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    ふぉっくろ
    小さい狐に嫁にするって言われる烏天狗の話

    いつか長い話にできたらいいな

    #銀土
    silverEarth
    #ふぉっくろ

    子狐【1】「そういえば、お登勢さんのところに狐が住み着いたそうですよ」
    一日の報告の最後、雑談のような調子でそれを部下の山崎から聞いた土方は、手に持っていた書類から顔を上げた。
    妖怪たちの揉め事を取り締まる真選組という組織は常に忙しい。本来であれば雑談などしている余裕はないのだが、その話には興味を引かれた。
    「お登勢さんっていうと、あれだろ、妖怪だろうが鬼だろうが、金さえ払えば酒を飲ませるっつう、飲み屋だろ」
    「そうです、そうです、山向こうの店ですよ。本人は、人間の店みたいにスナックなんて言ってますけどね」
    「おまえがわざわざ報告したってことは、その住み着いた狐ってのは普通の狐じゃねえんだろ。妖狐か」
    立ち上がりかけていた山崎は、土方が話に興味を示したため座り直して「そうなんですよ」と頷いた。
    「妖狐は妖狐なんですけど、九尾狐だっていうんですよ」
    「九尾って……そりゃ、またえらいもんが住み着いたな」
    「しかも、お登勢さんが拾ってきたっていうんですよ」
    「九尾狐なんて、そこらに落ちてるもんじゃねえだろ。なんだ拾ってきたって。犬や猫じゃねえんだぞ」
    九尾狐といえば大妖怪だ。九尾狐の方からやってきて、勝手に住み着いたというなら話はわかる。だが、拾ってきたというのは想像ができない。土方は紙巻き煙草に火をつけてから山崎に難しい顔を向けると、山崎の方も「そうなんですよ」と首を傾げた。
    「それで、ちょっと調べたんですけどね。どうやら小さい九尾狐だっていうんですよ」
    「そりゃ、まぁ……九尾狐つったって、鬼みてえにでかかねぇだろ。人型だといっても元は狐なんだしよ」
    「いや、そうじゃなく、本当に小さいらしいんですよ、これくらい」
    山崎が手で示した高さは、土方の膝くらいまでだった。
    「これくらいって、おまえ。じゃあ、本当に子狐だっていうのか」
    「みたいですね。小さいくせにシッポはしっかり九本あって、しかも用心棒みたいな事をしているって話ですよ」
    「用心棒か……。お登勢さんは肝は据わってるが腕がたつわけじゃねえからな。用心棒はいたほうがいいだろ。だがなぁ、子狐じゃなんにもできねえだろ」
    「それが、めっぽう強いらしいんですよ」
    「子狐なのにか?」
    「子狐なのにです……やっぱり、見に行った方がいいですよね」
    「あぁ、そりゃ、一度確認しといた方が良さそうだな。揉め事のタネになりそうだ」



