れさし小説2「…あれ…」
結局全身びしょ濡れだからって風呂まで借りてしまった。びしょ濡れのまま上がるのも忍びないと思ってはいたが、手取り足取りされてしまっている。一度会っただけのような人間にここまで優しいとは…見習わなくてはな。
湯船にちゃんと入ったのもいつぶりだろうか。思い当たる日常生活のあれこれを言えば彼に怒られてしまいそうだ。この家の中の様子から見るに、俺より百倍はきちんとした生活を送っているだろう。
…それにしても、よくあの土砂降りの中で人影を見つけられたものだ。どす黒く濁った景色の中で人一人見つけるのも一苦労だろう。あのまま振られていたらどうなっていたことか…途中から雷も鳴り出していたし、きっと無事ではいられなかった。まぁ、その数分後にまさか風呂に入っているとは。夢にも思わなかった光景だろうな。
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