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    瀬名🍭

    書きかけ、未修正の物含めてSS落書きごちゃ混ぜ。

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    瀬名🍭

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    れーりつ。うっかり一ヶ月以上間が空いてたのでメモ帳で眠ってるのを引っ張り出したが当時想像したオチを忘れた。

    ##れーりつ

    時刻は午後五時を回っていた。今日は兄さんの代理で受付に座り、簡単な案内役を務めている。指に沢山の指輪をはめ、ゆったりと腰を揺らせて歩く妙齢のご婦人、日を浴びれば消え去ってしまいそうな生っ白い肌の二、三十代、覇気のない男性、怒りを示すのがライフワークになり自らも怒気の芸術品になってしまったかのような、肩をそびやかしてやって来た中年男性、と本日のお客様の様子を、僕は手にした本に目を落としながら、時折まるでお菓子をつまむみたいに盗み見た。対応するのにやや手腕が問われると思われる客人も、依頼が終わるときには皆何かしら手応えを得た顔つきで会計を済ませていくのだから、この店の主人はなかなか上手くやっていると言えた。
    「何読んでるんだ?」
     マッサージ療法を終えた霊幻さんは肘の所まで捲り上げたシャツの袖を指でつまんで、手首まで下ろしながらこちらへ近づいて来た。僕が答える前に表紙を見て「はー」と唸る。「もうそんなの読めちゃうんだな」
    「年は関係ないですよ」
    「まぁな。出だしかっこいいよな」
     既読なんだという小さな驚きと新雪に足跡をつけられたような微妙な感情がそのまま顔に出ていたのだろう。霊幻さんはしたり顔で付け加える。
    「何も読んだとは言ってないぜ。有名な一節を知ってるだけかもしれねーぞ」
     足跡をつけたどら猫がおちょくるように僕を一瞥し、軽い足取りで姿を消した。真実がどうであれ、僕は耳を貸す気が削がれてしまった。彼も察したのか息を軽くこぼして、時計を見た。そろそろ次の依頼者が訪ねてきてもおかしくない頃合いだった。
    「楽しいだろ?」と彼は問う。「人間観察」
     落ち着いた声音に挑発の意図は込められていない。見ているつもりが毎度見られている。監督者として見守るという彼なりの意思の表れなのだろうが、むず痒くこの態度に慣れてしまってはいけないと感じる。僕はう〜んとわざとらしく唸ってから、言葉を続けようとしたが、不意に次の依頼者がドアから顔を覗かせ、会話はそこで立ち消えた。
     二人の和やかなやりとりに耳を傾けながら、依頼者の様子より応対する彼の姿を自然と目で追う自分に僕は気づいている。僕は誰にも聞こえないように息を一つ吐く。手元の活字に意識を集中しようと努めるが、今日一日の訪問者の顔ぶれが思い浮かび、僕なら、と思考する。僕なら、霊幻さんに依頼したいとは思わない。悪魔との契約に引けを取らない。僕には正体が判じ難いという点で、どちらも似たようなものだから。
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    瀬名🍭

    PROGRESS不定期でトとジェがお茶会する♣️🐬SSのまとめ(未完) 捏造多。随時更新。お題:salty lovers
    Merman’s test garden 魚類は虫歯にならない。歯を蝕む病は人類と砂糖の出会いによって生まれ、海中暮らしで甘味を知らなかった人魚もまた、人と交わることで歯を患うようになったと言われる。太古の昔、人間の王子と結ばれた人魚の姫は、心優しいハンサムではなく実際のところお城の豪華なテーブルに並んだ愛しき者たち――チョコレートケーキにミルクレープ、焼きたてのスコーンにクロテッドクリームとたっぷりのジャムを添えた、華麗なるティータイム――と恋に落ちた、なんて使い古されたジョークがある程だ。
     それまで、栄養補給を主たる眼目に据えた、質実な食卓しか知らぬ人魚たちの心を蕩かしたこれら、危険で甘美な食の嗜好品はsweety loversと名付けられ持て囃された。他方、人間に人魚、獣人、妖精と多様な種族がファースト・コンタクトを済ませたばかりで、種の保存において血筋の混淆を危険視する声も少なくなかった。昼日向に会いたくても会えず、仲を公言することもできない、陸の上の恋人を持つ人魚たちはなかなか口にできぬ希少な砂糖になぞらえ、情人をもまたsweety loversと隠れて呼びならわし、種の垣根を越え、忍んで愛を交わしたと伝えられている。
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