    山崎と連れ立ち、土方がお登勢の店に降り立つと、店の中はいつものように賑やかだった。
    いや、いつものようにと言うには少々騒がしすぎる。怒声のようなものが漏れ聞こえてくる。
    今夜は子狐とやらの顔を見に来ただけだというのに、仕事になってしまったかと土方が顔をしかめたその時、お登勢の店の引き戸が真っ二つに割れ、中から真っ赤な鬼が転がり出てきた。その後を黒い鬼も続く。
    騒いでいたのはこの二匹かと土方が腰の刀に手を伸ばしたが、転がり出てきた鬼たちを追うようにして木刀を持った毛玉も店から飛び出してきた。
    「待てこらー! 金は置いてけ!」
    そんな山賊のような事を言いながら毛玉が鬼達に向かって木刀を振り下ろしたのだが、そこに土方が割って入った。咄嗟に引き抜いた刀で木刀を受け止めて弾いたが、普段は感じない衝撃が手に伝わる。
    小さな毛玉が振り下ろしたとは思えないほどの衝撃。
    毛玉がくるっと空中で回転して宙で止まるのを見て、土方はやっとそれが今夜の目的の子狐だと理解した。
    「おまえが九尾か……」
    小さく呟くと、子狐の方も月を背にしてじっと土方を見つめてくる。もう一撃来るかと身構えていたが、子狐の方はもう刀を下ろして戦う意志はなさそうだった。それでも尚、土方をじっと見つめている。
    「なんだ? どこか痛めたか?」
    そんなに強く弾いてしまっただろうかと土方が心配になって空中の子狐に手を伸ばすと、パシっと手を握られた。
    「あんた、美人だな! こんなに美人な烏天狗なんて初めて見た! 名前は? 名前はなんて言うんだ」
    「ん? 土方だ。土方十四郎。ここいらの見回りをしてる真選組のもんだ」
    「土方ね、覚えた。俺は銀時だよ。ここに居候してんの……よし、決めた」
    「え、決めたって何を」
    「あんたを嫁にする!」
    「はぁ? 嫁?!」
    突拍子もない事を言い出されて土方は面食らったが、見た目は小さな子狐だ。幼子が一目見て気に入った相手に将来を誓ってしまうという事は偶にある。これも、その類だろうと小さな身体を引き寄せて腕に抱いてやった。小さな身体にふわふわの九本のシッポ。銀色の髪からぴょんと出ている狐耳が愛らしい。
    「残念ながら、俺は男なんだがな」
    頭を撫でながら言ってやると、九尾狐は大きな赤い瞳で土方を再び見つめてきた。
    「そんなもん見ればわかる。でも、妖怪には関係ねえだろ」
    「そりゃそうなんだが」
    どうやって説明すればいいんだと土方が困っていると「ああ、俺が小さいから?」と腕の中の子狐が言う。
    「まぁ、そうだな。お前はまだ小さい。だから……」
    大きくなったら出直してこいと土方が言おうとすると、腕の中でポンと破裂音がして煙が広がった。
    その煙が薄くなると、さっきの愛らしい子狐ではなく、そこにはシッポを扇のように広げた大きな九尾狐が浮いていた。
    真っ赤な瞳はそのままだが、背丈は土方と変わらない成人の見た目だ。まさに九尾狐といった感じの、怪し気な獣のような笑いを浮かべている。
    「これくらいなら、いいかな。ね、土方」
    長い爪の指でついっと顎を持ち上げられ、土方が言葉を失っていると、薄く開いた口から煙草を抜き取られて、そのまま唇を重ねられた。
    「ンなっ!何しやがんだ!」
    「なにって、俺の嫁候補だから印をつけとこうと思って」
    それだけ言うと、狐はまたポンと破裂音を立てて元の子狐に戻ると、狐火とともに宙に浮いた。
    「今はまだ長くは大人の姿でいられねえけど、待ってて。すぐに大きくなるから」
    ね、と可愛く微笑んでから、子狐は木っ端みじんになっている引き戸を元に戻しつつ店の中に戻って行ってしまった。
    呆然としている土方の背後で遠慮がちに「あの、副長?」と山崎が声をかけてくる。
    「鬼達には逃げられちゃいましたが、今夜はどうしま……あ、帰りましょうか」
    今までにないような顔をしている土方を見て、山崎はこれはダメだと判断した。動揺しているのは一目瞭然だ。土方の顔がさっきの鬼にも負けないほど真っ赤に染まっている。
    もしかして、副長も惚れちゃいました?なんて命知らずな質問はしなかったが、口には出さずとも顔には出てしまっていたらしく、土方に睨みつけられて「何が言いてえ!」と叫ばれた。

    愛らしい毛玉と、威圧感のある大きな九尾狐、その二つを同時に見せられて油断していたとはいえ不覚にも唇を奪われた。
    「くそっ! 帰るぞ山崎!」
    怒りをどこにぶつけるべきなのかわからず、近くにいた部下に当たってみた土方だったが、イライラは更に増す。
    こんなところ、もう二度と来ないからなと、心の中で思いつく限りの悪態をついてみたが、余計に気分が落ち込んだ。
    そんな土方だったが、翌朝起きると、小さな九尾が隣で寝ていて叫び声をあげることになる。

    ───────

    無邪気な顔をして、着々と烏天狗を追い詰める小さな九尾狐と、押されまくって絆される烏天狗さんのお話。
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    和花🌼

