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    #聖夜〜俺のネロをみてくれ〜女体祭〜

    ブラネロ♀の現代パロみたいな何かです

    はっぴーくりすます!!

    それは確かなようで儚いもの 裏通りにエッチなサンタがいるらしい。
     ブラッドリーがそれを耳にしたのはクリスマスイブの昼中。男四人で集まって雀卓を囲んでいる真っ最中のことであった。
    「んだよその『エッチなサンタ』ってやつは」
     裏通りにコスプレでそんなサービスをしてくれる店はあっただろうか。男の言う裏通りはよく利用しているが、品のない看板を見た覚えも、勧誘の声をかけられた覚えもない。そもそも今でこそ裏通りと呼ばれているが元は商店街が立ち並ぶ通りで、少し離れた場所に大きな商業施設が出来たため、そう呼ばれるようになったような場所だ。
     どう考えてもエッチなサンタとやらには結びつきそうにない、と首を捻りながら適当な牌を切るブラッドリーの思考は既に興味の対象は男の話題から目の前の牌へと流れていた。
     そもそもブラッドリーは女に不自由しているわけではない。コスプレは夢だロマンだと言われるがそれよりもオーソドックスな格好で恥じらいながら求められた方が「おっ」となる。同棲中の一応恋人がいる身としては全くそそる話ではないのだ。
     それでも続きを促すよう様子を見せたのは、男が気分よく話している間は手元がそぞろになる相手であったからおべっか半分でそこそこ興味がある素振りを見せたのだ。そんなブラッドリーの狙い通り、男は喜々として口と、それから手を滑らせてくれた。
    「いや、俺も直接見たわけじゃないんだけどさ。今日クリスマスじゃん? で、裏通りの、あー……なんつったかな、店名忘れたけどクリスマスだからって売り出ししてるみたいでさ、そこに超エッチなミニスカサンタがいるんだって」
    「へぇ、そりゃすげえな」
    「見たってやつにどんな風にエッチ何だよって聞いても自分で見ろとしか言われないしさぁ、……なあ、この後ちょっと見にいかね?」
    「あー、そうだな」
     クリスマスにエッチな売り出しをしてる店を冷やかしにいくなんてどれだけ寂しい野郎なんだと鼻で笑いながら自分が捨てる牌を考える。相手の捨て牌から考えるにどうもいい手が揃っているわけではなく、無難に勝ちを狙っているようだ。だったら点数的にわざと勝ちを譲るのも有りかもしれない。そんなことを考えながらブラッドリーが指先を遊ばせていると男が唐突に「あ、思い出した」と口を開いた。
    「――って店名のパン屋だよ、エッチなサンタが居る店。あそこパンも美味しいけどケーキも美味しいのかな」
    「……は?」
    「あ、それロン」
     男が口にした聞き覚えのある店名に捨てるつもりのなかった牌が倒れる。それを横合いからかっ攫ったのは男とブラッドリーの押収を何でもない顔で聞いていた別の相手。
    「珍しいな、ブラッドリーがこんなミスするなんて」
     ザラザラとかき集められていく点棒を呆然と見送りながら考えるのは件のパン屋とエッチなサンタについて。聞き間違いでなければそこはブラッドリーの幼馴染みで有り、同棲相手のネロが務める店だった。

