「きみって、鈍いのかあざといのか分からないよ、わたしには」
「…なに、いきなり?ていうかそれは、君に言えることだと思うんだけど。」
睨み合い。でも私達は直ぐに笑ってしまうんだ。それは本気の問いでも何でもなくて、さみしい心の内だとか、誰にも教えないつまらなくて空っぽな味の会話が出来る相手だって知ってるから。冷たい声色なんて先生からの譲り受けだし、眼鏡越しに彼女を睨んだら、歪んだ私の顔に耐えきれなっちゃうよ。
「ほんと、君って私を笑わせられる才能だけはあるね!」
「ちょっと!それってわたしを悪く言ってるだけでしょ。ハリーだって…」
変なところで彼女は唇を閉ざした。私は首を傾げるポーズなんかまるで最初から覚えてなかったみたいに、興味と好奇だけでロンに近づく。どうしたんだい、具合が悪くなった、なんて笑い話じゃあないんだから。
「ぷ、ふふ、…騙された。ハリーもまだまだだね。笑わせられる才能だけのわたしの芝居に、引っかかっちゃうなんて。」
「意地悪。もう絶対、今日は手伝ってあげないよ。」
「ご、ごめんってば。本当にカンベンして、わたし一人じゃこんなの無理。きみが居て、やっとあれと顔を合わせられるんだもん。
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「邪魔するのは趣味なの?あ、答えなくて良いよ、私が高貴で口もきいてくれない、人形みたいな君をそれなりに分析してみただけだから。違うなら違うって、言ってくれても良いんだよ?」
「お前…っいや、貴方ねえ…そもそも、口を全くきいていないなんて、勝手な想像されても困るのだけど?もっと話したいと思うのなら、その全身を巡る血をまず丸々洗った方が良いわね、ふふ」
言い合い。私ははっきり言って、こいつが好きじゃない。古くて、頭で理解するよりも誰もが呆れるような、価値観に囚われているから。そのくせ、意味もなく突っかかってくるし、お嬢様の嗜みのつもりなのか要らないことばかり口にしてくる。別に、慣れたんだけどさ。
でも奇妙なのは、彼女_ドラコは私の容姿をばかにしたことはない。血は…容姿に含まれてるのか、分からないけど。
もっと飾ってあげよう、とか、ワタシの手にかかれば、とか。変なことだけはぶつぶつと言うから、気になって何が、と聞き返したらうるさいと一蹴。ほんと、彼女のことを何年経っても理解できないや。
「…私に突っかかるくらいなら、他の子でも良いんじゃない。大体…君からしたらただのマグル、なんて私以外にもいっぱいいるようなものでしょ。そんな面倒なこと、骨が折れてもしないから」
「はぁ?…わ、ワタシはただ、貴方に選択を与えてあげているのに…?それに、ワタシは初めから貴方をただのつまらない大衆の端くれで見てるわけじゃ…!」
「飽きたから戻るね、ばいばい」
「ちょっと!ポッター!」