※芽生えたものが本物か偽物かなんて誰にも分からない
ポカンと見詰めたその先に、明らかな異常が鎮座していた。
自分よりも幾分大きな背丈を見上げた先にあるのはカリオストロの相貌で、その額、ひび割れた亀裂から何かが角のように生えている。それは確かに"芽"の様な何かで、思わず口にした疑問に伯爵は事も無げにさらりと告げた。
「なに…コレ?」
「蕾、でしょうかね」
まるで他人事の様に諦観する男は、自身の顔、ひび割れた溝に指先を滑らせる。赤い瞳から額にまで伸びた大きな溝を辿れば、そこには本来あるはずの無いものが顔を覗かせていた。
伯爵の言う、花の蕾。何故そんな物が生えているのか、疑問に顔を曇らせるが当の本人も答えを得てはいないのか困りました、と曖昧に微笑むばかりだ。あまりにも素っ気無い回答に、もしかして揶揄われているのかとカリオストロの顔をまじまじと観察する。しかしひび割れたその隙間、細かな溝にさえツタのような物がびっしりと覆っているのを見てしまっては素気無く返す事も出来なかった。
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