぁ……
……あれ、そういや、万斉くん曲作れる人だったよな」
「あァ。
それが未来かどうかしらねぇが、確かにその道の奴ではあるな」
「掛け合ってみるのも悪くはないかもしれんな」
「必要なモンあるならわしに任しとき!
なんでも集めてみせるぜよ」
「お前に任せるとたまにビックリ箱出てくるから信用できねぇんだよなぁ」
あー確かに、この前ダイナマイト持ってきてやばかったな……とかそう思っていたら。
ふと、なんだか微笑んでいる辰馬が目に止まる。
「んだよ辰馬、何ニヤけてんだよ」
同じく辰馬の顔が目に止まった銀時に先に指摘され、辰馬が表情をそのまま答えた。
「いや……なんかのう、
……戦場じゃない平和な空間で、おまんらとこうやって居れるのが、まっこと嬉しくて」
「急にどうしたんだ」
「戦争が終わって、宙に出て……
それでも、おまんらとこうして、動画撮って、バカやって。
忍もいて、おまんらの先生もいて。時々おぼにぃやのぶたすも来て。
……わしはそんな今が、どうしようもなく楽しくて、嬉しい」
一度は別れかけた。
けれど、再び集った。
バカやる毎日も死と隣り合わせだったあの日々とは違う。
ただの平和な世界で、それぞれの道を歩みながらも、こうして5人集まってバカやれることが、どれほど奇跡で尊いか。
そんな辰馬の言葉に、思わず僕まで頬が緩んでしまった。
ヅラも微笑み、高杉は顔を逸らし、銀時は「……恥ずかしいこと言いやがって」と呟く。
そんな銀時の頭を松陽先生が掴み、「素直になりなさい銀時」と前を向かせる。
「……そうです。
正直、一度は諦めていました。もうこのような日々が戻ってくることは無い、と。
……けれど、今はこうして、皆で何度も集い、共に笑い合っている。そんな日々が、私はとても愛しい」
「先生……」
「この幸せを、一分、一秒でも噛み締めていたい。
それまで、たくさんの迷惑を君達にかけてしまうことになるでしょう。
それでも……またここに、私の元に集ってくることを、約束してくれますか?」
終わりを匂わせたようなその言葉。
先生の問いに、先に口を開いたのは高杉だった。
「……約束なんざしなくとも、戻ってくるよ。
何回、何十回、何百回だって。
俺達の帰る場所は、“ここ”だから」
高杉に次いで、ヅラが口を開く。
「迷惑だなんて思っていません。
先生、貴方は昔、俺達に本当に色々なものをくれた。
だから、今度は俺達に、その恩返しをさせてくれませんか」
そう、これは、恩返しだ。
奉公所の虐待に苦しみ、行き倒れ死にかけていた僕を救ってくれた。
戦場跡で一人生きていた所から、お家から逃げ出した所から、天涯孤独の生活を送っていた所から、救い出してくれた。
それだけじゃなく、色々なことを教えてくれた。
生きるための知識、強さ。
優しい温もり。
恐らく先生に会わなければ、一人で生きてきただろう僕ら。
そんな僕らを、先生は見つけ出し、繋げ、包み込んでくれたから。
そのお礼を、子供だった僕らはできなかった。
けれど、大人になって、なんでもできるようになった。
だから、今こそ、あの時のお礼を。
「先生、あの時言いましたよね。
あなたの幸せが弟子たちの幸せであるように、僕らの幸せはあなたが幸せになることなんだって」
それは、先生を独房から救い出した時のこと。
松下村塾の弟子達を戦場に出し、沢山傷つけてしまった。
ここに残った僕ら以外は皆、命を落としてしまった。
そこに負い目を感じていた先生に、言った言葉。
「だから、いくらでもわがまま言ってください。
僕らにできることなら、なんでも頼んでください。
先生の幸せこそが、僕の、僕らの願いであり、救いであり、幸せだから」
「……だってよ、松陽」
僕に次いで、銀時が松陽先生の肩を持ち、言う。
「だから、お前ももう、隠すな。
辛いなら辛いって言え。
苦しいなら、苦しいって言え。
……死に近づいてるお前の体調を治す方法は、無ぇのかもしれねぇ。
けれど、できる限りの事はするから」
銀時から聞いていた。
初オンライン授業の後、松陽先生が血を吐いて倒れたこと。
それから、元気な時はこうしていつも通り振舞っているけど、時折床に伏すこともあるのだと。
地球に戻れば、即座に回復するだろう。
先生の苦しみがどれほどなのか、今後どれほど苦しむのか、それは僕らには想像できない。
けれど、その永遠の生を終えることが、先生の望みであるから。
僕らにできることは、先生が息絶える最後の一瞬まで、できる限りの恩返しをすることだけだ。
「……ありがとう、銀時、忍、小太郎、晋助」
僕らの言葉を受け取り、松陽先生はどこか泣きそうな顔で微笑む。
「なら……君達の言葉に甘えて、たくさん頼らせていただきますね。
本当に頼もしくなった……君達は、私の自慢の弟子です」
「そして辰馬さんも……
この子達と出会ってくれて、仲良くしてくれて、ありがとう。
これからも、この子達をよろしくお願いしますね」
「……おう!任せとき!」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そんなこんなで。
僕らは歌の方の話を進め、纏まった結果、万斉に作ってもらった曲を歌うことになった。
……ってかこれ歌みたじゃなくてオリ曲じゃね?