    DONE夏祭りリクエスト六
    銀ポニ
    次の言葉が入っています
    花火/人の流れ/穴場/聞こえない/一瞬
    夏祭り6(銀ポニ) ——やけにふわふわだな。
     それが最初に、目の前にいるこの男を見た時の印象だった。
     そんなわけで、俺も多少は驚いたが、俺を見た男の方が俺よりも驚いていた。
    「ひ、ひじかた! おい! これ、どういうこと! どういうことだよ!」
     男のあまりの剣幕に俺が呆気に取られていると、奥から出てきたメガネをかけた野郎に首根っこを掴まれて引きずられて行った。
    「はいはい、銀さん。とりあえず話を聞きましょうね。沖田さん、と……土方さん、でいいのかな。いらっしゃいませ。今日はお客様ってことでいいんですよね」
     銀髪の野郎はまだ「なに、呪い?! それとも、タイムスリップ? 土方に何をしたんだよ!」と喚き散らしている。
     俺の仲間だと紹介された真選組の奴等よりも、よほど慌て方が凄まじい。俺の名を呼んだということは、おそらく知り合いなんだろう。しかも、これだけ心配しているということは、友人、なのかもしれねぇ。俺に友人なんて呼べるもんができているとは思えなかったが、あんだけ大勢の仲間がいると言われた後だ。仲間以外にも、何かしら交流がある連中もいるんだろ。そこのメガネも、俺の事を知ってるみてぇだしな。
    11106

    和花🌼

    DONE夏祭りワードパレットを使用したリクエスト
    7 原作
    ・帰り道
    ・歩調を落として
    ・特別
    ・あっという間
    ・忘れられない

    暑苦しいほど仲良しな二人を楽しんでいただけたら嬉しいです。
    夏祭り 7(原作) 夏祭りといえば浴衣を着て、友人や家族、それに恋人なんかと団扇で顔を仰ぎつつ、露店を横目で見ながら、そぞろ歩きするのが醍醐味というものだ。それに花火も加われば、もう言うことはない。
     だが、それは祭りに客として参加している場合は、である。
     出店の営業を終え、銀時が借りてきたライトバンを運転して依頼主のところに売り上げ金や余った品を届け、やっと三人揃って万事屋の玄関先に辿り着いた時には、神楽はもう半分寝ていたし、新八も玄関の上がり框の段差分も足を上げたくないといった様子で神楽の隣に突っ伏した。そんな二人に「せめて部屋に入んな」と声をかけた銀時の声にも疲れが滲む。暑いなか、ずっと外にいたのだ。それだけでも疲れるというのに、出店していた位置が良かったのか、今日は客が絶え間なく訪れ、目がまわるような忙しさだった。実際のところ、目が回るような感覚になったのは、暑さと疲労のせいだったのだが、そんな事を冷静に考えている暇もなかった。
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    和花🌼

    DOODLEワードパレットを使ったリクエストSS

    ワードパレット3
    以下の言葉を使用しています。
    ・出店
    ・あれもこれも
    ・楽しくて
    ・おいしく感じる
    ・ついつい

    九尾狐(銀時)に拾われた烏天狗(土方)が大きくなった設定の『ふぉっくろ』で書いています。
    背後にふわっと、この設定もあります。
    蛟(水神):高杉
    化け猫:神楽
    化け狸:新八
    夏祭り(ふぉっくろ) 道の両側に並ぶ出店の眩い光が闇を照らす。近くの山車からは威勢の良いお囃子が聞こえ、声を張らなくては隣にいる相手の話し声すら聞こえない。
     出店が並ぶ参道のあちこちは、ただでさえ人でごった返しているというのに、山車で道の中央が塞がれているため、それを避けようとする人々で路上はさらに混雑する。
     カランと下駄を鳴らしながら土方が隣を見ると、人混みに疲れてきた自分とは対照的に、楽しそうに目を輝かせている銀色の狐がいた。狐と言っても、今は人型をとっているのだから、白い毛並みを彷彿とさせるのは自由に跳ねまわる髪くらいで、常であれば九本もある尻尾も今はなく、頭の上にちょこんと出ている狐耳もない。その代わりに、形の良い人の耳が左右にある。土方はその耳に唇を寄せて狐の名を呼んだ。すると、すぐに狐の腕が土方の腰に回される。
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