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    碧@狂人

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    碧@狂人

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    【現パロトレ監話 ♣️視点】(未完
    pixivに掲載されている【twst夢】電車で痴漢にあっているところから助けられて始まるトレ監。【現パロ】
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17390484
    のトレイ先輩視点の話(未完)です。↑を見てからじゃないと分からないと思います。

    ##ゆあまい

    【現パロトレ監話 ♣️視点】(未完【電車で痴漢にあっているところから助けられて始まるトレ監。】





    大きな瞳が戸惑っている。


    ホームに並ぶ列から少し外れた場所で、車内を見回すように真剣な顔で視線を巡らせている。何を探しているのかなんて、一目瞭然といった様子で。
    咄嗟に帽子の鍔を下げて、その視線から逃れた。恐らく範囲から外れたであろう頃にちらりと視線を戻せば、ぱたぱたと小走りで隣の車両まで確認しに行くような動きを見せる。
    だが駅の停車時間なんてほんの僅かなもので、発車のベルが鳴るのと共に慌てて近くのドアから電車に乗り込んだようだった。
    そちらの方に顔を向ければ、割と見渡しやすく開けている。女性が多く固まっているようで、ほっとひとつ、息を吐き出す。
    そしてドアのすぐ目の前にある、艶のある綺麗な髪を纏ったその小さな頭が、分かりやすく、項垂れるのが、見えた。

    それを目にした瞬間に顔の位置を元に戻して、もう必要はないのに帽子を改めて被り直す。その際に触れた耳が、熱い。

    ―――どうしてあんなに必死に、探しているんだ。

    困る。
    嬉しさと、動揺と、心配と、安心と。
    それ以上にどうしようもない熱と鼓動が身体中を巡って、やけに五月蝿くて堪らなくて。

    ……こんな事は、初めてで、どうすればいいのかが解らない。

    困る。困るんだ。
    そんなつもりじゃ、なかったんだ。






    梅雨明けの宣言も過ぎて真夏日だ酷暑日だという日々になってきたというのに、ホームで電車を待つ彼女は、相変わらずブレザーを着たままだった。
    『身体が弱くて』と言っていたが、それが衣替えの週を過ぎた今でも身に纏っている理由ではないだろう。むしろ、逆効果のはずだ。
    電車が到着するのを待っている顔は真っ赤になっているし、学園がある駅に着いてからは、ホームの隅でブレザーを脱いでいるのを確認している。
    回りの夏服の生徒達の中では目立つからというのもあるだろうが、逆に目立つから最寄り駅では着ているのか、とも、思ってしまう。

    この予想がただの自分の自惚れならどれ程いいか。
    いや、良くはない。自惚れだとしても、実際には良くはないのだ。
    ――どうすればいい?
    1回だけ偶然を装って、注意するべきか。
    けれどあの真っ直ぐな瞳と対峙して、これまでの様子を見て累積している何かを抱いた状態の今の俺では、ただそれだけを言って立ち去る自信が無い。
    距離感が上手く掴めるイメージが湧かなくて、困惑する。

    そんな日々を少し過ごしたとある朝。
    いつも通りブレザーを着て電車を待っていた彼女の顔色がこれまでとは違って、赤みを帯びているもののどこかおかしな、ちぐはぐな印象を受けた。
    いつも綺麗な立ち姿にも、違和感がある。
    具体的には解らないが、毎日見ている姿とは違うものを感じて、彼女が電車に乗り込んでから少し距離を詰めた。
    いつも電車に乗るとドアの方を向いているのが幸いして、気付かれる事はない。女性が集まっている中に割り込むのはさすがに憚られるので、その固まりから外れた辺りで様子を窺う。

    と、ドアに額を預けていた頭が電車の振動と共にぐらりと不自然に後ろに傾いて、頭に引っ張られるように身体ごと倒れていくような動きを見せて。
    「     っ、」
    咄嗟にちょうど隙間の空いている空間を利用して、片手を伸ばす。
    片腕でも掴めれば支えられると踏んでの行動だったが、その小さな身体が頭を中心に反動を付けてドアに頭突きでもするような変な動きをしたので、慌ててもう片方の腕も伸ばした。
    俺の身体の横幅分押し退けてしまった人達に「失礼。」と声をかけながら、両手で細い肩を掴むと全身がビクリと硬直するように大きく震えたのが、触れている場所から伝わってきた。

    ―――ああ。やってしまった。

    怖い、嫌な記憶を思い出させてしまったと瞬時に理解しつつも、彼女と周りの人達をこれ以上動揺させないように「この子の知り合いです。」と口に出せば、手の中の不自然に固まっていた緊張感が緩んで、一気にこちらへと身を任せるように力が抜ける。
    そうして倒れ込む際にこちらを見上げた瞳全体がきらりと一度輝いて、
    「くろーばー、さん  」と。
    心から安心したような声色で、そのまま目を閉じて気を失う。
    支えている肩は薄くて、か弱くて、そしてとても、軽かった。