で、せっかく初の歌ならと、MVも作ることになって。
いつも馬鹿やってるから、たまには超真面目にやってみようとなって。
出来上がりました。
デビュー曲。
『曇天』
「……なんで!?!?」
僕が思わずそう叫んでしまった意味を知る人は、残念ながらこの世界線にはいなかった。
第三章6
15-1 無人島開拓系アイドル配信者5人組
JOY5 初オリジナル曲 『曇天』 リリース
暗いステージで汗を流しながら歌うカットの合間合間に入る、曇天の中 甲冑を被り防具を着て、刀を持って戦う5人のMV
GINのソロから始まり、2番の後の間奏にオリジナルラップが入る
[は???え、しんだ]
[やばすぎん???]
[これ本当に無人星開拓してる奴??]
[普段とのギャップえぐすぎ]
[全員イケボ&イケメンってどゆこと]
[GINの力強い歌い方好きすぎる]
[TAKAイケボすぎん???]
[ヅラのガチラップ死んだんだけど]
[ノブあんな勇ましい表情できんの?エグ]
[5人揃ったとこ鳥肌ぶわぁなった]
[もっさんがここまでイケメンだとは……]
[やばいヘビロテ確定]
[それな]
4ヶ月後 『バクチダンサー』 リリース
赤い花火や爆竹の火の中で戦いながら舞い踊るようなMV
ヅラのソロから始まり、微温湯を浴びるような際どいシーンも時々入る
[また神曲来た]
[心臓取れた]
[ありがとうございますありがとうございます]
[5人の全力で悪巧みしてそうな顔好き]
[わかる]
[わんぱく少年みたいな5人助かる]
[微温湯シーンエッッ]
[あれ絶対ローション]
[普段のだらけたアイツらどこいった??]
さらに半年後『桃源郷エイリアン』リリース
前二曲のような好戦的な笑みではなく、明るい背景で全力で楽しそうに馬鹿やりながらはしゃぐ5人のMV
開拓中の無人島を背景に撮影されている
元気な合いの手も印象的
[うわぁぁぁJOY5だぁぁ(語彙力)]
[これぞJOY5]
[かっこいい5人もいいけどやっぱ楽しそうな5人もいい]
[てかエイリアンってかなり攻めてんな]
[ノブヅラタカ英語の安定感やば]
[その後のもじゃコンビがLalalaしか歌ってなくてかわいすぎたwww]
[間奏で流れた今までの動画の総集編でなぜか涙出てきた]
[絶対この5人素でもめっちゃ仲良い(確信)]
その8ヶ月後『サクラミツツキ』リリース
前曲とはまたさらにうってかわり、落ち着いた雰囲気の曲
満月の夜に舞う桜の元、目を伏せて誰かに思いを馳せるような彼らの姿や、炎の中を誰かを必死に追いかけるような彼らの表情が世間の話題を呼んだ
[うわ、、、]
[え…………泣く…………]
[前曲とのギャップよ]
[夜桜合いすぎ……]
[桜と炎と夜とJOY5がこんなに合うとは]
[ノブの独りぼっちのカットしんど]
[もっさんの低音良い…]
[必死に追いかけてるGIN抱きしめたい]
[TAKAの泣きそうな顔にグッときた]
[ヅラ……お前普段もっとふざけてるだろ……!]
[本当に探し続けてる人がいるのかな……]
[最後5人集まった所で毎回視界が滲む……あれ……?]
[JOY5はこうやってできたのか(幻覚)]
2年かけて彼らがリリースした曲は、CD化され、記録的な売り上げとなった。
「ってかもうこれアイドルだよね?」
「確かに」
動画配信者グループだったJOY5は、次第にアイドル系YooTuberとなって、その名を広めていったとか。
「これで更に新しい宇宙船や先生達の生活に投資できるな」
「本当に星丸ごと開拓しちゃうかもね」
「生活が潤うごとにこのクソ天パが怠けてくのが気に食わねェがな」
「うるせー!
てめーらがいねー時に畑や家の管理してんの誰だと思ってんだ。いいから黙って甘味とジャンプを俺に調達しろ」
「態度が悪いですよ、銀時(げんこつ)」
「痛っっ……
……あれ、埋まって……ない?」
「先生……」
「皆頑張ってるのは一緒です。
それぞれが自分の出来ることを探し、精一杯取り組んでいる。そうして互いに力を合わせ、生きている。
私はそんな君達の姿をこの目で見ることができて、幸せなのです。
だから……どうか、そんな表情はしないでください」
銀時に食らわせた松陽のげんこつの威力が、確かに弱まっている。
地面に埋まってないだけで心配される松陽に辰馬はツッコミを入れたくなったが、それでも松陽が弱まっているのは事実だった。
辰馬は、内心恐れていることがある。
松陽の事ももちろん心配ではある。しかしそれは元から決まっていたことで、彼自身の望みでもあるため、思うところはあってもそれを受け入れてはいる。
問題は、JOY5の活動のこと。
辰馬は、この5人での活動を心から楽しんでいた。
快援隊の仕事の合間合間を縫って彼らに会いに行くのが、共に馬鹿やったり力を合わせて何かを創ったりすることが、今や彼の毎日の楽しみで、生きがいになっていた。
――戦場ではないこの平和な場所で、こうやっておまんらと共にあれる日々が続くとは、正直思っとらんかったよ、わしは。
そんな奇跡が何よりも嬉しくて。
そして何よりも、幸せだった。
だからこそ、思ってしまう。
松陽亡き後も、この関係が続いてくれるのか。
今、彼らは全て、松陽の為に動いている。
無人星開拓も、歌も、彼らにとっては松陽の生活のため、松陽が望むからやっているに過ぎないのかもしれない。
松陽が居なくなってしまったら、彼らはこの活動に終止符を打つかもしれない。
――そうでなければいいと。
この後もずっと、こうしておまんらと共に馬鹿やっていたいと。
そう密かに願う事を、どうか許してくれるか?
