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    w108kurage

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    w108kurage

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    宇宙と典鬼
    ※趣味全開
    ※明るくはない
    ※死ネタ(老衰)

    #典鬼
    pawnshop

    瞳の恒星/焦がれて、焦がして※メリーバッドエンド
    ※謎設定
    ※死ネタ(老衰)
    ※明るくはない



     大典太の目の前に、男が降ってきた。
     文字通り、上空から落ちてきた。
     驚き避ける間もなく、男は大典太の顔を両手で掴み左目を覗き込んでくる。
    「ちょ、あんた、何、誰、」
    「……」
     男は頭からツノのようなものが生えており、なにやら風変わりな服を着ている。大典太は慌てて男を引き剥がし困惑の表情で問うた。
    「あんた、何者だ……?」
    「……この星で言うところの、『宇宙人』だな」

    「遠くから地球を眺めてたら、キラッと何かが光ったんだ。何が光ったのか確かめにここまで来てみた」
     宇宙人……『オニマル』と名乗ったその男は淡々と説明をするが、大典太はもう何から信じていいのか分からない。
    「……で、その光ったものが『俺の目』だったと」
    「そうだ」
    「それで、いきなり目の前に現れて俺の目をじっくり観察した感想は?」
     オニマルは「ふむ、」ともう一度大典太の目を見つめ口を開いた。
    「うーん……『老いた恒星』に似ている」
    「なんだその言い草は」
     よく分からないがなんとなく失礼な感じがするぞ。そう不満を漏らせばオニマルはくすくすと笑った。

    「ふふ。……お前の目の恒星が完全に老いさらばえて滅ぶまで、近くで観察していようかな」

    「え?それってつまり……俺が死ぬまであんたが近くにいるってことか?」
    「まあ、そういうことになるな」
     大典太の推理は当たったようだ。オニマルは再度大典太の瞳を覗き込み、嬉しそうに目を細めた。


    というわけで、人間と地球外生命体。
    同棲、始めました。

    「あんた、なんで地球の言葉が分かるんだよ」
    「ああ、翻訳機を脳に埋め込んでるんだ」
    「翻訳機?」
    「うん。宇宙のどこの言葉でも訳せるぞ。地球だけじゃなくて、火星語とか、・…1+語とか、1+7|20☆☆語とか」
    「へ、へえ……」
     話のスケールが大きい上にそもそも単語が聞き取れないので、大典太は曖昧に返事をした。とにかく、オニマルは地球からはるかに遠くて文明が進んでいるところから、大典太の目を見るためだけに飛んできたらしかった。


    〜〜〜


     数十年大典太の目の恒星を観察したが、ついぞ星の輝きがあれ以上鈍ることはなかった。
     目の光が潰える前に、彼の肉体が死を迎えてしまったのだ。
     最期まで、大典太の瞳は美しく、やさしく燃えていた。
    「オニマル、俺の目なんて見続けてもつまらなかっただろ。もっと面白いものを探しに行きな」
    「いやだ、ずっとお前と一緒にいる」
    「ふふ、ワガママめ。……俺はもうすぐ死ぬ」
     力無い手が鬼丸の頬を撫でる。
    「……俺はあんたと過ごしててすごく楽しかったよ。あんたはね、やさしくて真面目でかわいい、いいこだ……」
    「……死んじゃ嫌だ、いやだ、いやだ、」
    「ああ、泣くな泣くな」
     大典太はオニマルの涙を拭い、「あたたかい」と言って笑った。
    「今までありがとう、オニマル。大好きだ、愛してる……」
    「……おれも、おれも大好き、ずっと、……!」

     オニマルは、事切れて冷たくなった愛しい男を人の寄りつかない山奥に運び、大事に大事に土に埋めて弔った。
     こころが空っぽになってしまって、何も考えられない。オニマルは思考を手放し、地球から飛び出して宇宙空間をふよふよと漂い始めた。何年も、何十年も、何百年も、何千何万年も……



     そうして数十億年が経過したころ、オニマルは遠くの空に懐かしい色を見つけた。
    「………………み、つよ……?」
     何十億年ぶりに出した声は、とても小さくて、掠れていて、咳のようであった。でも今はそんなことどうでもいい。懐かしい色めがけて急速に宇宙空間を駆ける。

    「みつよ、ああ、光世だ……!」

     暗い赤色に鈍く輝く恒星。まさしく大昔に焦がれたあの瞳の色である。
     オニマルは光よりも速いスピードでその恒星に接近して、大きく手を広げて星ごとハグするように飛び込み抱きついた。(と言っても、あまりにも大きな星だし、恒星は気体でできているのだから、うまく抱きつくことはできなかった)
     表面温度は三千度ほどか。いくら地球外生命体で様々な環境に耐性があるといえど、そんな高温に耐えられるはずもなく。
     オニマルは核融合を繰り返す星の中心部へと埋まっていく。内部に近付くにつれて炎の温度は高くなり、絶えず燃える炎が体をごうごうと焼いた。
     苦しくはなかった。あたたかかった。大典太に抱きしめられたときの熱を思い出し、懐かしくて、愛しくて、くふくふと笑う。
     周りの炎はすべて、彼の目の色と同じ色だ。彼の目の中に入り込んだみたいで、あまりにもうれしい。
     うれしい。うれしい。うれしい。

    ……さびしかった。

     数十億年の孤独。今までの虚構の時間を思い出して涙が溢れては、周囲の炎によって蒸発していく。千万度の炎に灼かれ遠のく意識の中、ふと遠くの星が目に入った。
    「ぁ……ぁはっ、はははっ、地球だ……!」
     青い星。大典太と過ごした星。暑くて寒くて、ちっぽけな星。……大切な、思い出の星。
     大典太の体は、いまも埋まっているのかな。手厚く埋葬したから、ちょっとやそっとのことじゃ荒らされたりしないはずだ。
     オニマルは焼けてしまってほとんど形が残っていない体をなんとか動かし、地球に向かって手を振った。
    「光世……光世……!」

     炎に呑まれたオニマルの体がすべて焼けきる瞬間、どこかから、聞き馴染んだやさしい笑い声が聞こえた気がした。
    「オニマル……好きだよ、愛してる……」






    ⭐︎どうでもいい解説⭐︎
    太陽は老齢になるにつれ巨大化し、表面温度が下がります。これを赤色巨星といいます。色はちょっと暗い赤って感じ?(ようわからんけど)
    で、オニマルは最初に光世の目を見て「老いた恒星」と言いましたが、この赤色巨星のことを指しています。深い赤色が似ていたんでしょうね。

    数十億年宇宙を漂ったオニマルが見つけた『老いた恒星』。光世の目の中の星。それはまさしく、老いた太陽なのでした。
    太陽に呑まれていく中でオニマルは大切な思い出の星……地球を発見したのでした。
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