     ムズムズする鼻に逆らわず豪勢なクシャミをすると行き交う人々の目が一瞬だけ集まり、それからスイと外される。花壇の縁に座り、寒そうに身を縮こまらせながら眼光鋭く睨みつける男。そんなものを見れば関わり合いを避けようとするのは当然だろう。
     苛々と組んだ足のつま先を揺らしながらポケットの中のライターを握りしめる。煙草が吸いたい。けれど最近では嫌煙ブームだとかで吸って良い場所が決められている。クリスマスだからなのか、巡回の警察官が嫌に多い。こんな人目につく場所で吸えば煩わしいことになるのは必須だ、と苛々しながら身体を揺するとブラッドリーの視線の先でサンタクロースの扮装でケーキを売っている女と目があった。
     太ももを惜しげなく晒した短いスカートと、長袖ではあるものの肩と胸元が大きく露出された衣装。上からポンチョのようなものを羽織ってはいるが品物や金銭を受け渡しする際にチラチラと見える肌色が、ケーキを買いに来た男共の視線を自然と集めている。
     目が合ったことで、小さめの赤いサンタ帽を被った薄空色から覗く麦の目が申し訳なさそうに伏せられはするものの、何に腹を立てているか根本的にわかった様子でない女はブラッドリーの同棲相手であるネロに間違いがない。
    ――ああ、クソ。こんなことなら意地でも反対すればよかった。
     二日前の話だ。ネロからクリスマスイブにバイトが入ったと聞いた。
     曰く、当日バイト予定だった子に用事が入ってしまった。元々は彼氏が仕事だからとバイトを入れていたらしいが色々と予定が変わってイブの日だけ休みに変わってしまったらしく、どうか変わってくれないかと頼み込まれた、らしい。
     業腹なのはすっかりその話がまとまった後にイブにバイトが入ったと報告されたことで、だったら今更反対したところでネロが聞くわけないな、と話半分で好きにしろと言ってしまった。本当に、どうしてあの時もっと難癖つけて反対しなかったのか。おかげでネロはブラッドリーの気も知らずあんな格好でケーキを売っているわけだ。
     心なし、他のサンタコスのバイトより肌面積というか、エロっちく見えるのはブラッドリーの色眼鏡だろうか。いや、端からみてもきっとそうに違いない。その証拠に、エッチなサンタがイコールネロであると気づいてすぐさま麻雀を抜け出したブラッドリーが見たのは、ナンパ目的で声をかけられて困った顔で応対しているネロだった。
     ちょっとばかり話をしようや、と不埒な男二人と『仲良く』話を終え、その後はずっとこうやってネロが見える範囲で寒さに震えながら待機している。道行く者からたまに可哀想な目で見られるのは恋人に待ちぼうけをされたように見えるからだろう。
     その当の相手と言えば絶賛肌を晒して衆目を集めている最中だ。寒いのか、時折ふるりと身体を震わせている。生足、というわけではないらしいが見ていて寒々しそうで、どうして温かい格好をしないのか、と舌打ちを溢す。
     繁華街から外れた場所で注目を集めるにはああいう格好の方がいいのだろうとはわかる。わかるけれどその格好をしているのが自分の好いた相手であるなら面白くないのが男というものだ。
     早くバイトなんて終わっちまえ、と内心で悪付きながらハックション、と再び大きなクシャミを溢す。ふと視線を感じて顔を上げれば、ネロが客の切れ間を縫うようにしてブラッドリーへと視線を送っているのに気づいた。まさかクシャミの音につられたわけではないだろう。訝しげに眺めていると手のひらを広げながらパクパクと口を開いているが一生懸命に何かを訴えかけている。
    「……?」
     はて、と首を傾げると伝えるのは無理と悟ったのか、ネロは一度視線を揺らした後、淡々とケーキを売る作業に戻った。それから五分後、交代にやって来たバイトらしき女と入れ替わるように店内へと引っ込んで行ったのを見てようやっと、先ほどのジェスチャーが「あと五分待て」なのだと気づいた。

     冬の寒空の下とは段違いの温かい室内で、二人掛けのソファーにネロの細い体軀を押し倒す。僅かに目を見張ったネロは、けれどすぐに何かを諦めたように目を伏せて身体から力を抜いた。
     その態度に苛立ちが募る。バイトが終わったネロの、なんで寒空の下待ってんだよバカ、なんて軽口や、今日の晩飯はチキンの予定なんだけど、とか、ケーキも一応用意してるから、とか、明らかに苛立っているブラッドリーを宥めようとするネロを無視した時も、腹を立てるではなく、薄い笑いと共に後に付いてくることを選択した。
    「……なんでテメェは、」
     続く言葉は声にならない。いつもそうだ。ネロを前にすると、ブラッドリーは伝えたいことの半分も上手に伝えられなくなる。
     昔は、そうではなかった。ただの幼馴染みで隣にいるのが当たり前だと思っていたあの頃は、ネロになんだって言えていた。
     けれど中学卒業後、ネロが消えた。ある日帰ったら隣の家はすっからかんになっていて、母親に理由を聞けば引っ越したのだと何でもないことのように言われた。
    ――アンタ何も聞いてなかったの?
     母親の心底意外そうな声音に、ブラッドリーは何も答えられなかった。何も知らなかった。何も、知らされていなかった。高校は同じ所にいくものだと思っていたし、そういった話を振ればネロもそのように応えていた。
     あの時ネロはどんな気持ちでブラッドリーと話を合わせていたのだろう。
     何年経っても隣にいると思っていた相手が、本当は何を思っていたのか。ずっとわかった気でいただけなのだと知った時、ブラッドリーは自身がネロにどういった感情を抱いていたのかに気づいた。
     恋ではない。愛でもない。あれは、自分のものだという支配欲。
     それが失われて初めてブラッドリーはネロのことをようやっと、一人の女性として見ることが出来た。
     本当は好いていた、なんて甘っちょろいラブロマンスのような都合のいいねつ造をするつもりはない。けれどネロが消え失せたことで湧いたのは確かに恋情であった。
     だからブラッドリーはネロを探すことをしなかった。
     会えばきっと、酷いことをする。二度と逃げられないように閉じ込めて、自分だけのものにしてしまう予感があった。
     なのに数年前ばったり再会してしまって。ブラッドリーが戸惑っている間にネロは、久しぶり、なんて何でもない風にいってくるものだから毒気を抜かれてしまった。多分、そうなるようにネロが仕向けたのだろう。
     二人の距離感はこういう風にしよう。言葉と態度でネロが秘やかに提示した案にブラッドリーは乗った。
     だから二人は恋人ではない。同棲しているし、身体も重ねているが、どういった仲なのかと問われても『恋人』であると胸を張って言えるような関係ではなかった。
    「……ブラッド?」
     しないの、と問うようにネロが小首を傾げる。この女は一体どういうつもりで自分に抱かれているのだろうか。苦虫を噛みつぶす思いでその薄い口に吸い付くと、背にネロの手の熱を感じた。
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