15-2 理不尽
「最近、松陽先生のオンライン授業ないねー」
「確かに。
何かあったのかな?」
江戸の街中を歩いている時、ふとすれ違った少年少女の言葉に、僕は密かに唇を噛み締める。
松陽先生の容態は次第に悪くなっていった。
特にここ最近は、その変化が急速に早まったように思える。
見るからに弱りきった表情で、それでも僕らを少しでも安心させようと微笑む先生が、瞼の裏にこびりついている。
今、ようやく、母を看取った神楽の気持ちが強く分かった。
分かっていれば、耐えられると思った。
全て知っていれば、仕方ないと、笑って看取れると思っていた。
先生の願いを叶える為だからと、軽くこの作戦を口に出してアイツらに伝えたあの日の自分を、酷く恨む。
僕でさえこんなに苦しいのに、未来のことを詳しくは知らないヅラや高杉は、もっと辛く感じているだろう。
先生のことをずっと隣で看ている銀時なんかは、想像もできない苦しみを味わっているだろう。
「先生を連れて地球に帰ろう」という案が出たこともあった。
僕がいくら口で虚の危険性を話したところで、彼らは想像することしかできない。
先生の苦しむ姿と世界の未来を天秤にかけ、それでも彼らが未だに世界滅亡阻止を選んでくれているのは、奇跡に近い事でもあるのかもしれない。
元より彼らにとって先生が全てで、先生が望むからと、彼らは必死に先生を回復させたい気持ちを堪え、耐えている。
この世は理不尽だ。
僕らはただ、生まれながらに運に見放されただけだというのに。
僕らを愛し育ててくれた人を、救いたい、護りたい。たったそれだけなのに。
どんなに力をつけても、どんなに知恵を振り絞っても。
親を護りたい、たったそれすらも素直にさせてくれないこの世界が、僕は心底嫌いだ。
明らかに松陽の容態が悪くなった
4人が覚悟を決めた、その時
「……このまま大人しく死ぬつもりか、松陽」
死にかけの松陽から虚出現
「それでも良いのかもしれない。
もうすぐで、“私”の長年の願いが叶う。
……だが、本当にこれで終わりでいいのか?」
松陽が、実はずっと身の内の虚を抑え込み抗っていたことを知る
「松陽、お前が抗っていたように、私も抗ってやろうじゃないか。
この世の理とやらに」
15-3 ならばせめて、共に
最後の力を使って4人を襲う虚
(Final高杉の身体で暴れたのと同じくらいの力)
船で激闘
虚がドアの位置に来た瞬間、
3人の攻撃を利用、忍が突き飛ばして外に出す!
と同時に、僕も船から出、そのままドアを閉めた。
「忍っ……!?」
「生き延びて、みんな」
最後にそう言い残し、飛び降りる。
これまでの一連の行動を、みんなの視界から自分の身体で虚を隠すように行った僕のせいで、みんなは船が中に浮き始めた瞬間、初めて虚の腹部を僕の剣が貫いていることに気づく。
「……やって、くれましたね……」
星の地面に背中から打ち付けられ、起き上がれないのか、そのままの体勢の虚の言葉に、僕は答える。
「……アイツらには、お前を斬れないし、斬らせたくなかったから」
最初から虚だったなら、倒せたかもしれない。
けれど、今日こいつは、松陽先生だったところから虚になった。
覚悟を決めていたとはいえ、僕の言葉で知っていたとはいえ、今まで共に過ごしてきた先生をそう簡単に斬れるワケないんだ。
さっきの攻防の時のアイツらの表情で、それがわかったから。
だから、僕が斬ると決めた。
僕は虚を知っている。
どんな残酷な方法でも、こいつを倒すと……倒さねばならないと、知っているから。
「なるほど。これも全て、彼らを護るためでしたか。感心しました。
しかし……」
これで終わりなのは、私だけじゃない
その言葉と共に向けられた視線。
それは、僕の腹部を貫いた剣に向けられていた。
僕が虚を刺した時。
虚もまた、僕を刺していた。
指摘され、思い出したように内側から生暖かい何かがせり上がり、咳き込むと同時に赤い液体が口から溢れ出てくる。
劈くような痛みに、膝の力が抜ける。
「……それでも、いいさ……」
左手で患部を抑え、倒れ込もうとした体重を支えるように地面に手をつけば、口から血が滴り落ちる。
傷口が酷い熱を持つ。とてつもない量の血が溢れ出てる。
息をすることも、苦しい。
それでも僕は、身体を引き摺り、虚に寄り添うように、その顔を覗き込んだ。
「……人に、愛されることのなかった……あなたが、人に愛されたまま、その生を……終えることが、あなたの、救いだと……そう、思ってた。
けれど……虚、お前の望みは……違ったんだね」
そのまま、手を、地面を握りしめる。
「……ごめん……
僕じゃ……お前を、救えなかった」
「けれど……僕じゃ、ダメかな」
「これで……僕もお前も、永遠の生を……終わりにてきる。
……僕は、お前をもう、独りにしない」
「共に心中しよう、虚……そして先生」
そこに馬董が来る
「こんな時に……!」
「良い表情だ、と言いたいところだが、その前に絶好の獲物がいるではないか」
馬董、虚と戦う
叫ぼうとしたけれど、腹に力が入らない。
声が出ない。
ただ口をはくはくと動かすことしかできない中、視界がぼやけ、霞んでいく。
ダメだ……
やめろ、それだけは……!
