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    koda_haigyo

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    リクエストの5️⃣2️⃣♀ムルグレ(女体化)
    突然頭から薔薇が生えちゃった二人

    絡む薔薇の頭冠『グレゴールへ。このメールを見たら連絡をしてほしい。ぜひ相談したいことがある』

     西部センク協会のフィクサーであるムルソーは自室のPCデスクの前に座り、長いこと躊躇った後でメールを送った。
     自室に一人きりだった。デスクに備え付けてある、己の姿を映し出している配信用のカメラは電源を落とされて黒いレンズを晒している。もう数日間、日課である配信を行なっていない。
     カメラの前に座った時の癖で、つい髪の毛に手をやる。手入れを怠ったことのない黒髪の感触。───そして、太い棘を伴う蔓が指先に触れた。

     ムルソーの目元からは、ボルドーの薔薇が一輪咲き誇っていた。花弁は一枚一枚が真っ赤に染まりきり、己を誇示するかのように毒々しい色となっている。眼窩から咲いた花を中心に、数本の太い蔓が這い出していた。
    明らかに、私の眼窩から視神経組織を突き破って生えている。それなのに痛みは全く感じないのが奇妙だどちらにせよ、今は迂闊に触るべきではないだろう。異常事態にもムルソーは平静を保っていた。
     蔓の繁り具合を確かめていた手を離す。残った右目で画面を見つめ、彼女がすぐ返事を寄越してはくれないだろうかと私は願った。


     「…お前さんもなのか、ムルソー」
     メールを送ってから数日後、グレゴールは私の家へ来てくれた。
     この姿になってしまってから、人と会うのは初めてだった。この左目を抱えて仕事に出る気も起きず、騒ぎを起こさないためにも外出は極限まで控えている。己よりもかなり小柄な姿を見とめ、玄関扉を開く。お互いが忙しい恋人との久々の逢瀬だというのに、このような事態の下になってしまったのは残念だ。
     
    「会いたかった。グレゴール。…私"も"とは?」
     こんな状況でも抱擁を交わしたかったが、するりと逃げられてしまう。今日のグレゴールは、シンプルなパーカーを着ていた。すっぽりと頭部を覆うフードのせいで、よく顔が見えない。

     扉を閉め切り二人きりになったところで、グレゴールはようやくフードを外した。

     ふわ、と薄茶の髪が広がる。
    同時に、自分のものとはまた違う芳しい薔薇の香りが鼻腔をくすぐった。

    「…これ、どうやったら取れるんだろうな?」
     グレゴールの髪の中には、とりどりの薔薇に覆われた茨の頭冠が根付いていた。私と同じくほとほと困り果てているらしく、へにゃりと口元を歪ませている。

     「グレゴール、貴方が最後に人格として招かれ、E.G.Oを使ったのはいつだろうか?」
    「そうさな…一週間前だ」
    「ふむ…私とほぼ同時期だな」
    地獄を巡るバス、メフィストフェレス。そこにいつの間にやら呼び出された私たちは、E.G.Oという奇妙な力を駆使して戦っているのだ。
    「そこで貴方はあの…花嫁のようなE.G.Oを使ったのだろうか」
    「『茨の花園』だ。」
    「残念だ。あれを装備した貴方を私も見たかった」
    「やめてくれ…ムルソー。今日は冗談を言い合うために来たわけじゃないんだ」
    本当のことを言っただけなのに。ムルソーは微かに肩をすくめた。
     ふと、グレゴールの頭冠がふるりと震えた。蔓が持ち上がり、隠れていた蕾がはらりと開いた。水色の薔薇だった。柔らかく透き通った花弁が美しい。

    「驚いたか?はあ……どうも、俺が憂鬱な時に、水色のが咲くらしい。」
    「綺麗だ」
    「そういうことじゃない!…明らかに、E.G.Oだか何だかが暴走してる。一体どうしたら良いんだか…」
    再びため息を吐く。
    「お客さん…じゃなくて、管理人のダンテさんか。あの人いつ俺たちにコンタクト取ってくるのか」
     事実だった。私たちを奇妙なバスに誘う男、管理人のダンテからいつ呼びかけられるかは私たちには分からない。
     ついでに言えば、その呼びかけの方法は鏡や窓といったものに突然向こうの姿が映るというものだ。こちらからコンタクトを取る術は一切ないのである。

