分杭峠討伐作戦から数日が経過した。
目下、レノは第4部隊管轄の病院に入院中だ。筋断裂や亀裂骨折、左脛骨骨折と満身創痍なので、完治にはそれなりに時間がかかる。
レノは枕元の端末を手に取り、ベッドの背を起こして寄りかかった。時刻は22時29分。病院の就寝時刻は22時なので既に病室は暗い。
そろそろかな。
レノがそう思った瞬間、手の中の端末が震えた。動画による着信だ。
画面に映し出されている発信者の名前は「先輩」。今日も約束通りジャスト22時半だ。約束を守る気はあるらしい。
レノが無意識に唇の両端を上げてボタンをタップすると、手の中の小さな長方形の中に見慣れた顔が映し出された。
『市川、お疲れ! 話しても大丈夫か?』
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