その時、誰かに抱えられた。
その誰かを確認する前に、身体が大きく動かされた衝撃で、僕の世界は暗転した。
第三章 7
16-1 馬鹿野郎
「忍、忍っっ!!!」
船が陸から離れてもなお、飛び降りようとする銀時を、桂が全力で抑える。
高杉が扉に飛びつき開こうと試みるが、動き出したら自然とロックされる設定の扉は、テコでも動かなかった。
「あいつ……」
彼らは気づいていた。
忍が虚に剣を刺したことも。
虚の剣が忍の腹部を貫いていたことも。
つい昨日まで優しく微笑んでくれた先生と戦う苦しみ。
止めるべき脅威だと分かっていても、どこか信じたくない、そして斬りたくない自分がいた。
そんな自分達の気持ちを察した忍が、自分達の代わりに全てを請け負い、虚を殺すことを決めたのも。
転生者だから、本来この世界にいなかった存在である自分の犠牲はカウントされないと、だからこそ一人で全て請け負ったことも。
それでも。
転生者とはいえ、本来ここにいなかった存在とはいえ。
自分達は、何度も彼に護られ、救われた。
昨日までの幸せは、紛れもなく彼が作ってくれたもので。
今の銀時達には、忍の居ない世界など考えられない。
共にいるのが当たり前で、明日も一緒に馬鹿やってると無意識下で信じてて。
喪いたくなかった。
ずっと共に居たかった。
「……クソっっっ!!!」
床に拳を強く打ち付けた銀時に共鳴するよう、桂と高杉も歯茎から血が出るほど奥歯を噛み締めた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
向かい合う虚と馬董を残し、一隻の船が離陸する。
「行き先は指定した通りだ。
時は一刻を争う。頼んだぞ」
「はっ」
金で雇った馬董の部下に船の操縦を任せた男――朧は、抱えてきた忍をそっと寝台に寝かせ、応急処置に取り掛かる。
一瞬自分の血を分けようとも考えたが、それは危険だと思い、踏みとどまりながら、止血を試みる。
意識を失いながらも、痛みで眉をひそめたままの忍は、残してきた未練を酷く悔いているようで。
「……すまない、忍。
これがお前の望みではないと、分かっているが……」
自分を犠牲に、なんとか虚を引き止めようとした。
朧が“余計なこと”をしなければ、虚は、先生は、確実にあの場で死んでいたかもしれない……一人の弟弟子の命を道連れに。
それでも。
彼自身が、それを求めていたとしても。
「お前を死なせたくない……
そんな俺達の我儘を、赦してくれ」
彼を喪いたくない人は、確かに居るから。
兄弟子も、相弟子も、妹弟子も。
師と同じくらい、彼に感謝し、共に生きたいと思っていることを、きっと彼自身だけが気づいていない。
忍の性格や虚の可能性を考え先読みした朧は、馬董を連れ、虚の意識をそちらに向けて、忍を救出した。
それは忍を救い出すために彼が考え出した、苦肉の策だった。
16-2
銀時・桂・高杉を乗せた船は、静かに江戸の港に着いた。
船の中で互いに傷の治療はすれど、始終無言だった彼らは、着地してもしばらく誰も動かなかった。
「……これからどうする」
そんな沈黙を先に破ったのは、桂だった。
「……忍は最初から、どの道こうなる運命だということが分かっていたのかもしれん」
「だがよォ……あいつを犠牲に掴んだ幸せなんざ、俺ァ幸せとは呼べないね」
「どう足掻いても、俺達には、全員幸せになる未来は存在しなかったのかもしれんな」
「銀時、高杉、俺はこの国を変える。
元を辿れば寛政の大獄、幕府が先生を連行したのが始まりだ。
……俺はこの腐った国を建て替える」
「そうかィ。
ヅラ、てめェとはやっぱり気が合わねェなァ……
俺はこの腐った世界を壊す」
亀裂が走り、それぞれ動き出すことを決める桂と高杉
どちらの野望が先に叶うか、互いの道に互いが現れたなら斬ると
「銀時、お前はどうする」
黙ってる銀時に問う桂
「……どうもしねぇさ。
友一人、師一人さえ救えなかったってのに、できることなんざねェよ」
そう言い残して去る
馬董と虚の決着
16-3 解散
荒野に訪れる辰馬と桂の会話
JOY5解散
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
高杉と鬼兵隊
また子達は高杉についてくって話
16-4 抗い
最速で江戸港に着いた朧は、すぐさま忍の治療の為、忍の家の方へ向かう。
腹部に刺さった剣を抜き、圧迫止血を行ったが、息が弱まりつつある。
時間が無い。
そう思い、早々に一歩踏み出した、その時。
カァ
烏の声が聞こえた。
その一声で全て察した朧は、咄嗟に忍を床に“落とす”。
すると港に止まっていた別の船から、幾人の奈落の仲間と、一人の男が降りてきた。
「いつの間に姿を消していたと思ったら……
何をしていたのかね、朧」
「……定々公」
奈落に囲まれ降りてきたのは、元征夷大将軍、徳川定々。
立場としては護るべき存在、しかし松下村塾の弟子達にとっては、仇である存在だ。
焦る気持ちを抑え、朧は悠然とした態度を取り繕う。
「反逆の民を見つけた故、始末しました」
「ほう、反逆の民と」
「我々天導衆の行いを嗅ぎつけたようで。
特徴から見て、戦争時死んだと思われていた“人狼”で間違いないかと」
「なるほど、伝説の攘夷志士が、我らの寝首をかこうと息を潜めておったとでも?」
「はい。
この通り、完全に始末した故、問題無いかと」
その時。
忍の手が、ピクっと動いた気がした。
次の瞬間、剣を抜いて定々に飛びかかる!