    「私たちは彼からの連絡を待つしかない。…二人とも同じ状況ならば、どちらかに招集がかかった時にすぐに行けるように同じ場所にいたほうがいいだろう」
    「お互い大変だな。ムルソー…。こんな格好じゃ、商売も上がったりだよな?」
    グレゴールの頭にまた一つ、憂鬱そうな水色の花が首をもたげつつあった。
    「ああ」
    「配信も出来ないだろ?左目が利かないと決闘でも差し支えがあるからな」
    「ああ、そうだな」
    ダークグリーンの眼は、グレゴールの姿ばかりを注視してしまう。
    「俺はこうなっても不思議と痛くはないけど…ムルソーは?」
    「ああ」
    生返事ばかりを返してくるムルソーに、とうとうグレゴールは痺れを切らせた。
    「…ムルソー?ムルソーさん?さっきから、」
    「失礼。…茨に飾られたあなたを可憐だと、思っていた」
     普段の彼女のツヴァイヘンダーを構え、脅威から対象を守らんとするその姿は高潔な騎士のようだ。だが、薔薇の頭冠を携えた今の姿は、私の目にはまるで可憐な姫君のように見える。この光景を目に焼き付けておきたかった。

    「あの…なあ…ムルソー。残った片目がおかしくなったみたいだな。この問題が片付いたら、すぐに眼科に行った方がいいぞ」
     呆れ果てたような、しかし微かに照れを含んだ言葉。その様子すら愛らしくて目に焼き付けたくて、じっくりと眺めていた矢先に、グレゴールの頭冠にまたはらりと新しい薔薇が咲き誇った。
     先ほどの憂鬱とは違う、恥じらうようなオレンジ色のバラだった。
    「…オレンジの意味は、色欲だと説明を受けたな。推測されることはつまり貴方が私に「わああやめろ!それ以上言うな!」
    わあわあと叫びながら、ムルソーの口をつぐませようと必死になる。その姿すら愛らしかった。薄茶の髪が揺れるたび、馥郁ふくいくたる薔薇が誘う。
    「む、ムルソーこそ!お前さんこそ…その赤い薔薇は似合ってるよ」
    完全に照れてしまったらしい。面映いように唇を尖らせて、オレンジの薔薇を頭に抱くその姿は美しかった。
    「…私の薔薇。もっとよくその姿を見せてくれ」
    真っ赤に染まった頬を手で包み込む。私の手の中で目線を逸らすことも出来ず、琥珀色の瞳が私を見上げるのが愛おしかった。口付けを交わして、私のものよりも柔らかな唇の感触を楽しんだ。

     ふいに、耳元で擦れるような音がした。

    「…やばい!!これ完全に絡まってる!絡まってきてるぞムルソー!」
    彼女の言葉通り、お互いの薔薇の蔓が意思を持っているかのようにしゅるしゅると絡みついていく。まるでもう二度と離れたくはないかのように。
    「…ふむ。私たち二人の感情によって何らかの動きがあったようだな。精神と連動している可能性がある」
    「そんな冷静なこと言ってる場合か!?このままだと動けなくなるぞ」
    「あでででで、でで!これ引きちぎろうとするとメチャクチャ痛いぞムルソー!」
     時すでに遅し。ガッチリと指を絡め合うように巻き付いた蔓は、並の力では離れられない程に強固に絡みついていた。慌てて離れようとしたグレゴールが、引っ張られる痛みに悲鳴を上げる。
    「乱暴な扱いは止めるべきだ。私は視神経から、貴方は明らかに頭蓋の内側から花が生えている。無理やり引き抜けば後遺症が残る可能性が…」
    「そ、そんな怖いこと言うなよお…!」
    私の説得に諦めてくれたらしく、グレゴールは腕の中で大人しくなってくれた。私の膝の上へ抱き抱えて、ソファに座る。

    「薔薇たちが望むように。そばに居させてあげよう」
    すり、とグレゴールの頬に顔を寄せる。
    「……薔薇の、じゃないだろ。俺たちの望みだ」

     それから数時間後。
     グレゴールを呼ぼうとした管理人が、PCモニターの硝子から私たちの部屋を覗き込んで悲鳴を上げた。どうやら、最近起きた何らかのトラウマを刺激してしまったらしい。
     私たちはようやく、薔薇から解放されることができた。…だが、薔薇の蔓が離されるとき、残念に思ったのは言うまでもないだろう。
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