    幸い彼女が自分の名前を呼んでくれた事で不審者扱いはされず、力の抜けた身体を抱き寄せて支えながら周囲の人の「大丈夫ですか」といった言葉に応えていく。下手に緊急停止ボタンを押すよりも、次の駅に着いてからの方が移動がし易いであろう事や、足元に落ちていた鞄の外ポケットにスマホが入っている事に気付いて緊急時の操作のボタンを押せば、連絡先として入力されていたのであろうとある病院へと繋がり、降車駅の名前を伝えると救急車の手配もしてくれた。同時に『母』と表示された連絡先にも電話がかかったが、そちらの方は繋がる事なく、また留守電にもならなかったので、とりあえず車内にいるうちは再度かけ直す事はしなかった。
    彼女を抱きかかえたまま次の駅のホームへと降りると既に救急隊員の人達が担架を用意して待っていてくれたので、後はプロに任せれば安心だろうとほっとしたが、付き添いと同行を求められて一瞬戸惑う。
    家族でもない自分でいいのだろうかという戸惑いと、必然、彼女の傍に居続ける必要があるという戸惑いだ。
    結局、「知り合い」だと名乗った手前と、彼女の事が心配であるという本心が重なり、救急車内に乗り込む。
    同時にスマホに医療情報のような項目が見えたので、隊員の人に確認をして貰う。それを見ながら搬送先への病院とやり取りをしているのを自分が聞いてもいいのかどうかと迷いつつ、担架の上に固定されている小さな身体の様子を窺った。
    出遭った時には色白で、ここ最近は気温のせいで火照っていた顔色も、今は青白く生気がない。
    救急隊員の人達の対応等で一刻を争うようなものではないという事を素人ながらに感じたが、それでも後悔で胸が押し潰されそうだった。

    もっと早く、注意をしていれば。
    そもそも、あんな提案をしなければ。

    現実に起こってしまった事は戻りはしない。
    時間が戻ったりなんて絶対にしない。
    だから、ちゃんと謝って、区切りを付けなければならない。

    自分の優柔不断の結末を、きちんと、終わらせなければ。



    病院に着いて彼女が色んな検査をしているのを待っている間に、預かっている鞄の中のスマホが鳴った。彼女の母親が先程の着信を折り返してくれたようだ。
    病院の人とやり取りをした方がいいだろうと通話ボタンを押してその旨を伝えようとすると、既に担当医の先生方とのやり取りは終わったと伝えられた。
    そして今自分は海外におり、父親も病院へ向かえる状況ではないから、彼女に付き添っていてあげて欲しいと、頼まれる。
    これで、検査中に保護者の人が迎えに来てくれれば自分は彼女と顔を合わせなくて済む、という退路が、塞がれた。
    そうして、彼女の母親はあくまでも優しく、けれど淡々とした言葉を俺に投げかけて、通話を切った。

    「…あの子がこうなった原因は、ひょっとして、貴方にも関係あるのかしら。もし心当たりがあるのなら、あの子に向き合ってあげてくれると、嬉しいわ。勘違いだったらごめんなさいね。何度も娘を助けてくれて本当に有難う。今度ばかりはちゃんとお礼をさせて頂戴ね。あの子をよろしくお願いします。」

    柔和で、落ち着いた言葉の中に、確かに娘への愛情を感じる、少しの鋭さを感じた。

    覚悟を決めろと、言われたような、気分だ。


    はぁ、と溜息を吐いてポケットへとスマホを戻そうとすると、カサリという音と共に何かが引っ掛かってそれ以上先に進めなくなった。
    ああ、逆側のポケットだったかと一度スマホを引き抜くと、その隙間に見覚えのある包み紙が見えて動きが止まる。

    「     、」

    飴だ。
    苺の模様の包装紙の見覚えのあるそれは、周囲を小さな透明のラッピングで包まれていて。
    恐らくこの連日の暑さのせいで、形が少し、崩れていた。

    「――――……、」

    息が詰まっていたのを意識して戻して、鞄の向きを変える。
    そうして今度は、俺がその場で裏表を変えるように言った鞄に繋がっている定期入れが目に入る。
    区間の表示は今もきちんと隠れている。
    その定期の裏側の端の、透明なケースになっている部分。
    そこにも、同じ模様の包装紙が、丁寧に包まれて、収まっていた。

    自然とスマホを持っている手に力が入り、もう片方の手で口元を覆う。
    元々下げていた視線を更に下に降ろして、深く俯いた。


    ―――どうして、こんな。

    困る。

    どうしてこんなに真っ直ぐに、愚直に、ひたむきに。自分の全部で、伝えてくるんだ。
    男の手だと認識した瞬間にあんなに怯えて。
    それが俺だと気付いた時には逆に身を任せて。

    キミは警戒心に乏しいのだと、確かに伝えたのに。
    学んでいないのか。忘れてしまったのか。
    忘れてしまったのなら、俺と繋がっている嫌な記憶も忘れてくれていればいいのに。
    逆に忘れまいとするような、これまでの行動の数々に胸が締め付けられるような気持ちになる。
    後悔と。罪悪感と。責任感と。それと―――?



    この飴のような、甘酸っぱいなんてものじゃない。
    酷く苦しくて頭が良く動かないし、とにかく、息がし辛くて仕方がない。
    ただひとつの事しか考えられないような、こんな想いが。
    皆が色めき立って語り合う様な、『恋愛』というものなのだろうか。

    脳が痺れる程に甘く、かと言って今の心持ちはとてもほろ苦い。
    美味しくなるように味を調整を出来る訳でもない、どうしようもなく感じるこれが、俺の『恋』、なのか。

    どうしようもない。どうすればいいのかもまるで解らない。
    こんな、気持ちは初めてだから。 困るんだ。



    *ここまで
    書きたいところだけ書いている……
    実はこの話、先輩視点の話は通常verと病みverを書いてリンク分岐という形で書こうとしてたんですが、何かどんどんゲームの方で闇部分がなくなっていくので「病みverはちょっと……違うかな……」となった為健全verのみ存在しています。
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