それは、許せざる仇を前に、本能が彼の意識を呼び戻したと言っても過言では無い。
殺気を顕に仇に飛びかかった彼は……しかし朧の防御かつ強烈な一撃で、簡単に跳ね飛ばされてしまう。
数メートル飛ばされた忍は、コンクリートに体を強く打ち付け、再び動かなくなった。
「……随分活きのいい狼だ。
それとも朧、お前がとどめを刺し損ねたのか?」
「……とどめならたった今。
それより定々様、奴が再び起き上がらぬうちに、奴の仲間が呼び集わぬ前に、この場を避難された方が良いかと」
朧の誘導で、定々と奈落達は、その場を後にした。
地面に転がる忍だけが、その場に残った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「……烏に呼ばれて来てみれば」
失敗したのね、忍。
その言葉は、彼女が引き連れてきた男達には聞こえなかった。
「人が倒れてるって、どこだ!?」
「早く、こっち!」
「……!アレか!」
一般人を装って、少女は黒い隊服の者達を誘導する。
黒い隊服の男達――真選組の者達は、港に血濡れで倒れている一人の男を発見する。
「一体何が……」
「救急車は来ているな!
トシ、総悟、周囲に誰か居るか捜索頼む!」
「おう」
「わかりやした」
部下達に指示を出しながら、局長の近藤は、倒れている男の脈を確認した。
――微弱だが……まだ脈はある!
その時、ふと、近藤は気づく。
血濡れたこの男と会ったのは、初めてではないと。
――俺はコイツを、しっている……?
その時、救急隊が駆けつける音が聞こえ、近藤は即座に男から目を離し気持ちを切り替えた。
「救急隊の皆さん、まだこの人は生きている!
一刻も早く病院へ……」
「分かりました!
局長さんも念の為同行願います」
「あぁ。
トシ、この場は任せた!」
救急隊によって男は担架に乗せられ、救急車に乗せられる。
その救急車に、近藤も同乗した。
――お前が誰だか、今は思い出せねぇけど……
「頑張れ……
頼む、生き延びてくれ……!」
死なせたくない。
なぜか、近藤は強くそう思った。
港に残った土方達は、テキパキと部下に指示をし状況を整えながら、少女に目を向ける。
「お嬢さんも、事情聴取に協力してくれるか?」
「……私はただ見つけただけだから、何も言えることはないけど。
それでもいいなら」
「助かる。
原田、この少女を頼む」
「うす!」
原田に連れられパトカーに乗りながら、少女――信女は最後に、コンクリートに残った血の跡を見る。
――運命とは、本当に残酷ね。
結局、どう足掻いても、師を救える道は無かったのか。
何度命を賭けても、何を賭けても、結局、松陽を救うことはできなかった。
それでも。
――あなた達は、抗い続けるのでしょうね……
第三章8
17-1
歩いてる銀時に襲いかかる攘夷浪士
「白夜叉殿とお見受けする」
「戦後、姿を消したと思えば、こんなところにひょっこり現れやがって」
「……あの戦争の生き残りはヅラと高杉がかき集めたっつってたから、とするとお前らは、途中で逃げ出した奴らか?」
「もしかすると、忍を慕ってた奴か」
「あの時、お前が戦場から姿を消さなければ、我らはまだ戦えた……
なぜ、姿を消した……!?
今までどこで何をやっていた……!?」
「自分のことは棚上げかよ」
「俺が抜けようが抜けまいが、どの道戦争は負けていたさ。
それに……あれだけ抗っても戦っても、俺は、俺達は、何も護れなかった」
「師一人、友一人護ることができなかった俺に、何ができるってんだ」
「てめぇらが何してようが倒幕企んでようがしったこっちゃねぇ。
だが……ここに住まう関係ねぇ奴らを巻き込むんだったら、ここでその息の根止めてやる」
全員倒す
滴る血
――何をやってんだ、俺は……
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
血の滴る刀を振って血を飛ばし、鞘に収め、銀時は歩き始める。
降り始めた雪は、江戸では中々に珍しいもので。
それが珍しいことなのだということを、ずっと宇宙にいた銀時はしらなかった。
ただ、宛もなく、歩く。
凍える手足、音を鳴らす空腹に、そういえば昨日から何も食べていないことを思い出す。
身体が動かなくなっていく。
足が、重りがついたように、重く引き摺られていく。
そんな彼が、あの墓場を訪れたのは。
偶然腰掛けた墓石に、一人の老婆が現れたのは。
「おい、ババア。
それ、まんじゅうだろ?
……食べていい?」
それは、運命というものなのだろうか。
17-2 名前
「スナックお……のぼせ?」
「誰が風呂で溺れ死ぬ老人だ」
「痛っ、そこまで言ってねぇだろ!?」
墓石でもらったまんじゅうの礼に、この世にはいない男と適当な約束を交わせば、老婆は付いてきなと銀時に言った。
頭や肩に盛った雪も払わず、ただ立ち上がり歩き出した銀時から、老婆は文句を言いながらも雪を払い、持っていた手袋を渡し、傘の中に入れた。
「……傘、持つよ」と自分から言った銀時に、意味ありげに微笑んだ老婆を傘の中に入れつつ、辿り着いたのは、とある2階建ての一軒家だった。
暖簾の文字を適当に呼んだ銀時に老婆がツッコみ、久々に銀時も威勢の良い返しをする。
「スナックお登勢……
お登勢、それがあたしのこの街での名前さ」
「この街での?」
お登勢の言葉に違和感を感じ、訊く銀時に、お登勢は微笑んで答える。
「この街……歌舞伎町に住む奴らはみんな、そんなもんさ。
氏も素性も隠し、全く別の顔、別の名で生きてる奴らはわんさかいる。
過去に何があろうが、氏や素性がどうであろうが、そんなもんしったこっちゃない。みんな今の自分がやりたいように馬鹿騒ぎしてるだけ、そんな街さ」
無反応ながらも、鳩に豆鉄砲を食らったような表情の銀時に、ふとお登勢は訊く。
「お前さんは、なんだい?」
え、と視線を向ける銀時に、お登勢は言う。
「今後一生、護ってくれるんだろう?
