親リ、祭りから逃げる 壁面建設の社屋がある町は昔ながらのいわゆる下町で、自治会がきっちり機能して毎年かなり盛大な盆踊りが催される。若い職人を派遣し櫓を建て、子供向けの無料ジュースを配るのが我が社の夏の恒例行事だ。
「あったなぁ、子供会で配られるジュース券。楽しみにしてたっけ」
「今じゃコレだがな」
紙カップに入った生ビールを手渡せば、リヴァイはサンキュと言って口を付ける。せっかくなので急遽、行きつけの和装店で選んだ黒の縦縞しじらの浴衣を着たリヴァイは、溢れそうな泡を慌てて啜り、鼻下に見事な白髭を作った。その顔が可愛かったので、俺は町内会の団扇でソッと隠してその泡を舐めとる。
「ばっ、か」
提灯の灯りでもわかるほどに耳を紅くしたリヴァイ。
1330