ニト保(リバイ視点)アイツと出会ったのは大雨が降っていた6月。
傘もささずにスーツ姿で公園のベンチに座っていたのを保育園から見つけた。
ガキ共が寝ている時だったから先生達に一言伝えてアイツに傘を持っていってやったのが出会い。
『家に帰りたくない…いや、何もかも、忘れたい』
雨とともに消え去りそうなその声にコイツの心が壊れかけてるのが分かった。
直ぐに近くの俺の家に連れていき風呂に入れ、近くのドンキで1番でかいスウェットを購入して帰宅した。
それからアイツ、エルヴィンと過ごし始めたのだが……そうかあれから1年か。
エルヴィンは1年前よりも遥かに元気になり体力も生きる気力も溢れている。
よかった…本当によかった。
あの頃、本気で俺が見てない間に死ぬんじゃねーか?と心配でしか無かった。だから記念日?だからって『……なんかする?』と聞いてきた時は結構驚いた。
だって1年前なんて今日が何曜日で何日かも分からなかった奴が1年前を覚えてるんだからな。
「俺は普通に家でちょっと豪華な食べ物作って、普通にお前と過ごせたらそれでいい」と言った。
それが本音だ。
お前が幸せで元気で毎日暮らせるのなら何もいらないから。お前がこの家から出て行くって言わなければ俺は何もいらない。
エルヴィンは少し不服そうにしたがいいんだ。
俺は何も求めない、お前がいるだけでいいから。
俺がいない時は何してるか分かんねーけど、大概家でゴロゴロしているエルヴィンから
『夕飯作って待ってるよ』と昼に連絡があった時は嬉しくて飛び跳ねちまった。
「りばいせんせーいいことあった?」
エレンに聞かれて俺は「そうだ。今日は早く帰らなきゃいけなくなったんだ」と微笑んだ。アルミンは勘がいいから「きっとすきなひとがまってるんだよ」と大人ぶって言いやがるし、コニーは「せんせーけっこんするの?」とまで聞いてくる。
…結婚か。
エルヴィンと?俺が?
「せんせーのかお、こわい」
「にやにやしてるの、こわい」
「えがおがこわいです」
いけねぇ…ついニヤついちまった。
エルヴィンが家で俺のために飯を作って待ってるなんて最高じゃねーか。
俺のために…俺のために……いや、アイツの気まぐれで、俺のためじゃないかもしれない、でも記念日って昨日言ってたし……いやでも…
「リヴァイ先生、今日早く上がっていいですよ」
同僚のペトラ先生が突然言うから焦ったが、押しの強いペトラ先生に退勤を無理やり押された。
俺は先生達に礼を言って急いで家に帰宅した。
嬉しい!
エルヴィンが待ってる!
毎日家にいるが、俺を待ってると思うだけこんなに嬉しいんだ。
嬉しい嬉しい!!
「ただいま」
ドアを開けるとそこには見たことの無いクッッッソハンサムな色男が立っている。
誰だ!?
「イエヲマチガエマシタ」
「君の家はココだ!合ってる!」
「お、お前は誰だ!!俺のヒモ彼氏じゃねぇ!」
「君のヒモ彼氏のエルヴィンだ」
困った顔して太く凛々しい眉が下がっている。
その眉は……エルヴィン!俺のエルヴィンだ!!
どうしたまったその姿…絵本の『カエルの王子様』か?
俺のヒモ彼氏は王子様…海外の有名な俳優のようなだ。昔すげー好きでハマって映画観にいったし小遣いでDVDも買った。
大好きな俳優のエルヴィン・スミスじゃねーか!
でもコイツは俺のヒモ彼氏のエルヴィンだ。
まじまじと顔を見てもうメロメロ。
顔中にキスをして舌をねじ込んでキスまでしちまった…クソったまらねぇ!俺のエルヴィン最高にかっけーじゃねーか!
あ、記念日か、これが『記念日』のエルヴィンか。
記念日すげぇ……夢かと思ったけど夢じゃねぇ…
「あぁ?このままセックスだろ?セックスしようぜセックスしよう」
押し倒しちまう勢いで言えばエルヴィンは慌てて俺を止める。
「ゆ、夕飯作ったから!ちょっと豪華な感じの…」
いつも余裕綽々な顔で論破してくるエルヴィンがたじたじで焦ってるのがなんとも新鮮で可愛い。
もう家に漂う香りで美味いの分かんだよ。
エルヴィン、よく頑張りました。
「食う!エルヴィンが作ってくれた夕飯、俺はその為に急いで帰ってきた!」
ホッとした顔のエルヴィンが可愛い。
あーもう、こんなデケェのに大型犬みたいな面してハンサムで優しくてかっこよくて最高にイカしてるぜ!!!
お前はここにいてくれるだけで俺は毎日が俺にとって記念日なんだよ。