それなのに、呼ぶ名前がなくちゃ不便だろう。
お前さんは、なんて名前なんだい?」
お前さんは、この街で、“なに”として生きていきたいんだい?
お登勢の言葉の裏に、そう訊かれた気がした。
この街では、自分を飾ることも隠すことも容易だ。
……それは、銀時にとって、これ以上なく都合のいい空間で。
お登勢の問いに答えようと、ふと考える。
GIN、白夜叉……
自分には、色々な名前がある。
けれど、それはどれも、偽りの姿だ。
ならば。
ここではあえて、素の自分のままで、生きてみよう。
「坂田銀時」
名乗ると、お登勢は微笑んで言った。
「へぇ、いい名前じゃないかい」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
おとせ目線
JOY5解散の話をする客
髪を切る
17-3 万事屋銀ちゃん
銀目線
結野アナに元気もらう
働いたらどうだい
忍に言われたこと
『将来何でも屋さんとかやってそうだよね』
万事屋作る
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
銀時がスナックお登勢の二階に看板を建てかけたその日。
江戸のどこかの病院で、一人の男が目を覚ました。
「……お、目を覚ました!
先生にしらせなくては」
男の目覚めに反応したソイツがナースコールを押し、担当医が駆けつけた時。
男は、目覚めて初めて目に入った情報を、なんとなしに呟いた。
「……ゴリラがいる」
「あのー先生、知的障害患ってるかもしれないんで、ちゃんと診てもらっていいですか?」
17-4 一週間ぶりの目覚め
目を覚ますと、ぼんやりとした視界に映るのは、見知らぬ天井。
……いや、第1話ぶりに言ったけど、ガチで見知らぬ天井だな。
どこかの病院のような背景に、ゴリラと白衣の医師のおじさんが視界に映っていた。
ゴリラの方は知ってる。真選組局長の近藤勲。
なんでここにいるのかは謎なんだけど。
で、白衣の医師の方は、ツルッパゲに眼鏡の外人っぽいおっさん。……なんかこの図、どっかでよく見たぞ?
「いいですか、落ち着いて聞いてください」
と思ってたら予想通りの言葉が来た。
……予想通りすぎて逆にびびった。
「あなたが眠っている間に、ヒロアカが完結しました」
「……え」
「呪術廻戦も完結しました」
「……まじか」
え、そんなにジャンプの巨頭が次々に完結しちゃったの?ジャンプ大丈夫?
「JOY5も解散しました」
「……おう」
ほーJOY5解散しちゃったのか。へー……
……
…………
………………ん?
……………………え、待てよ?
さらっと流れで言われたから気づかなかったけど、JOY5って僕にとってはリアルな話だよな?ってか僕JOY5のメンバーだったよな??あれ???
ふと、頬に触れる。
そこには確かに、左頬の古傷の肌触りがある。
……ということは、これは「忍」の人生で間違いないはずで。
銀時達とアイドル活動をやっていたのは、紛れもない僕自身の記憶で。
「落ち着いて聞いてください。
あなたがここに連れてこられてから、一週間経ちました」
「一週……間……」
虚との戦いから7日。
一週間で、僕の世界は大きく変わっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「名前は言えますか?」
「おぎししのぶ」
「おぎししのぶさんですね。
漢字は分かりますか?」
「しっぽの尾に、海岸の岸、忍は忍者と同じ」
医師の質問に、そのまま答えていく。
通常思考の僕だったら別名を考えたりしたかもしれないけれど、1週間ぶりの目覚めで頭がまわってなかった。
どこか呆然としたまま、素直に回答していく。
「年齢は?」
「二十…四」
「誕生日は」
「七月二十九日」
「好きなジャンプ漫画は」
「……これは銀魂って答えていいやつ?」
年齢も誕生日も、本当か分からないけれど。
年齢は高杉達に合わせて先生が決めた数字だし、誕生日は僕が拾われた日。毎年その日に祝ってもらってるけど、本当の誕生日は未だにしらない。
……そういや、先生……どうなったんだっけ?
「意識を失う前のことを、覚えていますか?」
「前……」
訊かれ、思い出そうとする。
先生が危篤状態で、その時に……そうだ、虚が出てきて……
あ、そうだ。重症を負いつつも、銀時達は船に乗せて逃がしたんだ。
その後……どうなったんだっけ?
そこまで思い出し、ハッと記憶が鮮明になる。
馬董が来て、誰かに抱えられ星を後にしたこと。
地面に打ち付けられる感覚に目を覚ませば、定々がいて、斬りかかろうとした瞬間、朧にぶっ飛ばされたこと……
「……っっっ、
うぐっ、、ぐぅぅっッ……!」
「……!?
大丈夫ですか、尾岸さん!?」
思い出したように貫く腹部の痛みに、患部を握り屈む。
息ができない。視界が明暗する。
「ぅうっ、っはっ、はぁっ、」
「落ち着いてください、尾岸さん!!」
朧が裏切った?
あんなに信じてたのに……?
銀時達はどうなった?無事に逃げられたのか?
JOY5解散って?4人の間に何があった?
馬董は?虚は?どうなったんだ??
