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    G1pHikari

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    G1pHikari

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    タミダフ カプと言う程ではない

     その日、俺だけ先にダフの家に上がり込んでいた。三人で遊ぶ予定ではあるが、カネダは少し遅れるという話だった。
     狭い部屋の床に二人、向き合って座る。
     今日はなにしようか? カネダ遅いな。
     読みもしない本を広げて、何ともなしに言葉を投げ合う。
     物音がする度ダフは左を向き、部屋の扉の方を見た。
     それを見ているうち、ふと疑問に思うことがあった。
    「なあダフ……窮屈じゃねえの、眼帯」
     俺が自分の左目を指さすと、ダフはきょとんとしてから小首を傾げた。
    「慣れちゃってるからわかんないな」
    「外した時はどうなんだよ」
    「外した時……ううん……」
     ダフは躊躇しながらも、耳にかけたゴムを外す。
     外で眼帯を外すところは見たことがない。人に見せたくないらしい。ただし家族と、俺たちは例外。
    「すーすーする……」
    「ふうん」
     それでも抵抗はあるらしく、下を向いてしまった。落ち着きのない手が、眼帯をいじったり目元を隠すように触ったりしている。
    「こっち見ろよ」
     ちらりと目だけでこちらを見上げる。もう少し顔を上げてほしい。
     本を横に退け、額がくっつく距離まで近づく。ダフが目を閉じてしまったのを見て、笑いが漏れる。
    「おい、目閉じんなって」
    「笑わないでよぉ」
     目蓋がぎゅっと固く閉じた。
    「バカにしてるんじゃないぜ」
    「ほんとに?」
    「ほんとだって。かわいいやつだよな、お前も」
    「やっぱりバカにしてるでしょ」
     ふん、と鼻息を鳴らして顔をそらされる。抵抗するなら仕方ない。
    「違うって言ってんだろ、っと!」
    「うわぁっ、」
     ダフを抱きしめ、頭を庇って後ろに転がる。
     顔は見えないが、抱きしめていると安心する。
    「見せらんねえなら別にいいけど……」
     んん、と俺の肩口で呻いたのが聞こえる。
    「その代わりずっとこうだぞ」
     抱きしめる腕に力を入れる。
    「う、タミヤくんっ、苦しいよ」
     苦しそうな声に、また少し笑ってしまった。
    「じゃあこっちがいいか?」
     ダフの背中を指でなぞり、脇腹あたりをくすぐってやる。逃れようとする身体を、もう片腕で捕まえる。
    「ひっ、あ! やめ、やめてやめてっ!」
    「降参するか?」
    「ん! ぅん、こうさん、降参するから!」
     俺が力を緩めると、ダフは身体を起こして床に座った。俺も起き上がって座りなおす。
     真っ黒な両目が俺を見ている。
    「これでいい?」
     口をへの字に、眉をハの字に。不満そうな表情だ。
    「ああ、」
     ダフの右目は視力がない。左と比べると黒目が内側に寄っていて、視線が合わない。なんとなく、知らない人間に見える。
     左目はいつも通りこちらを見ている。俺のよく知る親友だと知らせてくれる。
     左右で一致しない印象。いつになっても新鮮な、この感覚が好きだった。
     俺は左目だけの世界を知らない。これだけ一緒にいても、まだ知らないことがあるんだろう。
    「タミヤ君?」
    「……カネダはさあ、前髪邪魔じゃねえのかな」
    「たしかに?」
     来たらめくってやろうかな、なんて。ダフは楽しそうに笑った。
     親友といると心が落ち着く。親友の片目で心がざわめく。
     好きなんだと思う。家族と同じで、一番大事なんだと思う。
     なんだかたまらなくなって、もう一度ダフを抱きしめる。肩口で俺を呼ぶ声がくすぐったかった。
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