湧き上がってきた問題の数々に思考が渦巻く。
目がまわる。頭がパンクしそう。
「尾岸さんいいですか、私の声に合わせてゆっくり息を吐いて、吸って、」
「……ふっ、はぁっ、」
突然の過呼吸に自分でも混乱し、それでも医師の優しい声かけで、なんとか呼吸を取り戻す。
呼吸が落ち着いても、鼓動が早い。
変な汗が吹き出る。傷の痛みと熱が身体を支配する。
どこか息苦しい。頭がうまくまわらない。
「……その傷に関して、何かショックがあったようですね。
焦らず、ゆっくりでいいです。話せそうな時に、この警察の方にお話していただけますか?」
言われて、そういや近藤さんがいた事を思い出す。
なんでここにいるんだろう?という疑問を口に出す前に、医師が答えてくれた。
「この方は、1週間前、江戸港に倒れていたあなたを見つけたそうです。
事情聴取のため、真選組の方が交代で待機し、あなたが目覚めるのを待っていました」
頷く近藤さんを見て、この人達も一応ちゃんと仕事するんだな……とか失礼なことを思う。
それと同時に、事件に関わる人ってこんなめんどくさいことになるんだなと思った。
「……わかりました」
今のパニックで、僕がデリケートだと思われただろう。
ならばそれを利用して、どこまで話せるかの線引きをゆっくり考えていこう。
頷きながら、内心そう決めた。
「最後に一つだけ。
あなたに、連絡の取れる家族や友人はいますか?」
その言葉に、ふと、携帯を、銀時達を送り出した船に置いてきてしまったことを思い出した。
激しい戦闘で壊れている可能性もある。
そして、彼らの居場所は分からない。
親と呼べる存在の人も、もう、居ない。
「……誰も、いないです」
呟いて、現実を突きつけられる。
今の僕は、独りぼっちだと。
17-5
病院から逃げ出そうとする
それを引き止める近藤
「なぁ、忍。
お前、真選組に入ってみねーか?」
なんとなく、放っておけないと思って
内部から天導衆のあれこれを探るために同意
第三章 9
18-1 あれから1年後
1番隊隊員として活躍する忍
「忍兄さん、そっちは任せやした」
「了解」
実力を買われ沖田に信頼されてる
「一気に畳み込むぞ」
「いいか、誰一人決して殺すな。
攘夷浪士であれど、護るべき市民の一人だ。
殺してしまえば、家族や友人の恨みを買うこともある。
被害を、悲しみを、増やさないように」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
沖田くん僕のこと嫌いでしょ
たしかにドンパチやりてぇ俺には合わねぇが
兄さんの戦い方好きですぜ
総悟に頼み土方忍を連れ出す
「総悟、ここはあとはお前に任せる」
「忍、来い」
土方、特徴と強さから、忍が人狼だと気づく
「尾岸忍。
てめぇ、“人狼”だな?」
18-2
「……やっと気づいたんだ」
「俺に剣向けられてもその飄々とした態度を貫き通すとはな。
これもお見通しってワケか」
「いつかはバレると思ってたよ。
思ったよりも遅かったなって思っただけ」
「斬るなら斬ればいいさ。
ただし僕も、目的があって真選組にいる。
それを果たすまでは待ってもらいたいところだけど」
その時
「……やはり生きていたか」
「……ヅラ!?」
「狗共の中にくせっ毛で左頬に古傷のある強い奴がいるという噂を聞いた。
死んだフリして寝返ったのかと思えば……
結局の所お前は、今も昔も変わらず、ただ目の前の誰かを救う為だけに剣を振るだけだというのか」
「時に、自身の命までも、武器にして」
「だがな……
頼むから、遺された俺達の気持ちも考えてくれ」
「てめぇ、桂とも組んでやがったのか……!」
柩が襲いかかってくる
「貴様か。
近頃、我らのことを嗅ぎ回っているのは」
「……奈落三羽の一人、柩……!」
「あの人の目的の邪魔はさせぬ……!」
とりあえず加勢
高杉も登場
敵撤退
「……わかった。
全て話そう。
1年前、あれから何があったのか」
敵に聞かれる可能性もあるからと場所をうつす提案
「桂一派、高杉一派、そして真選組。
今だけは、停戦協定を結んでほしい」
18-3
説明する忍
ヅラ、高杉、近藤、土方、沖田が聞く
「……無知って恐ろしいや。
つまり俺たちは今まで、江戸を、世界を護ろうとしていた奴らをとっ捕まえようとしてたってわけですかぃ」
「近藤さんにはかなわねぇな。
アンタ、“なにか”もってるんだろうな」
「まさか忍、お前が“人狼”だとはな……」
「え、気づいてなかったんですか?
おでん屋の店主ってのも気付かれてたのかと」
「お前おでん屋の店主!?!?
あ、ああああ!!どうりで見たことある顔だと!」
「気づいてなかったんですか!?」
「今自分から明かしたよなコイツ」
「……もしかして、JOY5の活動も、実はそれ関係だったっていうんですかい?」
「……バレてたのか」
「バレバレでさァ。
姉上の推しですし」
「JOY5!?!?」
「えっ……てことは忍、実は人狼で、おでん屋の店主で、JOY5のノブ……!?」
「属性多すぎない?」
「事実だ」
虚を倒す情報を集めていた
協力すると言い出す皆
「いや、近藤さん達は残ってください」
「僕ら弟子で決着をつけたい」
「それに、僕らが居ない江戸を護っていてほしいんです。
目の前で苦しむ誰かを、一人でも多く護ってほしい。例え幕府に歯向かうことになっても」
鬼兵隊と桂一派の部下達を頼む
18-4
「強力な助っ人がいるんだ」
「その人が着くまで、僕らで時間稼ぎする必要がある」
虚VS忍・高杉・桂
朧と共に星海坊主登場
辰馬も駆けつける
「銃はわしに任せろ」
「わしも先生にはお世話になったきに」
「それに……わしの剣はとある男に預けちょる。
そいつが自分の剣を取り戻すまで……
そいつの夢が叶う、その時まで、わしは銃で戦う」
将来
「おまんが借りたものを返さないのは今更じゃき」
信女が銀時を迎えに行く
「……よぉ、こんな所に何の用だ、見廻組副長殿」
「……今日は見廻組副長として来たわけじゃない。
松下村塾の弟子として、兄弟子を呼びに来た」
「あなたの力が必要なの。
全員生きて帰るために」
「……フッ、
ヒーローは遅れて登場ってか」
「仲間はずれにすんなコノヤロー!!」
「こっちぃぃ!?」
「銀さん寂しかったんだからね!」
「虚!!!
お前は何がしたいんだ!?」
天導衆との戦い 全員参加ーいぇい
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全部終わって原作軸
万事屋できた!
ある日飲み会
万事屋にヅラ・真選組(忍・近藤・土方)・遅れて高杉が来る
「真選組来ちゃってるんですけど大丈夫ですか!?」
「あー大丈夫大丈夫、こいつらはな」
表では敵対だけどここでは普通に飲み会する仲
今まで何があったか新八達に話す
(忍の正体以外)
忍寝た
「つまりお前は全て終わって平和な時代の坂田フリーレンに会った村人Bってことだ」
「限りなくモブじゃねーか!!!」
「いずれてめーらがここに来る時、平和な世の中で迎えたいと願った奴がいるんだ」
荒れ狂う現状を見てこれのどこが平和??
けれど、敵も見方も関係なく飲むこの空間が、彼らの望んでいたものなのだろう
源内の事件おこらない
道信もおこらない
紅桜篇
終わった後忍のとこに相談しに来る高杉
「銀とヅラと絶交しちゃったんだ」
「……あァ」
「てめェも恐らく、アイツら側につくんだろうなァ」
「……そうだね。
幕府の奴らは気に入らないけど、それに一般人や無関係の人を巻き込むのは許せないかな」
「ここで俺に斬られるか?」
「……って言葉も、てめぇには脅しにならねぇよな。
どうせいつ死んでもいいって思ってんだろ」
「そうだね。
僕の夢はもう叶った。
そろそろ、この長すぎる人生に終止符を打ってゆっくりしたいよ」
「……だからてめぇは殺る気にならねぇんだ」
「最初から殺る気なかったくせに。
で、大したもんないけど、これでいい?
どうせ飲んでくだろ?」
「ヅラも、銀も」
二人も忍の家に飲みに来てた
「てめぇ正気か?」
「いいじゃん。
ここでは、面を外して、素に戻ろう。
因縁も関係性も何もかも忘れて、ただのあの日の悪ガキに戻ろう」
忍の家では仲良しになる村塾組
岡田生きてたら
岡田の対応に困る高杉とかの相談役やる
「かまってあげりゃいいんじゃない?」
稽古して、それに羨ましがった他のメンツにボコられる仁蔵
ミツバ篇参加
動乱しない篇
バラガキは普通に
傾城も普通に
高杉が定殺す
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将軍暗殺編
高杉VS銀時 の間に桂入って
「やめんかお前ら」
神楽VS神威
桂の指示で銀時助太刀
高杉と共に国を壊す提案をする桂
(忍の案)
高杉が国を壊し、桂が作り替えると
新八と共に逃げてた茂を忍が預かる
新八を神楽の元へ
忍、茂にヅラ玉飲ませ昏睡
倒れた茂を誰かが発見
伊三郎が待ち構えてて
「哀れなものですね、真選組も。
拾った仔犬が、獲物を喰い取る機会を伺っていた狼とも知らずに」
忍が犯人だと
忍、将軍暗殺の罪を被って投獄
(真選組を守るため、世間の負の目を全て自分に向けさせて)
拷問受ける忍
痛みに鈍い身体
こんなの死ぬよりはマシだ
朝右衛門が止める
伊三郎との会話
「いい加減口を割りませんか。
私としては、私の家族の恩人を死なせたくないのですがね」
「何を言われても、何も言わないさ。
全部墓まで持ってくって決めてるから」
「ならば、一つだけ。
夢はありませんか」
「夢……?」
本当はやりたかったこと
それを見つけろと
「その夢が叶わない後悔を抱えたまま死ぬ方が、良い拷問になるでしょう」
翌日まで考える忍
「決まりましたか」
「……松下村塾を再建させたい」
身寄りのない子供達を救ってあげたい
共に学びたい
それを信女を通じて聞いていた皆
忍の作戦に後で気づき悔やむ面々
「何をやってんだあの馬鹿は!!」
「俺達はあの馬鹿の自殺未遂にどんだけ付き合わされなきゃいけないんだ」
「むしろこれは、奴の自分への戒めなのだろうな」
「不幸とは幸せだと気づけないこと。
嵐の日をしる者ほど、晴れの日差しをあたたかく感じることができる。
……多くの者を救った今の世界は、やつの願い通りになりすぎたのかもしれん。
だから奴は、その後に反動で来る厄災を恐れ、いつも危険な道を選んでいたのかもしれんな」
「なら俺達で、全力で奴の予想外の動きをしてやろうじゃねぇか」
切腹を選ぶ忍(誰にも辛い思いをさせないように)
死刑執行日
「切腹よりも、友からのげんこつの方が効くでしょう」
銀時の全力げんこつ
クレーターできるけど埋まりはしない
「……ちっ、まだ松陽には及ばねぇか」
銀時と真選組が忍助けに来る
怒る銀時
「……確かに、こっちの方がよっぽど痛いや」
桂・高杉・辰馬でのぶのぶ倒す
桂総理大臣に
松下村塾で授業をする忍
万事屋に弁当運ばせ
鬼兵隊
高杉が剣術指南
また子が銃
万斉は音楽
武市が炊事
辰馬が持ってきた実験器具辰馬に浴びせて猫耳
「なんでわしにやるんじゃ」
「自分がやられて嫌なモン人に売りに来ないで」
へいわー
終わり